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泊原発の地震対策について具体的に議論し、安全な再稼働を検討すべき時期に来ていると思う。

2018年09月21日 13時43分32秒 | 日記

読書家の友人が今朝の産経新聞のIRONNA発を読みましたか、先日来、私が言及している事に呼応している論文が掲載されているよと言って来た。

ブラックアウト、「たかが電気」 原発タブーの暗い現実、と題した上念司氏の論文である。

見出し以外の文中強調は私。

今回のブラックアウトは、北海道全体の電力需要の約半分を占めていた苫東厚真火力発電所が地震によって停止したため、発生した。

技術的な問題は専門家に譲るとして、私は停電によって失われる経済的な付加価値を考えてみたい。

まず、電力中央研究所の次のような試算を見てほしい。 

「産業連関表(2005年、ただし全国版4)によると、生産活動に中間投入される電力(の金額)は、GDPの2・3%程度であり、その逆数をとると約44である。短期的には電力は代えが効かないとみると、経済活動は、電カコスト1の投入を前提に、その44倍の付加価値を生み出しているという言い方ができる」(「需給対策コストカーブの概観」電力中央研究所・社会経済研究所 今中健雄)

1日「791億円」

では、この44倍という数値を今回の北海道電力管内で起きたブラックアウトに当てはめてみる。

被害を受けた北海道電力の発電コストは部門別収支計算書(平成29年4月1日~30年3月31日)に書いてある。 

これによれば、電気事業費用の総計は6564億円だ。

これを365日で割ると、1日当たりの発電コストが17.9億円になることがわかる。

これを44倍した791億円が1日の電力コストを消費して得られる経済的な付加価値だ。

今回のケースではブラックアウトは約2日間だったので、その分の経済的付加価値の損失は1582億円と試算される。

ここまでがすでに失われた経済的付加価値だ。

しかし、損失はこれにとどまらない。

今後も続く電力不足による経済的な悪影響についても見積もる必要がある。

ちなみに東日本大震災の計画停電に伴う経済的な損失については以下のような試算があった。 

「三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフエコノミストの佐 治信行氏が一定の前提を置いたうえで試算したところによると、1 都8県(東京都、茨城、栃木、群 馬、埼玉、干葉、神奈川、山梨、 静岡の一部)の対象地区が3時間の停電を4月末まで続けた場合、 5.4兆円、1年間のGDPの1.04%が失われる」(ロイター通信)  

ざっくり県内生産額で比較すると今回の被災地は東日本大震災の 被災地の10分の1程度になる。

これを単純に当てはめると、仮に東日本大震災の時と同程度の期間計画停電が行われていたとするなら、損失は年間で5千億円程度になっただろう。 

今回、計画停電が実施されなかったのは不幸中の幸いだった。

しかし、政府の呼びかけによって行われた20%の節電によって失われる経済的な付加価値は1週間当たり1107億円だ。

果たしてこれだけで済むかどうか、予断を許さない。 

患者に多大な迷惑 

ここまで試算した停電に伴う損失を合算すると累計損失額は最低でも2700億円にもなる。

これはあくまでも試算だが、停電に伴う経済的な損失はこれほど膨大な数字となるのだ。

「たかが電気」などと揶揄していたミユージシャンがいたそうだが、ぜひこの損失金額を見てよく考えてほしいものだ。

ちなみに、北海道電力が泊原発の再稼働に向けた安全対策の予算は約2千億~2500億円である。

この損失額に比べれば安いものではないだろうか。 

今回、全電源が停止したことによって、人工透析を受けている人、集中治療室(ICU)で処置中の人に多大な迷惑がかかっていたと聞く。

電源喪失は人の命に関わる問題であることを再認識すべきであり、原発をタブー視して議論を避けてばかりでは何も始まらない。

泊原発の地震対策について具体的に議論し、安全な再稼働を検討すべき時期に来ていると思う。


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