文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

マッカーサーの戦略の正当性を補強するのが徂いだったが、マッカーサーの回答は予想外だった

2015年12月26日 09時00分47秒 | 日記

以下は前章の続きである。日本国民の多くと、世界にとっては全く初耳の事実のはずだ。

共和党の策謀 

米上院軍事・外交合同委員会はマッカーサーを聴聞会に召喚した。

テーマは 「極東の軍事情勢とマッカーサーの解任」背景にはトルーマン政権に打撃を与えようという共和党の策謀がめった。 

マッカーサーは快諾した。

大統領選の指名争いに有利だと考えたからだ。

狙い通り、世界中のメディアが聴聞会の動向に注目し、事前から大々的に報じた。 

5月3日の聴聞会初日。証言台に立ったマッカーサ-は質問に誠実に応じ、1950年6月に勃発した朝鮮戦争の経緯をよどみなく説明し続けた。 

質問者の共和党上院議員、バーク・ヒッケンルーパーは「赤化中国を海と空から封鎖するという元帥の提案は米国が太平洋で日本を相手に勝利を収めた際の戦略と同じではないか」とただした。 

マッカーサーの戦略の正当性を補強するのが徂いだったが、マッカーサーの回答は予想外だった。  

「日本は4つの小さい島々に8千万人近い人口を抱えていたことを理解しなければならない」

「日本の労働力は潜在的に量と質の両面で最良だ。彼らは工場を建設し、労働力を得たが、原料を持っていなかった。綿がない、羊毛がない、石油の産出がない、スズがない、ゴムがない、他にもないものばかりだった。その全てがアジアの海域に存在していた」  

「もし原料供給を断ち切られたら1000万~1200万の失業者が日本で発生するだろう。それを彼らは恐れた。従って日本を戦争に駆り立てた動機は、大部分が安全保障上の必要に迫られてのことだった」 

会場がどよめいた。

証言通りならば、日本は侵略ではなく、自衛のために戦争したことになる。

これは「侵略国家・日本を打ち負かした正義の戦争」という先の大戦の前提を根底から覆すどころか、東京裁判(極東国際軍事裁判)まで正当性を失ってしまう。 

もっと言えば、5年8ヵ月にわたり日本を占領統治し「民主化」と「非軍事化」を成し遂げたというマッカーサーの業績までも否定しかねない。 

この発言は共和党の期待を裏切り、激しい怒りを買った。

マッカーサー人気はこの後急速にしぼみ、大統領の夢は潰えた。    

この稿続く。


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