文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

なぜ北朝鮮との交渉を失敗してきたのか。われわれ(米軍)は、話し合いによる解決を優先する国務省に交渉を任せてきたことと、

2018年10月17日 17時52分11秒 | 日記

10日発売の月刊誌Voice今月号(780円)は本屋で一度・購読をためらった。

今月号の正論が創刊45周年特集号を組んで…読むべし論文が満載されていたからである。

後日、Voiceも…読まねばならぬ論文があって当然なのだから…と購読した。

九州大学の現役及び卒業生の諸君は、今、非常にいい仕事をし続けている江崎道朗が九州大学の卒業生である事に感謝と誇りを持つべきだろうと以前に発信したとおり、彼は言論人として為すべき仕事を続けている。

総力特集、米中激突、日本の決断、

消費税減税が最良の一手だ

貿易戦争は日本にとって大チャンス

トランプ政権の「DIME」戦略 

「卜ランプ政権はいつ、北朝鮮への爆撃に踏み切るのか」新聞・マスコミが連日のように北朝鮮危機で騒いでいた昨年のことだ。

ハワイで会った元米軍関係者にこう質問をしたら、彼は苦笑して、こう答えた。

「北朝鮮だけを見ていては、判断を誤る。われわれは現在、アジア太平洋方面では、二つの大きな脅威に直面している。短期的には北朝鮮。長期的には中国が自国の利益を確保するために軍事力を使おうとしていることだ」

怪訝な顔をしていたのだろう。

彼はこう続けた。

「北朝鮮の核開発を阻止すべく国際社会と米国はこの20数年のあいだに5回、核開発中止で合意し、5回とも騙された。なぜ北朝鮮との交渉を失敗してきたのか。われわれ(米軍)は、話し合いによる解決を優先する国務省に交渉を任せてきたことと、北朝鮮の背後にいる中国を抑え込もうとしなかったことが原因だと考えている」

「それでは、北朝鮮の核ミサイル問題を解決するためにも、中国を抑え込むことが重要だという考えか」 

そう質問しながらも、卜ランプ政権はどうやって中国を抑え込むつもりなのか、内心では疑問だった。

すると、彼はこう続けた。 

「北朝鮮の脅威は、軍事だけといえる。経済力がないため、中国に比べればそれほど難しくない。中国は経済力をもっているため、中国に対して軍事は重要だが、それ以上に外交、諜報、経済などの分野で中国を抑正していくことが重要だ」 

まさか元軍人から経済の話が出てくるとは思わなかったが、中国が一帯一路構想も含め経済、諜報、外交と連動させてアジア太平洋に進出してきている以上、こちらも軍事だけで対中戦略を考えるわけにはいかない、というのだ。

このようにDiplomacy(外交)、intelligence(諜報)、Military(軍事)、Economy(経済)の四分野で戦略を考えることを、その頭文字を取って「DIME」という。

「もう少し詳しく説明してくれないか」

そう聞くと、南シナ海での「航行の自由」作戦を例に、米軍側がこの作戦の外交的、諜報的、経済的効果についてどのように考えているのかを縷々説明してくれたが、機微にわたる話なので、ここでは書かない。

理解してほしいことは、米軍の情報関係者たちは、軍事だけでなく、経済やインテリジェンスを組み合わせて北朝鮮や中国に対応しようとしているということだ。

「DIMEについて、詳しく説明した本はあるか」 こう尋ねると、彼はこう答えた。 

「われわれも執筆に協力したが、カリフォルニア大学のピーター・ナヴァロ教授が書いた『米中もし戦わば』(邦訳、文藝春秋)を読んだほうがいい。トランプ政権の通商政策のアドバイザーをしているナヴァロ教授の戦略をトランプ政権に採用させようと、政権内部ではいま、激しい権力闘争を繰り広げていると聞いている」    

「準同盟国」から「潜在的敵国」へ

2015年から2016年にかけて行なわれた米国大統領選挙において共和党候補だったトランプは、有権者に向かってこう繰り返した。 

「米国が不景気になったのは、中国が不正なダンピング輸出によって米国の製造業を破壊し、雇用を奪ったからだ。しかも中国の不正輸出で儲けた多国籍企業から多額の献金をもらっている民主党と共和党のエスタブリッシュメント(支配層)たちは、それを見て見ぬふりをしてきた。エスタブリッシュメントたちから政治の主導権を取り戻し、米国を再び偉大な国として復活させよう( Make America Great Again)」 

日本では、選挙中のトランプのこの発言をたんなるリップサービスだと軽く考えている人が多いが、じつはこの考え方が現在の米中貿易戦争へとつながっている。

トランプの発言の理論的背景になっているのが、ナヴァロ教授の『米中もし戦わば』であり、第42章にはこう記されている。 

《①中国は、通貨操作、違法な輸出補助金、知的財産侵害、自国の製造基盤を強化し輸出主導型経済成長を促進するための自国市場の保護など、数々の不公正な貿易方法に頼っている。 

②経済成長と強力な製造基盤が中国に、軍事力の強化及び近代化のための豊かな資源をもたらした。 

③中国は、その優勢な経済力を武器に、貿易や領土問題などさまざまな問題で日本、フィリピン、台湾、べトナムなどの近隣アジア諸国を威圧してきた。 

2001年に中国がWTOに加盟し、米国市場に自由に参入できるようになって以来、米国は7万か所以上の製造工場を失い、経済成長率は半分以下に縮小した。 

⑤経済成長の減速と製造基盤の弱体化により、米国にとって、自国の安全保障を確実にするとともにアジア同盟諸国への条約義務を遂行するに足る軍事力の規模と質とを維持することは次第に困難になりつつある》

中国こそアジア太平洋の脅威であり、その脅威の源泉は不公正な貿易で成長した中国の経済力である。

よってその経済力を削ることこそ米国の国益と同盟国を守ることだ。 このナヴァロ教授の議論を背景に昨年1218日に公表した「国家安全保障戦略」においてトランプ政権は、中国とロシアを力による「現状変更勢力」、すなわち「米国の価値や利益とは正反対の世界への転換を図る勢力」として名指しで非難した。 

米中「協調」関係がずっと続いていたかのように誤解している人もいるが、米国が中国共産党政府と協調関係を結んだのは、リチャード・ニクソン大統領が訪中した1972年以降のことだ。

当時は米ソ冷戦の時代で、ソ連の脅威に対抗するためにニクソン政権は、あえて共産国家である中国との協調関係を構築した。

この米中協調の成立があったからこそ日本企業も安心して中国に進出できた。

以来、米国は、中国の経済発展を支援することで民主化を促そうとしてきたが、中国は、不公正な貿易慣行によって米国の製造業を解体しただけでなく、軍拡を進め、南シナ海に軍事基地をつくり、尖閣諸島を含む東シナ海でも傍若無人に振る舞うようになった。

そう考えたトランプ政権は45年ぶりに中国を「凖同盟国」から「潜在的敵国」へと、その戦略的位置付けを転換させたのだ。


最新の画像もっと見る