ブログ うつと酒と小説な日々

躁うつ病に悩み、酒を飲みながらも、小説を読み、書く、おじさんの日記

箱庭の巡礼者たち

2024年02月17日 | 文学

 もう4年前のことになりますか。

 今の職階に上がるのとほぼ同時に、世界はコロナ禍に見舞われました。
 私は悪い気にあたると、ひどく気分が落ち込む悪い癖があります。
 コロナ禍の気も、非常に悪いものでした。
 それに加えて昇任によるストレスが加わり、私は小説を読む気力を失ったのでした。
 読書という悪癖から逃れられて幸せだ、なんて空元気を出していましたが、精神が一時的にせよひどく衰えたものと思います。

 しかし最近コロナ禍も収まりつつあり、加えて今の職階にも慣れ、少しづつ気力が充実してきたところ、村上春樹の新作「街とその不確かな壁」が上梓され、これを読むことによって長く続いた小説を読まない生活を終わらせることが出来たように思います。

 今日は私が敬愛する作家、恒川光太郎「箱庭の巡礼者たち」を読みました。

 この作家は「夜市」という小説でデビューし、私は衝撃を受けました。

 その後この人の小説を次々と読みました。
 現実と異世界を行き来する人々の世界をイマジネーション豊かに紡ぎ出す小説群は私を圧倒しました。
 ホラー作家という触れ込みでデビューした人ですが、その内容はそこはかとない哀しみを湛えたダーク・ファンタジーという趣です。

 今日読んだ作品は、ジュブナイル風の青春小説のような書き出しで始まりながら、異世界の扉を開いた少年少女が異世界にどっぷりと浸かり、さらに物語は何百年にも及ぶ壮大な時空を描く連作短編集になっています。
 この作者が醸し出すセンチメンタルな意匠を纏いながら、豊かなエンターテイメントに仕上がっています。

 私が小説から離れていた間にいくつかの本を出したので、それらを丹念に読んでいきたいと思っています。


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