守田です。(20110502 15:00)
「明日に向けて(87)(88)」の中で、僕は、内閣官房参与の小佐古敏荘さんの
辞任劇の背景に、福島県、のみならず東日本の深刻な放射線被害の実態が
隠されているのではないかという推論を行いました。
これはまったくあたって欲しくない推論です。とくに福島の方たちのことを考えると、
口にしたくない洞察でもあり、葛藤がありますが、僕にはこれは、避けて通れない
考察であると思え、続けるべき義務を感じています。
そのように何とも重たい気持ちで考えているときに、次のような記事が
飛び込んできました。
「福島県郡山市にある下水処理施設の下水汚泥と、汚泥を燃やしてできる
砂状の「溶融スラグ」から高濃度の放射性セシウムが検出された」というものです。
この記事を分析したいと思います。
記事の核心部はこう告げています。
「施設は郡山市日和田町高倉の県中浄化センター。県によると、4月30日に
調査したところ、汚泥から1キロあたり2万6400ベクレル、スラグから同33万
4千ベクレルの放射性セシウムが検出された。スラグの数値は、福島第一原発
事故の前の約1400倍だった。
県は、地表面の放射性物質が雨などによって流れ込み、下水処理の過程で
濃縮されたとみている。
県によると、汚泥は1日80トン発生し、70トンは施設内の溶融炉で燃やすこと
でスラグ2トンになる。残り10トンはセメントの材料としてセメント会社に送るという。
原発事故後、計約500トンの汚泥がセメント会社に搬出されたといい、県が
追跡調査をしている。スラグは施設内でビニールシートをかぶせて保管している」
溶融スラグ(ようゆうスラグ)とは、廃棄物や下水汚泥の焼却灰等を1300℃
以上の高温で溶融したものを冷却し、固化させたもののことです。最近では、
建設・土木資材としての「積極的な活用」が進められていると言います。
記事を正確に読み取って行くと、これまで500トンの汚泥がすでにセメント会社に
送られてしまっているのですから、その7倍の汚泥がスラグになっていることになる。
つまり3500トンが燃やされ、スラグになった。量は70分の2になるので、100トンが
発生している勘定になります。
スラグの放射能濃度は、1キログラム33万4千ベクレルですから、100トンでは、
33万ベクレル×1000×100=330億ベクレルになります。
福島原発から海洋投棄された「低レベル放射能汚染水」の放射能量は
1500億ベクレルだったとされていますから、実にその5分の1がここにあることに
なる。それがビニールシートをかけて保管されているというのです。
なんということでしょう。
しかし他方でこうした計算も成り立ちます。
スラグにする前の汚泥は3500トンあった。このときの放射能度は1キロあたり
2万6400ベクレルであったと書いてある。そうなると総量は
2万6400ベクレル×1000×3500=924億ベクレルあったことになる。
したがって
924億-330億=594億ベクレルがなくなっている計算になる。
これはどこへ行ったのでしょうか。
そこでセシウムの沸点を調べてみると、金属の中では最も低い部類に
あたる641度であることが分かります。
スラグは1300度以上に熱して作られているから、実は多くが気化して
しまったはずです。つまり594億ベクレルは、再び大気中に拡散して
しまった可能性が高い。
これにセメント会社に搬出された500トン×26400×1000=132億ベクレルを
足し合わせると、合計726億ベクレルのセシウムが、どこかに出て行って
しまった可能性があります。
肝心なことは、これが福島原発サイトからの直接の漏えいとして起こって
いるのではなく、郡山市の一施設で起こったことだということです。
そこから海洋投棄された「低レベル放射能汚染水」の3分の2ほどの
放射能が出てきたのです。
それでは他の施設、他の場所、他の地域はどうなのか。
ちなみにこの県中浄化センターは、福島原発から真西に50キロほど離れた
場所に位置しており、これまで公表された汚染マップでは、とくに汚染の
激しい地域としては指摘されていない場所にあります。
そこからこれほどの放射能が検出されている。
頭がクラクラします。
しかもこれはセシウムのみの値です。
他の核種はないのだろうか。測らなくて良いのだろうか。
またどうしてこれほど重大なニュースが、一面トップにならないのだろうか。
ますます不安が募るばかりです・・・。
*****************************
下水処理施設の汚泥から高濃度の放射性物質 福島・郡山
