明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(1249)川内原発は停めたらではなく停めないとメルトダウンしうる(川内を停めるべき理由の続き)

2016年04月21日 10時30分00秒 | 明日に向けて(1201~1300)

守田です。(20160421 10:30)

ネット上で「川内原発を停めるべきではない」という言説が流れており、反論を求められたので、「明日に向けて(1248)」で、なぜ今、原発をすぐに停めるべきなのかを書きました。

 明日に向けて(1248)なぜ大地震に襲われる前に川内原発を停めるべきなのか?
 http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/c1cc6520b33c281c7720064dec313937

続きを書きます。
とくに「川内原発を停めたら電気が足りなくなり、他の電源に何かあった場合に冷却できなくなってメルトダウンする」という荒唐無稽な論に対しての反論を行います。
これを主張している方は「そうなったら責任がとれるのですか!!」とヒステリックに叫んでおられるのですが、これはある意味でユニークな論です。
なぜかというと、この方は川内原発が外部電源を喪失したらメルトダウンすると考えておられるわけですが、「そんなことはない!」と声高に主張しているのが他ならぬ九州電力だからです。

どこでそれが述べられたのかと言うと、原子力規制委員会が設けた「新規制基準」への対応においてです。
以下、同委員会のホームページに掲載されている九州電力の報告書をご紹介します。

 川内原子力発電所1号炉及び2号炉
 誤操作防止について
 安全避難通路等について
 全交流動力電源喪失対策設備について
 安全保護回路について
 平成25年12月3日 九州電力株式会社
 https://www.nsr.go.jp/data/000034874.pdf

この中の38ページ以降に「全交流動力電源喪失対策設備について」というタイトルのもと、延々と説明がなされているのですが、冒頭に対策の骨子が書かれているので引用します。

 「所内動力源用電源は、外部電源系の他に非常用所内電源として、原子炉格納容器の健全性を確保するために必要な容量を有したディーゼル発電機2系統(5700kW×2台)を設置している。
 また、全交流動力電源喪失が発生した場合でも、喪失時から重大事故等に対処するために必要な電力の供給が交流動力電源設備から開始されるまでの間、発電用原子炉を安全に停止し、かつ、発電用原子炉の停止後に炉心を冷却するための設備が動作する

とともに原子炉格納容器の健全性を確保するための設備が動作することができるよう、これらの設備の動作に必要な容量の蓄電池2系統(約1200A・h×2組安全施設に属するものに限る。)を設けている。」

引用はここまで。

つまり外部電源を失っても大丈夫なように、ディーゼル発電機2系統、蓄電器2系統を設けているというわけです。
これは福島原発事故において、「地震で外部電源を失った後に非常用電源が起動したけれども、津波に襲われてダウンしたためにメルトダウンを防げなかった」という東電の主張に基づいた新規制基準の内容です。
にもかかわらず先に紹介した方は「原発を停めて電気が足りなくなったら原発の冷却ができなくなってメルトダウンする」と叫ばれているわけですが、だとするならば新規制基準が間違っていて再稼働してはならないことになるのである意味ユニークです。
もっともこの方は、こうした点を踏まえずに語られているのだと思いますが。

この点については、僕も新規制基準の内容も、これに応じた九州電力の対応も、まったく信用できないと思っています。
一つには非常用の設備は平時に動かしていないため、時間の経過とともに動きにくくなってしまうことが多いからです。
しかしそれだけではありません。もっと決定的に重要なのは、福島原発におけるメルトダウンが電源喪失によって起こったのではなないと思われるのに、この重大ポイントが無視されているからです。

というのは、福島原発は、事故後のパラメーターの解析から、津波で電源が喪失する前に配管破断が起こって、メルトダウンが始まっていた可能性が高い。つまり電源喪失ではなく冷却材喪失が原因だった可能性が極めて高いのです。
このことを解析されたのは、元日立の圧力容器設計者だった田中三彦さんです。より深く真実に迫りたい方はぜひ以下の記事を読んでいただきたいと思います。

