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戦闘機 新興国が「上客」 米欧、産業維持へ売り込み…日経新聞9月2日9面より

2011年09月02日 11時41分02秒 | 日記
経済成長が続く新興国で新型戦闘機を100機以上と大量に導入する計画が相次ぎ、財政難から自国向け販売が伸びない米欧メーカーが契約獲得へしのぎを削っている。開発・製造を継続しないと戦闘機に関わる技術力を維持できないため、先進国は自国の防衛産業の基盤を維持する目的で新興国向けの輸出を奨励。大型商談の成約が続けば、世界の軍事バランスにも変化を及ぼしそうだ。

軍事バランス変化の懸念も

「初めての実戦参加」--。6月下旬に開かれた世界最大級の航空機見本市「パリ航空ショー」などで、世界の防衛大手は似た宣伝文句を使っている。国連安全保障理事会の決議に基づいて3月に始まった対リビア軍事作戦では初めて実戦を経験する戦闘機が相次いだ。

対リビアに投人 

英軍は、英BAEシステムズなど英独伊スペイン4社が共同開発したユーロファイター(輸出仕様の名称はタイフーン)を警戒監視飛行で使用。

米軍は空母艦載機である米ボーイング製のFA18Gグラウラーを対地攻撃に投入した。米国は今回の作戦で空母を出動させなかったが、なぜか艦載機だけを派遣する奇妙な形をとった。多国籍軍に空軍を派遣した例がほとんどないスウェーデンが突如として、自国の防衛大手サーブ製のJAS39グリペンを作戦に参加させたのも目を引いた。

各国が自国製戦闘機の実戦への初参加にこだわったのには理由がある。ブラジルやインドなど新興国が相次いで空軍の主力戦闘機を100機以上更新する計画を持ち、欧米各国の戦闘機はその候補となっている。世界の武器商戦では、「コンバット・プルーブン(実戦で使えた)」という事実が極めて有効なセールスポイントとなるのだ。

先進国は財政難 

かつては新型戦闘機の主な買い手は資金力のある先進国だったが、近年の財政悪化に伴う防衛費圧縮で戦闘機の調達を削減・中止する国が続出。欧米メーカーにとっては新興国の大型案件はぜひとも受注したいところだ。米欧の政府も自国の防衛産業の基盤を維持するため輸出を奨励し、サルコジ仏大統領やメルケル独首相が新興国との首脳会談でトップセールスした例もある。

フランスは仏タッソー製戦闘機のミラージュを購入したカタール空軍がリビア作戦で初の実戦を経験した際、不慣れなカタール部隊を支援するため、警戒飛行任務を仏空軍が共同で行う「付き添い役」を買って出た。顧客への「アフターサービス」の手厚さを強調したのも、ブラジルやインドなどの戦闘機商戦を意識した動きだ。

米ロッキード・マーチンを中心に国際共同開発されたF35を100機導入するとしていたトルコはこのほど、対米依存を減らす狙いで欧州製戦闘機も導入する可能性を示唆。新たな潜在顧客の出現に欧州メーカーは色めきたった。

買い手側の新興国は、価格だけでなく、最新の航空戦ノウハウの習得、相手国との外交・経済面での関係強化など、様々な要素を計算に入れて機種を選定する。

インドがこのほど次期戦闘機の候補から米国製を外し、欧州の2機種に絞ったのは「米国が技術移転に慎重なのに対し、ユーロファイターが『ブラックボックス・フリー(非開示の武器技術一切なし)』を売り物にしている点などが評価された」 (防衛産業関係者)ためだ。

相次ぐ新型戦闘機の大型商談は、新興国が経済面だけでなく軍事面でも明確に台頭してきたことを示す。インドの新型機導入は隣国の中国を刺激しそうで、財政に余裕のある新興国で軍拡競争が加速する恐れもある。

一方で、中国はこのほどパキスタンに戦闘機を追加輸出することを発表。ロシアはインドと次世代戦闘機の共同開発を予定しており、一定以上の航空機技術を持つ新興国は売り手としても台頭しつつある。

(編集委員 高坂哲郎)
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