以下は前章の続きである
ゲイツ氏の原発中国へ
中国総局 多部田俊輔
巨大需要、新技術の苗床に
天津市から南に100kmあまり離れた渤海に面した河北省濃州市。有名な武道家を輩出してきた「武術の郷」が世界のエネルギー業界から注目を浴びている。
米マイクロソフトの創業者、ビル・ゲイツ氏が旗を振る次世代原子炉「TWR」の実用化に向けて大きな一歩を踏み出したからだ。
中国にゲイツ氏を引き寄せたのは、李克強(リー・クォーチャン)首相のラブコール。
「米国側の進んだ技術と、中国側の知恵や突破力を組み合わせて共存共栄しよう」と呼びかけた。
ゲイツ氏も応えた。
「中国企業との協力を重視しており、協力の未来図を美しい現実に変えていきたい」。
ゲイツ氏が会長を務める原子力ベンチャーのテラパワーは昨年11月、中国国有原子力大手の中国核工業集団(中核集団)などと合弁会社を設立した。
中国側はTWRの実用化に向けてアクセルを踏んでいる。
合弁会社に加え、TWR建設と運営を手掛ける会社や資金を集める投資会社も設立し、5年後の実用化を目標に掲げた。
TWRの特徴は低コストと高い安全性とされる。
ウランから燃料をつくる際に生じる劣化ウランを燃料に使い、最長100年間も燃料交換せずに動く。
さらに廃棄物も少ないという。
実は、この「ゲイツ原発」の実用化で先行していたのは日本だった。
この稿続く。