以下は前章の続きである。
難関大学の偏りを比較
次に試みたのは、大学のホームページに掲載されている文章の分析である[3]。
ホームページに掲載されている大学教員のメッセ-ジや研究科・専攻の教育理念などの文章を学問分野別に収集して分析対象とした。収集・分析の対象とした大学と文章は、東京大学(人文社会科学44、理工学51、生命科学38)、京都大学(同72、37、40)、筑波大学、(同51、32、32)、早稲田大学(人文社会科学55、理工学29)、慶応大学(同47、32)である。
早大と慶大の生命科学については該当する組織が少なく十分な数の文章が集まらないため、対象から外している。
収集した文章について、人文社会科学、理工学、生命科学の3分野に分けて、それぞれ各大学の文章がどの政党の発言と類似度が高いかを判定した結果を左の図1から図3に示す。
全て与党寄りに判定されているのは、大学をアピールする文章を収集しているため、批判的・ネガティブな表現よりポジティブな表現が多いことによる。
その中でも、京都大学の全ての学問分野と慶応大学の文系が野党との類似度が高いこと、学問分野別では理工系が最も与党寄りで、生命科学が最も野党寄りであることが分かった。
ただ、文章が与党の発言に類似するか、野党の発言に類似するかは、ポジティブ表現、ネガティブ表現の偏りにも影響されるため、考え方が保守的か革新的かの判断材料とするには不十分な点も多い。
そのため、大学のイデオロギー・バイアスを調査する研究は一旦頓挫していたが、前出の「安全保障関連法に反対する学者の会」がそれを乗り越える格好の材料を提供してくれた。
この稿続く。