文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

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「不明なことが多すぎる。なぜ突然慰安婦問題が浮上したのかを取材してほしい」という依頼だった。

2016年06月28日 20時33分07秒 | 日記

詳しくは、元慰安婦や日韓の運動団体、メディアが求めていた補償問題とともに本増刊号再録の「慰安婦と挺身隊と」(P128)に譲る。

戦時を知る世代の怒り 

『文藝春秋』編集部から韓国取材の相談があったのは、「慰安婦と挺身隊と」の執筆途中だった。

同編集部は、植村記者が、日本政府に謝罪と補償を求める裁判を起こした団体(太平洋戦争犠牲者遺族会)の幹部の娘と結婚していることを掴んでいた。

植村記者は裁判を起こした当事者団体の幹部の親族という利害関係者でありながら、裁判を後押しするような記事を書いたことになる。

メディアの倫理として問題だ。

私の許にも、金学順さんらが起こした戦後補償裁判自体、大分県の主婦が韓国でチラシを配って原告を集めて始まったという情報が入っていた。

「不明なことが多すぎる。なぜ突然慰安婦問題が浮上したのかを取材してほしい」という依頼だった。

だが、先述したように、日本も韓国も「日本政府は慰安婦に謝罪せよ」という空気一色だった。

そんな中で、元慰安婦サイドを批判するのには覚悟も必要だった。

『文藝春秋』の編集長が「西岡さんと私か世間から極悪な人と呼ばれる覚悟で真実を追究しましょう」と言ったほどである。

一方、この頃、私か編集長だった『現代コリア』という朝鮮問題専門誌の編集部には、「韓国は嘘つきだ」「韓国は嫌いだ」という投書やメッセージが続々と寄せられていた。

いまの「嫌韓」の走りだともいえるが、それらを送ってきたのは日本の年長者、つまり戦争当時を知る世代の人たちだった。

彼らは「女子挺身隊と慰安婦は別だ。それなのに、『挺身隊の名前で強制連行された』と言っている。嘘つきではないか」と身が震えるほど怒っていた。 

『現代コリア』だけではない。この特別増刊号を企画し、90年代に掲載された慰安婦問題関連の論文を洗い出した『正論』編集部に、その一部を見せてもらった。

元日本軍人、慰安婦たちの性病検査をした軍医の家族ら、『正論』のような論壇誌に文章を寄せる専門家ではない人たちの論文が多数あった。

今回はその中の僅かしか再録できないとのことだったが、戦前戦中の実情を知っている人たちが、朝日新聞が宣伝する吉田清治的な「慰安婦強制連行」は事実無根であり、戦後生まれの人たちは騙されているのだーと強い違和感を持って、慣れない原稿を書いて編集部に持ち込んできていたことが分かる。

『正論』は、そういう人たちの駆け込み寺になっていたのだ。 話を92年当時に戻す。

慰安婦に同情的な空気が充満する一方で、戦争当時の実情を知る世代の人たちが怒りを募らせているのをみて、私は、このままでは日韓関係は悪化する、とくに日本人の対韓感情は決定的に悪化するだろうと心配になった。

この稿続く。


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