文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

この筋書きにはいくつか北朝鮮の体制と直結する疑問が生じる。 

2018年08月05日 13時53分05秒 | 日記

以下は今日の産経新聞朝刊に「北に手をさしのべる愚」と題して掲載された加藤達也の連載コラムからである。

文中強調は私。

米朝首脳会談で体制の安全については一息ついた北朝鮮。

次は、経済の本格的な立て直しが目標だ。

ただ世の中は思ったほど北朝鮮の“政治ショー”に乗せられることはなく、国連などの制裁も解除されない。

先日、金正恩朝鮮労働党委員長が現地指導先で職員をしかり飛ばしたというが、これも経済が想像以上に思わしくないからだろう。 

こんな中で最近、拉致問題の解決よりも日朝国交正常化へ向けた交渉を推進すべしとの動きが目立ってきた。  

まず正常化してカネを払って北を諸懸案の議論に引き出すーという発想なのだが、誰に話を聞いても、日本人にとって一体どんな利があるのかさっぱり理解できない。 

動きの一つに日朝国交正常化推進議員連盟(衛藤征士郎会長)がある。自民から共産までの衆参議員で槿成され、6月21日の総会では代理も含めて60人以上が参集する盛会だったが、在日朝朝鮮人総連合会(朝鮮総連)機関紙「朝鮮新報」の平壌支局長を招いて「拉致問題は解決済み」というお決まりの主張に耳を傾けたという。  

この「解決済み」というフレーズは、北にとってはば本への謝罪と金銭要求の口上の“上の句”といっていい。 

たとえば先月23日の朝鮮中央通信は「日本が現実を直視せず、完全に解決した《拉致問題》などというものを持ち出したところで、朝鮮民族の血で染められた日帝の過去の罪悪に対する謝罪と補償を要求する世界の民心の声だけが高まるだけだ」と主張。

さらに、「日本の政財界の人物の中でも《今、日本がやるべきことは朝鮮半島の植民地化に対して謝罪すること》だという声があがってきて(いる)というのだが、どこの政財界人がそんなことを言っているのか。

ちなみに同議連はこの記事の4日後、まるで記事に呼応したように、日朝首脳会談の実現を求める決議を行っている。

同議連の各月21日の総会にはもう一人講師がいた。

田中均元外務審議官だ。

アジア大洋州局長だった平成14年、日朝首脳会談で「5人生存、8人死亡」という北の調査結果を受け、無検証に被害者家族に伝達し、絶望のどん底に突き落とした人物だが「文芸春秋」8月号で持論を開陳している。 

田中氏は「拉致問題も、核・ミサイル問題も、国交正常化のプロセスの中でしか解決できない」と確信しているらしく、東アジアに北朝鮮を含めた経済レジームを構築すべきだと主張。

さらに、北朝鮮には地理的に将来的な好機があり、資源も豊富で、韓国、中国やロシアはすでに手を伸ばしつつある―などと北朝鮮の経済チャンスを紹介している。

カネをつぎ込んで経済を開放させて話し合いに応じさせ諸懸案を解決するというバラ色の将来を描くが、この筋書きにはいくつか北朝鮮の体制と直結する疑問が生じる。 

北に鉱物資源が豊富なのは、日本統治時代の調査で間違いないし、人的資源も豊富だろう。

ただ、日本の対北輸出が2億5千万ドルを超えていた昭和40年代、大手の商社、銀行などが投資したが、たとえば500億円規模のセメントプラントが回収不能となるなど惨憺たる結果となり、現在も問題は尾を引いている。 

田中論文が掲載されたのと同じ「文芸春秋」では、AP通信の平壌支局長が北が抱える体制と経済のジレンマを言い当てている。 

「外国からの投資を受け入れて国の経済を発展させる代償が支配力低下であることを平壌はよくわかっている」。

金正恩体制は経済をあくまで自身の体制が揺るがない範囲に置き、開放しないだろう。

北の経済を開発、開放して拉致問題解決につなげるという発想が雲をつかむような話だと、想像がつく。  


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