以下は前章の続きである。
―となると、習近平政権の「中国の復興」には「屈辱の世紀」の雪辱があり、その標的が日本だというわけですね。ずいぶんと屈折した根の深い「反日」戦略となりますが。
「そうなりますね。1900年に起きた義和団事件も、じつは現在の中国共産党指導部での日本への敵意の原因とされます。周知のように義和団という排外的な秘密組織が北京などの外国公館を襲い、清朝までがそれを支援したこの事件は、米欧諸国と日本の合計八カ国の連合軍が中国側を制圧したのですが、日本軍が最大の役割を果たしました。中国共産党はこの義和団事件から、さらに1931年の満洲事変、そして全面的な日中戦争という日本との闘争の歴史をいまの中国の国民の反日感情をあおり、結果として中国共産党へ支持を確保するための手段として使うのです。この歴史を原因とする日本への恨みという心情はきわめて強く、いまの尖閣諸島への中国の軍事がらみ攻勢にも表れているといえます」
―日本側としては中国のネガティブな態度に対して現在の中国への政策や言動だけでその緩和を求めても難しいということになりますね。
「ええ、ただし中国がそうした歴史を理由に、特定の国にネガティブな態度をとるというのは日本だけに限りません。アメリカに対しても朝鮮戦争で戦った歴史、台湾を長年、同盟相手としてきた歴史、ベトナム戦争でも事実上の敵同士となった歴史などを理由として敵対的な態度をとるという面があります。日本もアメリカもともに、歴史的な屈辱や恨みを晴らすことを自己の統治の正当性として使うという中国共産党政権に直面しているといえます」
この稿続く。