文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

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執筆を通じ、純真な人間性だけでなく、学問の全体像も何となく見えてきたという。「先生のように考えるための、私自身の小室直樹研究が再び始まった」

2018年11月06日 22時39分16秒 | 日記

以下は日曜日の産経新聞読書欄からである。

「評伝 小室直樹」上・下 村上篤直さん

「命の恩人」を慕って

多くの後進を育てた自主ゼミで知られ、破天荒な言動で鮮烈な印象を残した知識人・小室直樹が死去して8年。

小室を「命の恩人」と慕う1972年生まれの著者が、愛にあふれた1500ページ超の大著を書き上げた。

「こんなに面白く、一生懸命に生きた学者がいたことを知ってほしい」小室ファンになったのは学者を目指した気持ちが萎えたことがきっかけだった。

東大入学後、理論的な空手の流派に魅せられて鍛錬を重ねた。

政治学者を志し、空手の理論を手本に学問の体系化を目指す、流派の関連研究会にも参加。

だがある時、組織の雰囲気についていけなくなった。進学した大学院も辞め、死ぬしかないと思い詰めた。「信じるに足る学者を見つけてから死のう」。

社会科学系の本を読みあさり、小室の『田中角栄の呪い』に出会った。

漫画のように分かりやすいのに、論理性が極めて高い。

「他のどの本も理論的な背景があり、数学の公式を使って社会を読み解くような面白さがある」。

そこで、司法勉強の傍ら小室の文献を集め、ウェブで情報を公開。

ただ、「会うのは学びを深めてから」と思っているうち、小室が死去してしまった。

依頼を受けて取材を始めたが、実像が少しずつ明らかになる過程が面白くて仕方なかった。

弁護士業務の傍ら、聞き込みなども重ね、4年間で100人以上に取材。

意図せず情報が寄せられるような、不思議な偶然が何度もあった。

そうして学問や生活、恋など、魅力あふれる人間性を立体的に描き、著者をして「知らなかったことばかり」と言わしめる評伝ができあがった。

執筆を通じ、純真な人間性だけでなく、学問の全体像も何となく見えてきたという。「先生のように考えるための、私自身の小室直樹研究が再び始まった」

(ミネルヴァ書房、各2400円) 


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