守田です。(20160302 17:00)
関西電力は、3月2日午前、2月29日に原因不明のトラブルによって原子炉が緊急停止した高浜原発4号機を冷温停止状態に移行させたことを発表しました。
トラブル続きのこの危険な原子炉の再稼働計画をこのまま捨て去り、稼働を止めるべきです。
この間の高浜原発4号機の再稼働から緊急停止にいたる流れと問題点、新たに発覚した事項をここでまとめておきましょう。
2月26日に再稼働を目指していた高浜4号機は、2月20日、起動試験の前日に原因不明の一次冷却水漏れを起こしました。
場所は一次冷却水をろ過して不純物を除く装置付近。量は34リットルでした。その後の調査で、この装置に取り付けれた弁の取り付けねじが緩んでいたことが分かりました。
関電はなぜねじが緩んだのかの調査を十分に行わないままに加締めを行い、3、4号機の同様の弁のねじを点検しただけで、再度、稼働に向かいました。
ここまでで2日間が消費され、起動試験が遅れたにも関わらず、26日の着工をスケジュール通り強行することを表明。事実上、起動試験から再稼働までを短縮してしまいました。
そして26日に原子炉を再稼働させ、3日後の29日に出力10%の段階で発電機を送電線につなぐ操作をしたところ、スイッチを入れたとたんに異常を告げる警報が鳴りだし、発電機と原子炉が緊急停止してしまいました。
関電はタービン建屋の外にあり、発電した電気の電圧をあげて送電線に送る主変圧器付近でトラブル発生と判断。
その後の調査で変圧器から送電設備への異常な電流を検知する機器が作動していたことが判明したとして、引き続き、この機器を中心に原因解明が行われています。
この機器は、ある値を超えた電流が流れた場合に作動するよう設定されており、異常な電流の発生の有無や、機器の設定などに問題がなかったかなどをさらに調べるとのことです。
しかしいずれにせよ、調査結果を原子力規制庁に送り、その判断を仰がなければならないこともあって、すぐに原子炉を再起動させることは無理だと判断し、2日午前中に原子炉を一時冷却水を100度以下に保つ冷温停止状態への移行措置がされました。
このため関電は再稼働まで一定日数(具体的には不明)がかかると表明しています。
私たちがみておくべきなのは、高浜4号機は4年7カ月も停まっていたために不具合が多くなっており、徹底した点検を行ったつもりでも、ボルトの緩みに顕著なように、さまざまな箇所の点検が抜けてしまっているということです。
そのためにトラブルの続発に見舞われているのです。このため今、見つかっている不具合が直されたとしても、まだまだ次に何らかのトラブルが起こり、事故が発生する可能性があります。
しかも恐ろしいのは出力が高まった事態でトラブルが発生し、重大事故に発展することです。その場合、原子炉内の放射能量も格段に増えているのでその点でも危険性が大きくなります。
今回はそのかなり前の段階でのトラブルだったためにある意味では救われているわけですから、この段階で長く停まっていた原発の再稼働の難しさを認識し、危険極まりない原発再稼働から撤退すべきです。
これはすでに動いている川内原発1、2号機、高浜原発3号機についても言えることです。それぞれ長く停まってからの再稼働であるため、今後、どのようなトラブルが発生するかも分かりません。
ここで注目していただきたいのは、昨年8月に僕が書いた記事です。
川内原発1号機の再稼働がなされた直後に、蒸気化した二次冷却水を冷やして水に戻す「復水器」にピンホールなどが生じていて海水が混入するトラブルが発生したことを受けたものです。
これまた配管の十分な点検がなされずに起こったことでした。といってもそもそもすげての配管を調べること自身が技術的に難しいのですが。ともあれ以下の記事をご覧下さい。
明日に向けて(1128)4年以上停めて再稼働したのは世界で14例。その全てで稼働後にトラブルが起こっている!
2015年8月23日
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/474f1254a9054ea9bbfa3757feb15566
僕がここで取り上げたのは、ブルームバーグに掲載された「長期停止原発が複数再稼働へ、世界的な未知圏-川内原発先陣」と題した記事です。
ここでは長期にわたって停まっていた原発の再稼働の危険性が次のように指摘されていました。以下にもっとも重要な点だけ引用しておきます。
「国際原子力機関や米国、カナダの規制当局のデータによると、最低でも4年間停止した原発の運転が再開されたケースは世界で14基。そのすべてが運転再開後にトラブルに見舞われている。」
「原子力技術コンサルティング会社、ラージ&アソシエイトのジョン・ラージ社長は、日本は「国中の原子炉がすべて4年間停止した状態」にあり、原子力規制委員会は想定外の事態に備えなければならないと指摘。
規制委がいま直面している状況は「他のどの国に存在しないまったく固有の事態」だと話した。」
そうなのです。日本の国内の原発はそのほとんどが4年以上、停まっており、原子力規制庁は、これまでどの国も遭遇しなかった困難な課題の前に立っているのです。
そして早速、新規制基準を通った原発が、再稼働前にトラブルを起こし、さらに出力10%の段階でトラブルを重ねてしまったのですから、これは、規制庁の監督責任そのものが問われる事態なのです。
単なる原発の稼働ではなく、長く停めていることで危険性が増大している原発の再稼働を、規制庁が審査し、責任を負い、その上でトラブルの発生を見抜けなかったのだという点をもっとクローズアップする必要があります。
もちろん新品の原発とて大きな危険性があります。だから僕はどのような原発にも反対です。
またこれまで繰り返してきたように、規制庁の新規制基準は、重大事故を前提としたものであって、その点でもまったく認められません。
そのくせ、つまり重大事故の発生の可能性を説きながら、周辺の避難計画もきちんと整備されておらず、その点からも認められるものではありません。
しかし今回起こっている事態は、それらの危険性に上乗せする形で、4年以上も停まっていた原発、今回で言えば4年7カ月も停まっていた原発の危険性が私たちに迫っているということなのです。
これは今後、再稼働が検討されているすべての原発について言えることです。いや、時間が経てば経つだけ危険性が増すのですから、日々、刻々と、日本中の原発が動かすべきではない度合い、危険性を強めていることを知らなくてはなりません。
2度の連続トラブルの発生で、規制庁の新規制基準のもとでの審査に大きな欠落があることがはっきりしたのですから、ここで大事故に至る前に、すべての原発の稼働にもう本当に終止符を打つべきなのです。
いやそれに加えて、東電のメルトダウン隠蔽という大犯罪までもが明らかになっているのですから、もはやどのような観点からも、原子力行政は存続を許されてはならないのです。
高浜4号機にとどまらず、すべての原発を即時停止し、廃炉に向かうべきことを、さらに声を大きくして訴えていきましょう。
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