George Harrison and Eric Clapton - While my guitar gently weeps
以下は前章の続きである。
有本
「選挙」というと、どうしても国内の政治基盤だけに注目しがちですが、外交関係にも影響があるのですね。
選挙で負けて交代する人と約束しても意味がない。
北朝鮮を注視せよ!
安倍
たとえば今回の選挙は、「国難を突破するため」の解散でした。
「国難」とは、一つは少子高齢化。
もう一つは北朝鮮の脅威。
この国難にどう立ち向かうかを国民に問うて信を得たわけですが、これによってどんな影響が出てくるか。
対北朝鮮対応で言えば、現在、私は「北朝鮮の側から、『政策を変えるので話し合いたい』と言わせる状況を作るために、いまは圧力をかけるべきだ」と主張しています。
この主張が日本国民の信を得て、さらに国際社会で理解を得、協力を得たことで、実行に移っていきます。
いわば、選挙による信任の力を背景として、影響力のある外交を展開していくということです。
選挙後、各国の首相と会いましたが、やはり私の主張、つまり日本の主張により耳を傾けるようになったと思います。
有本
9月には、国連で一般討論演説に臨まれた。
〈私は、私の討論をただ一点、北朝鮮に関して集中せざるを得ません〉と述べ、90年代からいかに北朝鮮と「対話」を続けてきて、結果、現在のような危機的状況に至ったかをお話しになった。
その後、非常に短期間で制裁決議に至りました。
これは、ロシアのプーチン大統領ともよくコミュニケーションをとられた総理の手腕によるものだったと評価する向きも多いですね。
安倍
長期政権の一つの成果として、就任以来展開してきた「地球儀を俯瞰する外交」が、北朝鮮に対する厳しい制裁を決議するうえで少しは役に立ったのかなと思っています。
特に、プーチン大統領とはウラジオストクで首脳会談を行い、国連の場で協力することで一致しました。
その後の日露協議を踏まえ、ロシアも正式に制裁に賛成してくれることになったのです。
先般の国連決議は非常に厳しいもので、石油分野での北朝鮮への輸出が3割止まっています。
仮に日本で3割の石油分野の輸入がストップすれば、パニックになりかねません。
しかも北朝鮮の冬は厳しい。
年末以降、寒さが厳しさを増していくなかで、制裁が効果を発揮していくでしょう。
だからこそ、北朝鮮の動きを注視しなければなりません。
北朝鮮からは現在、日本海側に次々と木造船が漂着しています。
これに対しても、万全を期す必要があります。
有本
木造船漂着のニュースに関しては、国民の間でも不安が広がっています。
しかし、国会ではあまり議論されていない印象です。
NSCで万全の体制
安倍
国民の皆様は、木造船の漂着を受けて、「国はどう対応するのか」「どういう人たちが漂着したのか」「病気や感染症にかかっていないか」など、様々な不安を持たれていると思います。
国会での議論を期待されている方も多いと思いますが、自民党の青山繁晴議員が「仮に天然痘を発症させたまま上陸してきたらどうするんだ」と、危機管理におけるかなり重要なポイントについて質問をされました。
残念ながら、メディアではほとんど報じられませんでしたが。
与党からの質問は無意味だとする向きもありますが、しかし現実として、野党からこのような議論は出てこなかったのです。
国会は各党が見識を競う場ですから、国民の皆さんがどんな議論を期待しているか、どういうことを知りたいと思っているか、真剣に考える必要があります。
様々な情報から、現在の漂着船について事態が深刻化する恐れは少ないと見ていますが、警察も海上保安庁もしっかりと危機に対応できるよう、体制を強化していますし、万が一にも上陸した人間から感染症等が広がることのないよう、万全を期しています。