玉川上水みどりといきもの会議

玉川上水の自然を生物多様性の観点でとらえ、そのよりよいあり方を模索し、発信します

玉川上水にはフン虫がいるよ

2017-08-01 18:54:55 | 観察会
こども観察会として「玉川上水にはフン虫がいるよ」を計画しました。こども観察会は津田塾大学でタヌキのタメフンを見るというのをおこなったことがありますが、その続編という意味あいもあります。

案内のチラシを作りました。



 前の日の夕方に糞虫トラップを準備しました。といってもただ、容器の上に割り箸をわたし、そこにお茶パックに犬のフンを入れてぶら下げただけのものです。これを9つ用意して、玉川上水の林の下におきました。容器の底には少し水を入れ、入った糞虫が飛び出さないようにしました。





 8月1日の朝、15人のこどもと保護者とスタッフが同じくらいの数集まりました。玉川上水沿いを15分ほど歩くと昨夜トラップをおいた場所に着きました。





トラップの構造を説明しました。



これまでの経験で糞虫の数がときどきゼロということもありましたが、2、3匹入っていることのほうが多いので、「入っていればいいけどな」と思いながら、覗くと、いました、いました。初めのトラップにすでに9匹ものコブマルエンマコガネが入っていました。水の上をさかんに足を動かしています。水ごと茶漉しで受けて、動き回る糞虫をシャーレに入れました。







 そのあとも9つのトラップ全部に、少ないもので3匹、多いもので11匹が入っていました。9つで62匹という多さです。わたし自身、上出来だなと思いましたが、こどもは多いのか少ないのか基準がないから、「そんなものか」という感じでしたが、大人はみな驚いていました。



「たくさん採れました。ひとつのトラップに7匹くらい来ていました。たった10メートルくらいにこれだけいたんだから、この広い玉川上水にはものすごい数の糞虫がいるということだね、たくさんの糞虫がいて、タヌキやイヌのウンチがあると、やってきてバラバラにしてくれるから、この林はきれいに保たれているんだよ。だから、こんな小さな虫だけど、とてもたいせつな働きをしているということだね。」
 少し天気に不安があったので、そのまま武蔵野美大に移動しました。

 教室ではとってきた糞虫の入ったシャーレを配り、見てもらいました。また実体顕微鏡にセンチコガネとコブマルエンマコガネを置いて見てもらいました。





そのあとで少し説明をしました。初めに糞虫とは動物のウンチを食べる昆虫であること、その重要な供給源はタヌキであることを話しました。そして、発泡スチロールで作ったタヌキの模型を使って食べ物の移動の話をしました。その模型は腹に切れ込みをいれて、それを開くと中に胃袋が見えるようにしました。そして、食べ物が食道をとおって胃袋に移動し、それから腸を通ってお尻の穴からウンチとして出る話をしました。



 わたしは最近100円ショップが気に入っていて、なにかこういうときに使えるものはないかと物色するのですが、腸を説明するホースのようなものがないかと思っていましたが、ピッタリのものはありませんでした。ところがこどものおもちゃのところに、細い風船に空気を送り込んでふくらませ、動物などをつくるおもちゃがありました。細長い風船10本くらいと、プラスチックの注射器みたいな道具で100円だったので、これでもいいやと思って買ってきました。これに空気を入れると60センチくらいになりました。それと腸とは全然違いますが、こどもの注意を引くという意味では大成功。こどもたちはあとでこれで遊んでいました。



 さて、こうしてもたらされた糞を食べるのが糞虫で、ウンチは臭くて汚いものですが、糞虫がいるおかげで土の中にもどっていき、自然がきれいに保たれている、だから糞虫はとても偉い働きをしているという話をしました。
 わたしはこの日のために、もうひとつ準備していたものがあります。それは紙粘土でつくった糞虫です。コブマルエンマコガネは長さ7ミリくらいの小さなものですが、顕微鏡で見ると実にカッコいい形をしています。それをみながら紙粘土で長さ15センチくらいの巨大糞虫模型を作ったのです。紙粘土で胴体を作り、別に6本の脚を作ってボンドでくっつけました。そのあとで、黒絵の具をぬり、乾いたらニスを塗りました。そうしたら、実に糞虫らしいツヤがでました。この模型を入れたのも100円ショップでみつけてフィギュアケースです。




 説明をしたので、いよいよスケッチをしてもらうことにしましたが、その前にひとことアドバイスをしました。それはスケッチブックの大きさを考えて、おもいっきり大きい絵を描いたほうがよいということです。あとはよく見て自由に描いてもらうことにしました。







 どうやらわたしが説明した脚がギザギザだということが印象的だったようで、例外なく脚にギザギザを描いていました。


作品についての説明は不要でしょう。こどもの描く絵はエネルギーに溢れています。そしてひとつひとつが個性的です。

スライドがだいぶ進んだところで、スライドプロジェクターの準備ができたので、少し糞虫のスライド解説をしました。自動撮影カメラによるタヌキが糞をする動画、コブマルエンマコガネが馬糞球を分解する早送り動画などをみてもらいました。

「小さい糞虫だけどすごいよね。もし糞虫がみんなくらいの大きさだったら、あの糞はこの教室くらいの大きさがあるんだよ。それを分解してしまうんだからすごいよね」

 最後に「認定証」をあげて、記念撮影をしました。



 認定証には自分で描いたコブマルエンマコガネのイラストを入れました。








そしてもってきた飼育箱に2匹のエンマコガネと犬の糞をひとさじ配りました。もちろん糞はとても臭いです。みんな「くさい、くさい」と鼻をつまんだりしていましたが、なんとなくうれしそうでもありました。



 私は生まれたときから水洗トイレの生活をしてきたこの子たちが、排泄したらすぐにジャーっと流れてしまい、言ってみればウンチに対して「親しみ」もなければ嫌悪感もないということが、こどもの心にどういう影響を与えるのかわからないでいます。はっきりしているのは、そういう育ち方をするこどもは人類の長い進化史の中にはいなかったということです。その意味で、こういう形でもよいからウンチのことを考えてみること、ウンチを食べる糞虫がいることを知ってほしいと思いました。
 スケッチをすることや、私の解説を聞いたことが、こどもたちの心になにかの形で残ってくれたらうれしいことです。

 準備をし、こどもたちを集めてくださいましたリー智子さん、ありがとうございました。武蔵美大の関野吉晴先生には会場の準備をしていただきました。写真の一部は豊口さんにご協力いただきました。

この講座が終わってから子供たち、大人からも感想が寄せられました。こちら


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