テロ拡大は地理と歴史対する
米国無知が致命的要因
2001に起きた米国の9・11同時多発テロの後の「グローバル対テロ戦争」、なかでもイラク戦争の過剰反応が21世紀地政学の悲劇的起点の一つとなった。
サダム・フセイ推進軍部の残党が過激派組織「イスラム国」(IS)流れた。
米国が地政学的な要素を注意深く洞察しなかった結果だ。
より歴史的に深掘りすれば、今の中東地域をめぐる混乱は、第1次世界大戦中に英仏ロが結んだオスマン帝国の分割(と新たな人工的国境)に関する秘密合意「サイクス=ピコ協定」にまで遡ることができるだろう。
そうした地理と歴史に対する無知が致命的になった。
年々軍事力を強めつつある中国をはじめとしたアジア諸国の影響で、日本の国防を考える上で外せない知識となってきた「地政学」。
地政学(ちせいがく、英: Geopolitics:ジオポリティクス、独: Geopolitik:ゲオポリティク、仏: Géopolitique:ジェオポリティク)は、地理的な位置関係が政治、国際関係に与える影響を研究する学問である。
地政学とは地理的な環境が国家に与える政治的、軍事的、経済的な影響を巨視的な視点で研究するものである。イギリス、ドイツ、アメリカ合衆国等で国家戦略に科学的根拠と正当性を与えることを目的とした。「地政学的」のように言葉として政治談議の中で聞かれることがある。
歴史学、政治学、地理学、経済学、軍事学、文化学、文明、宗教学、哲学などの様々な見地から研究を行う為、広範にわたる知識が不可欠となる。また、政治地理学とも関係がある。
地政学、すなわち、地理と政治や軍事との関係性についての研究は、すでに古代ギリシアの時代、ヘロドトスの『歴史』にその起源が読み取れる。彼は民族の命運が地理的な環境と深く関係していることをペルシア戦争の研究から述べている。
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経済力を持ち、富を手に入れると、パワーを外に投影したくなるものだ。
そうした時に、地理、歴史、民族、あるいは資源はどの変えられない要素、あるいは変えにくい要素が壁となる。
そうなると地政学的摩擦が起きやすい。
地政学は戦前ナチス・ドイツに悪用された経緯もあってタブー視されてきた。
しかし、冷戦後に「文明の衝突」21世紀になって「地政学の逆襲」が出版されるなど、激動する国際社会を分析する上で最近見直され始めた。
冷戦時代は「核均衡」とイデオロギーによる東西両陣営の対立が、地理や歴史、民族、宗教を押さえ込み、凍り漬けにしてきた。
今それが解凍され、地政学的活断層が露呈している。
日本は戦後長い間、自らの安全保障を自らの課題としてとことん考え抜くことをしないで済ましてきた。
しかし、そうした時代は終わりつつある。
これから地理、歴史、民族、宗教、人口といった要素が重くのしかかってくる。
日本の地政学な立ち位置の危うさを心に留めておく必要がある。
そして、地政学的な直感力を身に付けなければんらない。
戦後の日本は反省から始まった尊い経験がある。
それを踏まえた歴史認識をしっかり積み上げていかなければ、近隣諸国との歴史認識をめぐる不毛な争いの泥沼に、もがくことになる。
官僚組織も企業も大学も、リスク管理と危機管理が苦手だ。
なぜなら失敗をとことん検証し、そこから教訓を学ぶことが苦手だからだ。
日米戦争に突っ込んでいった最大の原因であり、東日本大震災における東京電力福島第1原発事故の最大の教訓である。
政治のバランスが揺らぎはじめている中で、寛容と忍耐を大切にする中道保守の政治が不可欠な時代だ。
保守もリベラルも、両極端に振れて対決するのではなく、熟議と妥協によって切磋琢磨しながら政策を練り上げてほしい。
日本再建イニシアティブ理事長・舟橋洋一さん(元朝日新聞社主筆)
