以下は前章の続きである。
産業革新機構で新株を引き受ければ、現在の倒産リスクを織り込んだ東芝の時価総額1.1兆円から債務超過発表前の時価総額1.8兆円まで回復を見込めるだろう。
割り当て時の株価次第では政府系ファンドも利益も見込めるし、倒産を免れれば株主利益にもなるため株主の理解も得られるはずだ。
そして、何よりも重要なのは、国民の理解である。
半導体企業を失うと周辺技術や川下の産業も共に衰えていく。
そうなれば、534万人が従事する自動車産業にも影響を及ぼしかねない。
だからこそ、自動車メーカーヘマイコンチップを供給しているルネサスの危機の時には自動車メーカーが支援したのである。
そのルネサスも中国人社長に現金を好きなように使われて危機的状況にある。
さらにはエアバッグのタカタは民事再生を申請し、その翌日には全での資産と事業が中国系に買い取られてしまった。
日本経済の危機は半導体・精密機器業界だけでなく、既に自動車産業をも蝕み始めているのだ。
仮に東芝が資金調達を無事に終了して着実なる再建を果たしたとしても、技術流出被害の再発を防ぐためには民間企業の社員の努力だけでは国家が関わる産業スパイ問題を乗り越えることはできない。
今こそ、国民の理解を得て、スパイ防止法の成立を目指さなければならない。