二月とは思えない暖かな週末を迎えています。
新型コロナの感染拡大がなければ、皆さんこぞって出かけていたことでしょう。
仕方なく、近所をぶらぶらと散歩していると、駅近くにある和菓子屋さんで桜餅の看板を見かけたので、思わず買ってしまいました。
数ある餅の中でも私は桜餅が大好きです。
今日はちょうどイギリス人の知り合いが訪れる日なので、彼の分も買って帰りました。
さっそく、これはcherry blossomの葉っぱが巻かれていて、塩気と甘味のコンビネーションが美味しいんだよ、などと説明しながらいただきます。
ところで…と話は別の方向へ。
日本語では、バラでも桜でも「花」と表現しますが、英語では、バラはflower、桜はblossomを使います。
cherry flowerとは言いません。
桜以外にも、リンゴやオレンジなど、果実をつける樹木に咲く花はflowerでなくblossomになります。
flowerは主に草花。樹木でなく、茎の上に付く花のイメージです。
さらにややこしいことに、bloomという言葉もあります。
これは「観賞用の花」を指すらしいのですが、roseだって鑑賞用ですよねえ。
辞書によると、flowerが、花の部分だけでなく、茎も含めた草花全体までをイメージできる言葉なのに対し、 bloomはまさに花の部分だけを指すイメージ。
さらにbloomは咲いている状態だけを差し、つぼみの状態では使わない言葉だそうです。
日本語では、三つの言葉のどの意味を表す場合でも、「花」で事足ります。
なぜ、英語では同じような概念を違う言葉で表しているのか。
「言葉の違いは文化の違い」という当サイトのコンセプトから言えば、欧米の「花」に対する価値観や文化の違いが、この三つの言葉を生み出したはず。
何か思い当たることはありませんか、と博識なイギリス人に聞いてみると、答えはちょっと違いました。
「英語は歴史的にいろんな地方の言葉が入り込んでいるから、語源が違うのではないかな」 というのです。
さっそくオックスフォードのword originを引いてみて、納得しました。 flower ・・・もともとラテン語のflosから古フランス語のflour→中英語のflour→flower blossom・・・ドイツ系の語源からくる古英語のblostmより bloom・・・古北欧系の「花」を表す語 blom と、繁栄を意味するblomiより。
三つの単語は、それぞれラテン、ドイツ、北欧と、異なる地域の言語から輸入された言葉、というわけです。
日本語でも似たような現象はありますね。 例えば、同じように飲み物を入れる器を表すのに、日本古来の訓読みをベースにした「湯飲み」と、音読みベースの「碗」あるいは「茶碗」、英語や西洋由来の「コップ」や「カップ」などがあり、形状や何を入れるかで少しずつ使い分けています。
こうした言葉の歴史の中で単語の分布が変わるのも、面白い現象だと思います。