以下は前章の続きである。
アメリカと同じ道を辿るな
もともとアメリカでは、宗教的な戒律を重んじる生き方を「保守的(コンサーバティブ)」と呼んだのに対して、「わがまま」を主張したい人たちの発言や行動が「リベラル」とされていた側面があります。
しかし現在では、少数者の権利を声高に主張し、彼らへの福祉政策を重視する立場を指すことが多くなっています。
そのような人たちの活動が行きすぎて、かつては「リベラル=自由主義的」という意味合いだったのが、いまではともすれば「リベラル=全体主義的」なニュアンスを連想せざるをえない、とても息苦しい状況を招いているのです。
前掲の『リベラルの毒に侵された日米の憂鬱』という意味が示すとおり、アメリカでは、「リベラル」という言葉が、本来の「自由な」「寛大な」「開放的な」「度量の大きい」「偏見のない」といった意味から大きく離れて、いまでは真逆の「社会に毒をまき散らす存在」として認識されていることを、日本人はよく理解しておいたほうがいいと思います。
とくに、リベラルが「自由」とは真逆の、「全体主義的で息苦しい社会」をつくり出してしまったことについては、残念ながらアメリカは日本よりもずっと先に行っています。
日本人は「リベラルの功罪」について、自分の頭でよく考え、アメリカの失敗の現状と、その原因や対応策について学んでおくべきでしょう。
絶対に、アメリカと同じ道を辿ってはいけません。
端的にいえば、「日本人は本当に、日本を現在のアメリカみたいな息苦しい社会にしたいですか?」「リベラルの危険性に気付いていますか?」と、私はいいたいのです。
ヒラリーの「黒い影」
アメリカの2016年の大統領選挙で、ヒラリー・クリントン候補がドナルド・トランプ候補に敗北したとき、多くの日本人が「リベラルに熱烈に支援されている、あんなに知的で政治経験も豊富な本命候補のヒラリー・クリントン元国務長官が、どうしてまったく政治経
験のないトランプに負けたのだろうか?」と疑問に思ったようです。
一方、アメリカでは、この選挙を契機に多くの人が、大手メディアの報道をまったく信用しなくなりました。
それもそのはず、FOXニュースなどのごく一部を除けば、大手メディアの大半はリベラル派であり、しかも選挙戦の最初から最後まで、ヒラリー陣営に過剰なまでの肩入れをしていました。
ヒラリーが勝つことは絶対に間違いがないと報じ、また、繰り返し行なわれた世論調査の結果においても、ヒラリーがずっとリードしているかのような印象操作を行ない続けていたのです。
ちなみに私は、日本時間の投開票日である2016年11月9日、朝8時から夜11時まで、計4本のネットごアレビ地上波、ラジオ、BSの生番組に出演したのですが、各番組の前日までの事前打ち合わせの際に、「トランプ勝利」を想定していた番組は一つもありませんでした。
予想外の展開に、台本をとくに重視するNHKラジオは大慌てでした。
私自身もトランプ候補に不在者投票を行ない、さらにアメリカに住む妻や息子だちからは「絶対にトランプが勝つよ!」と以前からいわれていたのですが、「本当に勝てるかもしれない」と私自身が感じたのは、じつは投開票日の前日でした。
いまから振り返ってみても、それほど日本メディアの報道は、「アンチ・トランプ」だけに偏っていたと思います。
結果論かもしれませんが、そんな圧倒的多数の大手メディアによる「フェイクニュース」と、心理的な「印象操作」まで交えた大応援にもかかわらず、なぜ、ヒラリー候補は2016年の大統領選挙で惨敗したのでしょうか。
じつは、その理由にも、現代アメリカでの「リベラル」の正体が見え隠れしています。
一つ例を挙げるとすれば、ヒラリーが国務長官在任中に、公務で私用メールアドレスを使用していた件は、日本で報じられている以上に大問題なのです。
国家機密漏洩の危険性があっただけでなく、日本でいえば外務大臣にあたる国務長官としての連絡用に、私的メールサーバーを使っていたため、そのやりとりは政府の重要な公文書としての記録が残せず、在任中の彼女の行動の多くが謎に包まれてしまうこととなりました。
当たり前の話ですが、国務長官はじめ閣僚や政府職員が作成したメールを含む文書は、すべてが公文書扱いとなり、すべての内容が自動的に政府のアーカイブに保存され、一定期間経過すると公開されます。
それを熟知しているヒラリーは、自分が周囲の人間に隠れてやっている悪事を第三者に知られたくないからこそ、わざと公的なメールアドレスを使わなかったと考えられているのです。
事実、彼女は私的サーバーから発した、自分の万単位のメールを破棄してしまっているわけです。
情報を削除しただけではなく、ハードディスクドライブのデータを完全破壊させたといわれています。
そこまでして、彼女はいったい何を隠そうとしていたのでしょうか。彼女にはいつもこうして「黒い影」が付きまとっているのです。