以下は前章の続きである。
マッカーサーは着任するなり「戦犯39人を吊るせ」と言ったと半藤は書く。
リンカーンはスー族を殲滅した後、酋長39人を同時絞首刑にした。それが数字の根拠なのは百も承知しているが、正義と寛容の人マッカーサーがそんな人種偏見男では都合が悪い。
「悪いのは日本人」に徹する半藤はだから一切、不都合を書かない。
この朝日での語りも同じだ。
半藤は「勇ましい安倍」を見て「昭和史にも似たようなことがあった」と続ける。
「日中戦争が始まった後、ドイツが和平工作に入った」いわゆるトラウトマンエ作に日本は応じなかった。
軍を進め南京を落として近衛首相は「蒋介石を相手にせず」と勇ましく言い放った。
それで「蒋介石を怒らせ戦争は泥沼化した」「勇ましい言葉で台無しにした」というのだ。
一見まともそうだが、「日中戦争が始まった」という言い方はヘンだろう。
戦争は桜の開花とはわけが違う。
誰かが仕掛けるから始まるのだ。
あのときは独が蒋の軍に武器と訓練を施し、米ソも空軍作りを支援して支那と日本を戦わせた。
背景には「黄色い日本と支那が手を携えたら白人支配が危なくなる」(ムッソリーニ)という危惧もあった。
日本に負けた独の根深い嫉妬もある、アジアに出遅れた米の思惑もある。
それをすべて無視して「近衛の傲慢な一言がいけなかった」にしてしまう。
朝日新聞と全く同じだ。
半藤さんちの月刊「文藝春秋」が売れなくなったのも分かる気がする。