言葉って面白い!

この日本語、英語でなんていうの?その奥に深い文化の違いが見えてきませんか。

また「君」に恋してる

2010年12月31日 | 映画・芸能
昨夜レコード大賞で坂本冬美さんが「また君に恋してる」で特別賞を受賞していました。
その時のインタビューで、この歌が広く受け入れられたのは、歌詞の内容が男でも女でもあてはまるものだからだ、という主旨のことを話していました。
「あなた」でもなく「お前」でもなく「君」という男でも女でも使いそうな言葉が「誰にでもあてはまる」世界観を作ったということです。
興味深い発言でした。

考えてみれば、英語ではこんな違いはないわけです。
I love you.は、男でも女でも同じように使いますし、youが他の二人称に変わることもありません。
日本語では確かに「またお前に恋してる」という歌があれば、それは男からの目線だと思われるでしょう。
日本は、会話の相手が目上か目下か、年上か年下か、男か女か、あるいは身内か他人かで一人称や二人称を細かく言い分ける言葉です。
そのことで社会的な関係性を互いに確認しているわけです。

これらの二人称の単語が表す関係性は、時代とともに変化もしています。
たとえば、「君」はもともと「君主」という言葉に表れるように、主人や貴人などを指す言葉でした。
転じて、敬愛する人一般を指すようになりましたが、以前は女から男を指す場合に多く使われました。
それが今では、どちらかといえば同等か目下の人に使うことが多く、また男性がより多く使うケースが多い言葉になっています。

「おまえ」や「きさま」などもかつては目上の人を敬って使う言葉でしたが、今ではやや乱暴な男言葉になっています。
また「あなた」も、かつては目上の人に使っていた言葉が、現代語では妻が夫に向かって使うか、あるいは対等か下位の人に使うケースが多いようです。

総じて、どの二人称もかつては目上の人に使っていた語が、現代では目下の者や身内に使うように変化してきた歴史があるようです。
かつては位の高い人には名前を直接呼ぶよりも二人称代名詞を使う方がふさわしい場合も多かったのでしょう。
現代の企業社会では、二人称の代名詞を使うと「相手の名前を覚えていない」と受け取られかねず、「山田さん」「斉藤様」など名前で呼ぶか、あるいは「部長」「店長」など役職で表すことが一般的です。
一方で同期や部下に対しては「君」や「あなた」も違和感無く使えます。

使い方には、こうした変化は時代とともに表れますが、二人称の使い分けによって人間の関係性を表すことは、日本語の持つ本質的な特性の一つであることには変わりはないようです。




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