新型インフルエンザ・ウォッチング日記~渡航医学のブログ~

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opinion@zav.att.ne.jp(関西福祉大学 勝田吉彰研究室)

ワクチンについて海外現場経験からひとこと(+補足)

2009-09-14 17:24:47 | インフルエンザ:対策/対策の進歩

<誤解招く部分あり、元記事はそのままに、後半に補足を追加しました>

昨日も取り上げた日経BPの
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/special/pandemic/topics/200909/512201.html

蓮舫・民主政調副会長、「輸入ワクチンの進め方は大いに疑問」

冒頭の”蓮舫”にとらわれないで(笑)冷静にじっくり読み返してみると、田代氏の発言にオイオイと。

同氏曰く
《たとえば素案では、1mlバイアルの場合は、2010年3月までに約1800万人分の出荷が可能としている。また、10mlバイアルの場合は効率的なワクチン製造が可能となるため、製造推定量は約3000万人分との見通しも示した。田代氏は(以下略、原文ママ)》

全部10mlバイアルにすれば宜しい! そしたら輸入しなくても(あるいは減らせる) という趣旨のようです。 

それは無いでしょう。。。全部10mlバイアルで造れなんて。。。 
海外現場を踏んできた経験から率直な声です。

管理人の前職では、肝炎・破傷風・髄膜炎・狂犬病・季節性インフル・チフス・・・それは色々なワクチンを、自ら注射器を握り、アンプル吸って使ってきました。そこで使う製品は、欧州製(グラクソ、アバンティス)も日本製(化血研、阪大微研)もあり並行して経験できました。
 結論からいうと、日本製は正直(物理的に)使いにくい。一例をあげると、これからアフリカに赴任する人に肝炎の接種をしようとすると、欧州製ならTwinrixなる製品1本買ってきてすでに注射器に充填されているものを箱から出してぴっと打っておしまい。半年後にもう1本(計2本)。日本製はA型B型別々それぞれ3本、合計6本。中間に1ヵ月後接種があるけど、そんな律儀に出て来られる暇人少数にてずれてしまうケース多数。 包装はバイアル入りだから、台のところに並べて、説明書を除けて、ふたの金属片をちぎって、ディスポ注射器の封を開けて注射器に吸って・・・と計10倍ぐらいの手間(看護師も居ないし・・)。 
 これでも1人用バイアルの話で、10人用バイアルなら、1つのバイアルに10回針刺して・・ということになります。コンタミ(汚染)の可能性、接種者が10の倍数人同時に現れなければ使い残しは・・・等々。

WHOの机上における同氏の功績は大なるものですが、海外現場で自ら注射器を握りアンプル吸って、日本製欧州製並行して使う・・という経験はお持ちではないのかもしれません。

どうか、日本製ワクチンが全部10人用バイアルで出てくるなんて事にならぬよう願うばかりです。

<補足(2009.9.14)>
読者の方からメールいただき、一部、誤解を与えている部分があることに気が付きました。よって、補足。

上記、「肝炎ワクチン」に関する少々腹立たしい記憶がよみがえりながら書いた部分があり、カッカしながら書く文章はダメだなと反省しつつ・・・

A型とB型が別々のバイアルになっていて計6回(欧州製の3倍)打たねばならないのは「肝炎ワクチン」の話で、「(季節性)インフルエンザワクチン」ではありません。なお、10倍と書いたのは、接種回数3倍のほか、注射器に充填されているものと、バイアルに充填(しかも粉末と溶解液が別々!)されている点も加味した実感です。

で、本論のインフルエンザの話に戻すと・・・
日本製の「季節性インフルエンザ」ワクチンは、A/H3N2、A/H1N1(ソ連)、B型がひとつの「バイアル」に入っています。バイアルとは、直径1センチほどのガラス製容器です。ふたの上の金属片を手で除けるとゴムが現れます。別途、注射器の袋を破って注射器を取り出しキャップを取り、ゴムを突き刺しワクチンを吸います。このとき、あらかじめ注射器に空気を吸い込みバイアルに入れると、その圧力で注射器にスムースに入ります。
 
対して、欧州製(グラクソやアバンティス)の「季節性インフルエンザ」ワクチンは、A/H3N2、A/H1N1、B型が(バイアルではなく)ひとつの「注射器」に充填された状態で入っています。 
したがって、バイアルを手で開けたり、注射器の袋を開けたり、バイアルに注射器を刺して空気を入れて吸ったりの過程が無いので、より清潔かつ手間もかかりません。 接種者が多数いて待たせている時など、本当にありがたいです。