 明日に向けて(176)地震による配管破断の可能性と、東電シミュレーション批判(田中三彦さん談再掲1)
 2011年6月29日
 http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/f1914e7352792c89767a9c7585ee4a00

 明日に向けて(176)地震による配管破断の可能性と、東電シミュレーション批判(田中三彦さん談再掲2)
 2011年6月29日
 http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/8d603fe6649fe963d189d712df46e0c5

この指摘は、非常に重要な位置を持っています。
津波で電源が喪失したというのなら、その点だけは津波対策をあつくし、電源を喪失しないようにすることが対策の一つになり得ます。
しかし地震で配管が切れてしまったのだったら、耐震設計が根本的に間違っていたことになります。いや実際にその可能性が高いのですが、そのことを認めると日本中の原発を見直さなければならなくなります。
基準地震動を高く設定して、すべての原発を建て直さなければならなくなるのですが、そんなこと、コスト的にとてもできませんから、これを認めればその時点で日本のすべての原発は終わるのです!

このため新規制基準は、実は本来、建て直しでしか対応できない基準地震動のアップを、紙面上の操作だけで行うというひどい過ちをも入れ込んだものになっています。耐震設計のあやまりを突っ込まれないための対応なのでしょう。
しかしこんなもの、言葉のもてあそびで対策でもなんでもありません。こんな中身のない耐震対策の「強化」の上に、配管破断の可能性を無視抹殺して作られたのが新規制基準なのです。

ちなみに3月に出された大津地裁による高浜原発運転停止を命じた仮処分決定も、この点をきちんと踏まえて出されていました。
そもそも新規制基準は「福島原発事故の教訓を踏まえたもの」とされているのですが、大津決定には「建屋の中は入ることすらできず、調査が進んでいない。この中で事故の主因を津波と断定してよいか判断できない」ときちんと書かれていました。
田中三彦さんや後藤政志さんなどが懸命に訴えてきてくださったことの反映ですから、感動するとともに、田中さん、後藤さんへの感謝の念を覚えました。真っ当な主張をやっと押し通して高浜原発を停めてくださったからです。
もちろんこれは全国のみなさんの再稼働反対の声の中で実現されたことで、みんなで実現した素晴らしい成果です。この力を川内原発にも及ぼしたい。

まとめます。

原発が停止して電気が足りなくなったら、原子炉の冷却ができなくなるのか。
九州電力も原子力規制委員会も「そんなことはない」と主張しています。外部電源を失ったときに、自力で電力供給できる非常用電源と蓄電池を備えているから大丈夫だというのが、新規制基準の合格ラインだからです。

これが信頼できるのかというと本当に非常時に動くかどうかの不安は残ります。しかし現在はまだ再稼働からそれほど経っていませんからまだしも動くのではないでしょうか。
というかこの大地震の最中ですから、九電は当然にもテストと点検を行い、いざという時にきちんと非常用電源を動かせるようにしておくべきです。
しかし非常用電源が大丈夫でも、地震による配管破断があったらまったく冷却できなくなります。この場合の方が恐ろしい。冷却材が一気に抜けてしまうので、すぐにメルトダウンに向かってしまう可能性が高いからです。

ではどう対処すれば良いのか。いますぐ原子炉を停止し、崩壊熱を下げておくことです。前回、説明したように、原子炉の中の崩壊熱はある程度までは急速に下がるので効果が大きい。
核燃料がどれだけ熱を持っているのかこそが、メルトダウンを防げるかどうかの一番のポイントですから、とにもかくにも運転をやめて熱を下げることが第一なのです。
停めないと、スクラムの失敗による爆発は免れても、熱量が大きいのでメルトダウンしうるのです。この点もまた川内原発を即刻、運転停止すべき大きな理由の一つです。

続く

次回は川内原発の大きな欠陥であり弱点である蒸気発生器について書きます。

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1 コメント

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Unknown (Moana)
2016-04-22 16:56:08
福島と同様、なーなーですませるべし。という態度?
1センチ許せば、知らぬ間にに1キロ?
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