今日の産経新聞は読むべき記事が多かった。
以下は高山正之の後輩に相応しく古代には日本を守った防人を指揮した一族の名字を持つ阿比留瑠偉の連載コラムからである。
メディアはいつも二重基準
本紙4日付朝刊に掲載された福田康夫元首相のインタビュー記事は、中国の南京大虐殺記念館を先月訪問した福田氏の歴史観や外交姿勢を、よく伝えていた。
福田氏は言う。
「向こう(中国)が30万人の被害者が出たというのであれば、そこは受け入れてですね…」
韓国や北朝鮮が、朝鮮半島から女性20万人が日本軍や警察に強制連行され、慰安婦にされたと言い立てれば、それを事実であるかのように受け入れた過去の日本政府や左派系メディアとそっくりである。
なぜ、あり得ない虚言や極端な誇張をそのまま認めないといけないのか―。
理解に苦しむが、ともあれそういう思想の福田氏だからこそ、メディアと親和性が高く、かばわれたのだろう。
そんなことを考えるうちに10年前、平成20年の福田政権当時に朝日新聞の世論調査記事を読んで感じた不可解さを、久しぶりに思い出したので紹介したい。
同社はこの年5月20日付朝刊1面の下の方に、2段見出しで「内閣支持19%」という記事を載せた。
扱いは小さく、危うく見逃しそうな記事だった。
実はこの19%(不支持率は65%)という支持率は、同社調査では過去最低を記録した前回4月調査の20%を下回り、最低記録を更新するものだった。
ところが、記事は過去最低となったとは直接書かずに、「(前回調査に)続いて低い水準だった」というあいまいな書き方をしていた。
初めて10%台に落ちたことへの言及もなかった。
解説を含め関連記事も見あたらなかった。
この頃、同社の調査による福田内閣の支持率は約2ヵ月の間に31%↓25%↓20%↓19%と続落していたにもかかわらず、記事はあくまで淡々としていた。
まるで、たいした問題ではないと言わんばかりである。
一方、今年3月の同社調査で、安倍晋三内閣の支持率が31%となったときはどうだったか。
1面トップに4段見出しで「安倍内閣支持最低31%」「第2次政権以降 不支持は48%」、3段見出しで「改ざん『首相に責任』82%」と大々的に報じていた。
安倍政権は青息吐息で今にも力尽きそうな印象を受けるが、福田政権時の報じ方と比べると違和感を禁じ得ない。
世論調査結果をどう取り上げるかはもちろん自由だが、首相が誰であるかによってメディアの姿勢はこれほど変わる。
二重基準は付きものである。
記事の扱いだけではない。
調査の際の質問の仕方や順番、「モリカケ問題で追及を受けている政権」うんぬんの前置きのあるなしで調査結果自体も変動することだろう。
本紙も含めメディアは今、世論調査を恣意的に用い、世論を誘導しようとしているとの疑いを持たれている。
メディアは文部科学省の違法な天下り斡鋩問題では、「元締」を務めていた前川喜平前文科事務次官をたたいたが、前川氏が安倍政権批判を始めると一転、前川氏を正義のヒーローだと持ち上げた。
現在、大学に便宜を図る見返りに、自分の息子を合格させてもらった、文科省科学技術・学術政策局長だった佐野太容疑者の問題が騒がれている。
野党もメディアも問題は深刻だと息巻いているが、一つはっきりと予想できることがある。
もし佐野容疑者が「安倍政権に行政がゆがめられた」と言い出したら、野党もメディアも途端に佐野容疑者に同情的になり、擁護し始めることだろう。
(論猊委員兼政治部編集委員)