なお、田代氏の言うとおりになると、1つのバイアルに10人分入っているわけですから、10回針突っ込み空気入れて吸ってを繰り返すことになります。また、たとえば5人分使って使い残すときは、開封したバイアルを冷蔵庫に入れて保存することになり
ます。何ともややこしくなります。

さらに、sionoiriさんからいただいたコメントのように、小児用ではこれが20回30回という事になってしまいそうです。




 

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4 コメント

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さらにいえば (sionoiri)
2009-09-14 10:03:25
小児用量は、大人の量より少ないので、1本20人分や30人分になります(小児用量 6歳~13歳未満は0.3ml、1歳~6歳未満は0.2ml、1歳未満は0.1mlずつ注射する。)。詰めてから打つまでの、保存状態も心配です。
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大瓶製造の化血研ワクチン死者続出 (浅見真規)
2009-12-05 00:36:10
> これでも1人用バイアルの話で、10人用
>バイアルなら、1つのバイアルに10回針
>刺して・・ということになります。
>コンタミ(汚染)の可能性、接種者が10の
>倍数人同時に現れなければ使い残しは・・・
>等々。


新型インフルエンザワクチンで大瓶(10mlバイアル)製造してるのは化血研ワクチンだけですが、死者続出しています。(注)

もしかしたら、大瓶が原因で一日で使い切れず何日も残している医院もあるのかもしれません。(化血研に電話したら担当者が会議中で、後で電話すると言ってたのに電話が無く、大瓶で死亡事例続出してるのか否か現時点では不明ですけど)
*****
(注)詳しくは私のHP記事参照。
[ 新型インフルエンザワクチン接種後死亡事例の多い 九州の「化血研」製ワクチン ]
http://masanori-asami.hp.infoseek.co.jp/JP/influenza/kaketsuken_vaccine.htm
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化血研の出荷量が圧倒的に多かったのが原因でした (浅見真規)
2009-12-08 14:54:26
化血研製新型インフルエンザワクチン接種後の死者が圧倒的に多かったのは化血研の出荷量が圧倒的に多かったのが原因でした。そのため、死者の絶対数が圧倒的に多くても死亡比率は他のワクチンメーカーと同程度である事がわかりました。

混乱を招くコメントしてすみませんでした。
*****
厚生労働省HPの以下の記事参照。

2009年10月15日付け記事「新型インフルエンザA(H1N1)ワクチンの初出荷等のお知らせについて」

http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/hourei/2009/10/dl/info1015-01.pdf

2009年10月16日付け記事「新型インフルエンザ(A/H1N1)ワクチンの第2回出荷等のお知らせについて」

http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/hourei/2009/10/dl/info1016-02.pdf

2009年10月27日新型インフルエンザA(H1N1)ワクチンの第3回出荷等のお知らせについて

http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/hourei/2009/10/dl/info1027-01.pdf
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化血研の「SL02A」と「SL04B」は問題有り (浅見真規)
2009-12-12 19:39:47
化血研の新型インフルエンザワクチン全体の平均を出荷量から考えると他のワクチンメーカーと同程度の死亡率なのですがロット「SL02A」と「SL04B」については、やはり問題があるようです。
木村盛世医師(厚生労働省技官)の化血研製新型インフルエンザワクチンのロット「SL02A」の危険性の指摘を参考に、独自に計算してみると化血研製新型インフルエンザワクチンのロット「SL02A」と「SL04B」の死亡比率が特に高い事が判明しました。
勝田先生やブログ読者の方を混乱させてすみません。
*****
12月8日報告分までに化血研製新型インフルエンザワクチンのロット「SL02A」は12名の死亡事例報告があり、「SL04B」についても10名の死亡事例報告の報告があるので、その他のロット(他のワクチンメーカーのロットと化血研の「SL02A」と「SL04B」以外のロット)で12月8日までに接種後死亡報告の無い医療関係者と妊婦を除外した接種者での死亡比率の平均値(約17万8751人に一人)と比べると化血研の「SL02A」の死亡比率(約3万7500人に一人)は約4.77倍、「SL04B」の死亡比率(4万5000人に一人)の約3.97倍もの高率になるのが計算で判明しました。
http://masanori-asami.hp.infoseek.co.jp/JP/influenza/kaketsuken_vaccine.htm
ここまで死亡比率がかけ離れている事から化血研製新型インフルエンザワクチンのロット「SL02A」と「SL04B」の薬液には欠陥があると推定されるので、接種を緊急に停止し廃棄または回収すべきであると考えられます。 また、特定のロットだけ死亡率が高いので大瓶(10mlバイアル)だからといいうわけではないみたいです。
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