2011年5月2日3時1分 朝日新聞
福島県郡山市にある下水処理施設の下水汚泥と、汚泥を燃やしてできる
砂状の「溶融スラグ」から高濃度の放射性セシウムが検出された。県が1日
発表した。施設周辺の大気からは、市内の別の地点より高い放射線量が
計測された。県は、汚泥の焼却時に放射性物質が拡散するかどうかに
ついて「調査中」としている。
下水汚泥が高濃度の放射性物質を含む場合、その処理に関する国の指針や
マニュアルはない。このため、下水処理施設を所管する国土交通省は2日、
どのように処理していくか、原子力安全・保安院と対応を緊急に協議する方針。
また東日本の自治体に対し、汚泥中の放射性物質濃度を計測するよう求める
見通しだ。
施設は郡山市日和田町高倉の県中浄化センター。県によると、4月30日に
調査したところ、汚泥から1キロあたり2万6400ベクレル、スラグから同33万
4千ベクレルの放射性セシウムが検出された。スラグの数値は、福島第一原発
事故の前の約1400倍だった。
県は、地表面の放射性物質が雨などによって流れ込み、下水処理の過程で
濃縮されたとみている。
県によると、汚泥は1日80トン発生し、70トンは施設内の溶融炉で燃やすこと
でスラグ2トンになる。残り10トンはセメントの材料としてセメント会社に送るという。
原発事故後、計約500トンの汚泥がセメント会社に搬出されたといい、県が
追跡調査をしている。スラグは施設内でビニールシートをかぶせて保管している。
県はセンターの作業員に放射線量計を持たせるとともに、セメント会社への
搬出を当面の間休止。県内の別の22施設についても同様の調査をするという。
県が1日にセンターの敷地周辺で測定した放射線量は毎時1.8~3.4マイクロ
シーベルトと、約10キロ離れた郡山合同庁舎付近の約1.6マイクロシーベルト
より高かった。
現行の下水道法は、汚泥は積極的に再利用するよう全国の自治体に求めて
いる。国交省によると、全国で発生する汚泥の8割は建材などに再利用され、
残り2割ほどが埋め立て廃棄されているという。(矢崎慶一、北川慧一)
http://www.asahi.com/national/update/0501/TKY201105010383.html
「明日に向けて(87)(88)」の中で、僕は、内閣官房参与の小佐古敏荘さんの
辞任劇の背景に、福島県、のみならず東日本の深刻な放射線被害の実態が
隠されているのではないかという推論を行いました。
これはまったくあたって欲しくない推論です。とくに福島の方たちのことを考えると、
口にしたくない洞察でもあり、葛藤がありますが、僕にはこれは、避けて通れない
考察であると思え、続けるべき義務を感じています。
そのように何とも重たい気持ちで考えているときに、次のような記事が
飛び込んできました。
「福島県郡山市にある下水処理施設の下水汚泥と、汚泥を燃やしてできる
砂状の「溶融スラグ」から高濃度の放射性セシウムが検出された」というものです。
この記事を分析したいと思います。
記事の核心部はこう告げています。
「施設は郡山市日和田町高倉の県中浄化センター。県によると、4月30日に
調査したところ、汚泥から1キロあたり2万6400ベクレル、スラグから同33万
4千ベクレルの放射性セシウムが検出された。スラグの数値は、福島第一原発
事故の前の約1400倍だった。
県は、地表面の放射性物質が雨などによって流れ込み、下水処理の過程で
濃縮されたとみている。
県によると、汚泥は1日80トン発生し、70トンは施設内の溶融炉で燃やすこと
でスラグ2トンになる。残り10トンはセメントの材料としてセメント会社に送るという。
原発事故後、計約500トンの汚泥がセメント会社に搬出されたといい、県が
追跡調査をしている。スラグは施設内でビニールシートをかぶせて保管している」
溶融スラグ(ようゆうスラグ)とは、廃棄物や下水汚泥の焼却灰等を1300℃
以上の高温で溶融したものを冷却し、固化させたもののことです。最近では、
建設・土木資材としての「積極的な活用」が進められていると言います。
記事を正確に読み取って行くと、これまで500トンの汚泥がすでにセメント会社に
送られてしまっているのですから、その7倍の汚泥がスラグになっていることになる。
つまり3500トンが燃やされ、スラグになった。量は70分の2になるので、100トンが
発生している勘定になります。
スラグの放射能濃度は、1キログラム33万4千ベクレルですから、100トンでは、
