喫茶店&スナック 「桜の園」

2017年01月24日 10時38分05秒 | 創作欄
奥田五月は薬剤師として病院の薬局に2年間勤務していた時に、取材に来た典子の生き生きとした姿に接してから、「薬業界の新聞社に勤めるものいいかな」と思うようになった。
典子の取材を受けた薬剤部長の小沢甲子郎の机に典子が書いた記事が掲載されている新聞が乗っていた。
「部長、この新聞お借りしたいのですが」と申し入れたら「どうぞ」と快諾してくれた。
タブロイロ版の1面の約半分のスペースに部長のインタビュー記事が載っていた。
五月は薬科大学時代、地域の文学仲間の同人誌にエッセーや創作を投稿しており、文章を書くことが好きであった。
そこで、典子に会って新聞社の様子を聞いてみることにした。
午後6時30分ころ典子と五月は神田駅前の喫茶店で落ち合ったのだ。
典子は五月と同じように青年を中心とした同人誌の同人であった。
主宰者の佐々木は詩人であり、新宿2丁目で喫茶店&スナックを経営していた。
その店・「桜の園」は夜は劇団員や詩人、画家などの溜まり場となっていて一種独特な熱気に包まれた。
妻の里美は劇団員であった。
典子は女子大の先輩の木島洋子に誘われ同人に加わっていた。
木島洋子は文学の新人賞を取ってから2度、芥川賞の候補にノミネートされていた。
洋子は新宿の図書館に勤務しながら創作を続けていた。
神田の喫茶店で30ほど二人は懇談した。
「良ければ、これから新宿のお店・桜の園へ行きませんか?」と典子は五月を誘った。
「面白そうなお店ね。是非、お願いします」と五月は応じた。
「もしかいたら、先輩の洋子さんに会えるかもしれない」と典子は期待した。
その店で典子は会社の同僚の真田守に会ったのはまさに危惧であった。
聞けば、真田は元劇団に所属していて、佐々木の妻の里美と親しい関係にあったのだ。
「この店で、君と会うとはね」同僚の真田は目を見開いていた。
「そうですね。私も驚きまいた」典子は改めて真田に親近感を抱いた。
そして典子は今までにない心の高鳴りを感じ初めていた。
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