米国無知が致命的要因
2001に起きた米国の9・11同時多発テロの後の「グローバル対テロ戦争」、なかでもイラク戦争の過剰反応が21世紀地政学の悲劇的起点の一つとなった。
サダム・フセイ推進軍部の残党が過激派組織「イスラム国」(IS)流れた。
米国が地政学的な要素を注意深く洞察しなかった結果だ。
より歴史的に深掘りすれば、今の中東地域をめぐる混乱は、第1次世界大戦中に英仏ロが結んだオスマン帝国の分割(と新たな人工的国境)に関する秘密合意「サイクス=ピコ協定」にまで遡ることができるだろう。
そうした地理と歴史に対する無知が致命的になった。
年々軍事力を強めつつある中国をはじめとしたアジア諸国の影響で、日本の国防を考える上で外せない知識となってきた「地政学」。
地政学(ちせいがく、英: Geopolitics:ジオポリティクス、独: Geopolitik:ゲオポリティク、仏: Géopolitique:ジェオポリティク)は、地理的な位置関係が政治、国際関係に与える影響を研究する学問である。
地政学とは地理的な環境が国家に与える政治的、軍事的、経済的な影響を巨視的な視点で研究するものである。イギリス、ドイツ、アメリカ合衆国等で国家戦略に科学的根拠と正当性を与えることを目的とした。「地政学的」のように言葉として政治談議の中で聞かれることがある。
歴史学、政治学、地理学、経済学、軍事学、文化学、文明、宗教学、哲学などの様々な見地から研究を行う為、広範にわたる知識が不可欠となる。また、政治地理学とも関係がある。
地政学、すなわち、地理と政治や軍事との関係性についての研究は、すでに古代ギリシアの時代、ヘロドトスの『歴史』にその起源が読み取れる。彼は民族の命運が地理的な環境と深く関係していることをペルシア戦争の研究から述べている。
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経済力を持ち、富を手に入れると、パワーを外に投影したくなるものだ。
そうした時に、地理、歴史、民族、あるいは資源はどの変えられない要素、あるいは変えにくい要素が壁となる。
そうなると地政学的摩擦が起きやすい。
地政学は戦前ナチス・ドイツに悪用された経緯もあってタブー視されてきた。
しかし、冷戦後に「文明の衝突」21世紀になって「地政学の逆襲」が出版されるなど、激動する国際社会を分析する上で最近見直され始めた。
冷戦時代は「核均衡」とイデオロギーによる東西両陣営の対立が、地理や歴史、民族、宗教を押さえ込み、凍り漬けにしてきた。
今それが解凍され、地政学的活断層が露呈している。
日本は戦後長い間、自らの安全保障を自らの課題としてとことん考え抜くことをしないで済ましてきた。
しかし、そうした時代は終わりつつある。
これから地理、歴史、民族、宗教、人口といった要素が重くのしかかってくる。
日本の地政学な立ち位置の危うさを心に留めておく必要がある。
そして、地政学的な直感力を身に付けなければんらない。
戦後の日本は反省から始まった尊い経験がある。
それを踏まえた歴史認識をしっかり積み上げていかなければ、近隣諸国との歴史認識をめぐる不毛な争いの泥沼に、もがくことになる。
官僚組織も企業も大学も、リスク管理と危機管理が苦手だ。
なぜなら失敗をとことん検証し、そこから教訓を学ぶことが苦手だからだ。
日米戦争に突っ込んでいった最大の原因であり、東日本大震災における東京電力福島第1原発事故の最大の教訓である。
政治のバランスが揺らぎはじめている中で、寛容と忍耐を大切にする中道保守の政治が不可欠な時代だ。
保守もリベラルも、両極端に振れて対決するのではなく、熟議と妥協によって切磋琢磨しながら政策を練り上げてほしい。
日本再建イニシアティブ理事長・舟橋洋一さん(元朝日新聞社主筆)