33万ベクレル×1000×100=330億ベクレルになります。
福島原発から海洋投棄された「低レベル放射能汚染水」の放射能量は
1500億ベクレルだったとされていますから、実にその5分の1がここにあることに
なる。それがビニールシートをかけて保管されているというのです。
なんということでしょう。
しかし他方でこうした計算も成り立ちます。
スラグにする前の汚泥は3500トンあった。このときの放射能度は1キロあたり
2万6400ベクレルであったと書いてある。そうなると総量は
2万6400ベクレル×1000×3500=924億ベクレルあったことになる。
したがって
924億-330億=594億ベクレルがなくなっている計算になる。
これはどこへ行ったのでしょうか。
そこでセシウムの沸点を調べてみると、金属の中では最も低い部類に
あたる641度であることが分かります。
スラグは1300度以上に熱して作られているから、実は多くが気化して
しまったはずです。つまり594億ベクレルは、再び大気中に拡散して
しまった可能性が高い。
これにセメント会社に搬出された500トン×26400×1000=132億ベクレルを
足し合わせると、合計726億ベクレルのセシウムが、どこかに出て行って
しまった可能性があります。
肝心なことは、これが福島原発サイトからの直接の漏えいとして起こって
いるのではなく、郡山市の一施設で起こったことだということです。
そこから海洋投棄された「低レベル放射能汚染水」の3分の2ほどの
放射能が出てきたのです。
それでは他の施設、他の場所、他の地域はどうなのか。
ちなみにこの県中浄化センターは、福島原発から真西に50キロほど離れた
場所に位置しており、これまで公表された汚染マップでは、とくに汚染の
激しい地域としては指摘されていない場所にあります。
そこからこれほどの放射能が検出されている。
頭がクラクラします。
しかもこれはセシウムのみの値です。
他の核種はないのだろうか。測らなくて良いのだろうか。
またどうしてこれほど重大なニュースが、一面トップにならないのだろうか。
ますます不安が募るばかりです・・・。
*****************************
下水処理施設の汚泥から高濃度の放射性物質 福島・郡山
2011年5月2日3時1分 朝日新聞
福島県郡山市にある下水処理施設の下水汚泥と、汚泥を燃やしてできる
砂状の「溶融スラグ」から高濃度の放射性セシウムが検出された。県が1日
発表した。施設周辺の大気からは、市内の別の地点より高い放射線量が
計測された。県は、汚泥の焼却時に放射性物質が拡散するかどうかに
ついて「調査中」としている。
下水汚泥が高濃度の放射性物質を含む場合、その処理に関する国の指針や
マニュアルはない。このため、下水処理施設を所管する国土交通省は2日、
どのように処理していくか、原子力安全・保安院と対応を緊急に協議する方針。
また東日本の自治体に対し、汚泥中の放射性物質濃度を計測するよう求める
見通しだ。
施設は郡山市日和田町高倉の県中浄化センター。県によると、4月30日に
調査したところ、汚泥から1キロあたり2万6400ベクレル、スラグから同33万
4千ベクレルの放射性セシウムが検出された。スラグの数値は、福島第一原発
事故の前の約1400倍だった。
県は、地表面の放射性物質が雨などによって流れ込み、下水処理の過程で
濃縮されたとみている。
県によると、汚泥は1日80トン発生し、70トンは施設内の溶融炉で燃やすこと
でスラグ2トンになる。残り10トンはセメントの材料としてセメント会社に送るという。
原発事故後、計約500トンの汚泥がセメント会社に搬出されたといい、県が
追跡調査をしている。スラグは施設内でビニールシートをかぶせて保管している。
県はセンターの作業員に放射線量計を持たせるとともに、セメント会社への
搬出を当面の間休止。県内の別の22施設についても同様の調査をするという。
県が1日にセンターの敷地周辺で測定した放射線量は毎時1.8~3.4マイクロ
シーベルトと、約10キロ離れた郡山合同庁舎付近の約1.6マイクロシーベルト
より高かった。
現行の下水道法は、汚泥は積極的に再利用するよう全国の自治体に求めて
いる。国交省によると、全国で発生する汚泥の8割は建材などに再利用され、
残り2割ほどが埋め立て廃棄されているという。(矢崎慶一、北川慧一)
http://www.asahi.com/national/update/0501/TKY201105010383.html