以下は月刊誌正論今月号に掲載されている、日朝議連、田中均元外務審議官…北朝鮮の謀略が始まっているのか、と題して掲載された西岡力氏の論文からである。
西岡力氏は朝日新聞の従軍慰安婦報道が完全な捏造報道だったことを解明して朝日新聞の反日思想がもたらした大損害から日本を救ってくれた日本にとって命の恩人のような本物の学者の一人である。
見出し以外の文中強調は私。
100億ドルをせしめたい北朝鮮
米朝首脳会談への評価は様々だが、拉致問題に関する安倍晋三総理の伝言をトランプ大統領が独裁者、金正恩に直接伝えてくれたことは、大きな成果だった。
金正恩政権内部からは、米朝会談は成功した、次は日朝会談だという話が多数聞こえてくる。
北朝鮮は米国から斬首作戦の停止を取り付け、日本から100億ドル以上のカネを取ろうと考えて、今年の対話攻勢をはじめた。
2002年小泉首相訪朝時に外務省は、秘密協議で国交正常化後に提供できる経済協力の規模を100億ドル、約1兆円と伝えていた。
これは当時、平壌の中枢部にいて、現在韓国に亡命した複数の元高官らが口を揃えて証言している。
2016年に亡命した元駐英北朝鮮大使館公使、太永浩氏も今年5月に韓国で出版した著書で次のように書いている。
「(小泉首相が平壌訪問して金正日と平壌宣言を発表した後)、姜錫柱第一副外相が直接外務省の講堂で全体成員を対象に講演を実施した。(略)『(略)日本は植民地統治の被害に対して経済協力方式で補償すると約束した。少なくとも100億ドルは入ってくるだろう。100億ドルなら朝鮮の道路と鉄道など基本的下部構造はすべて現代化できる。『100億ドル』という題目には私さえも胸が躍った。外務省の同僚たちもたいへん興奮した様子だった。その程度に大切で莫大な金額だった」(『三階書記室の暗号』209~211頁)
日本政府は具体的金額など約束をしていないという公式的な立場をくりかえしてきた。
しかし、安倍晋三首相によると、小泉訪朝を準備した田中均・外務省局長は秘密交渉の記録の2回分を残していない。
その中に100億ドルを約束した部分が含まれるのではないか。
米朝首脳会談が終わって、同じ数字がマスコミにリークされ、産経、日経、朝日がそれを紙面で書いている。
国連は北朝鮮のGNP規模を約200億ドルと見ており、韓国銀行は約400億ドルと推計している。
ある情報筋によると北朝鮮経済関係者は自国のGNP規模を正直ベースで200億~300億ドルとみているという。
100億ドルという金額が彼らにとってたいへん魅力的であることは間違いない。
この稿続く。