文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

パットン将軍が疑ったように、病を装う者もいたではあろうが、相当数が本物の疾患に悩まされたのである。

2018年09月12日 13時39分30秒 | 日記

以下は前章の続きである。 

見出し以外の文中強調は私。       

戦う理由 

先の大戦では、アメリカ国民はヨーロッパの戦争に関わりたくなかった。

参戦を目論むフランクリン・デラノ・ルーズベルト大統領(FDR)は1941年8月にチャーチル英首相とカナダ・ニューフアンドランド島沖で密談し「崇高なる」大西洋憲章を発表した。

国民の反独感情を煽る狙いがあったが、世論は非干渉の立場を変えなかった。

第一次大戦ではウッドロー・ウィルソン大統領に騙されたと感じている国民がほとんどであった。

その世論をひっくり返したのは真珠湾奇襲であった。

憤る国民に、「ドイツ人や日本人は獣である」とするメディアを使った洗脳が始まった。

「敵兵は獣」キャンペーンは「敵の間化」という古典的な洗脳手法だった。 

開戦直後は米国民の多くが枢軸国への憎しみに燃えた。志願兵も殺到した。しかしその熱情は暫くすると冷めていった。

アメリカ参戦の翌年(1942年)の調査では、兵士の三人に一人が戦う(命を懸ける)理由がわからないと答えている(*2)。

ハリウッドは敵への憎しみを煽るプロパガンダ映画を数多く制作したが、戦意高揚には成功していなかった。

何のために戦っているのかわからない兵士は敵を憎めない。

戦うことに疑いをもてば、その感情が精神疾患を誘発する。

パットン将軍が疑ったように、病を装う者もいたではあろうが、相当数が本物の疾患に悩まされたのである。

調査の実施された年の8月、ガダルカナル島で激戦があった。

日本の守備隊は2万以上が死んだ。

アメリカ軍兵士もおよそ7000が死んでいる。

熱帯雨林のなかで洞窟に潜みながら激しく抵抗する日本軍を前にして、米軍兵士の多くが精神のバランスを崩した。

5人に2人の割合で米国本土に戻さなくてはならないほどに深刻であった(*3)。 

こうした事実は記録映画にもハリウッド映画にも出てこない。

トランプ大統領が敬愛するパットン将軍でさえも、一兵卒に戦う理由を納得させるのは至難の業であった。

プロパガンダがバレやすい現代においては、世界中の軍隊が「戦う動機付け」に悩んでいるに違いない。

母国が侵略されるという事態がない限り命を捨てる覚悟をさせるのは難しい。

形而上的理念で大衆が動くことはほとんどないからである。


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