以下は前章の続きである。
マンモスと同じ道をたどる
―朝日側は、「女性国際戦犯法廷」に対する朝日のスタンスや、本田記者と運動家の関係を指摘されると、記事は「NHKと政治家の距離」を問題にしただけであって云々、という話に逃げてしまいます。
安倍 そうやって、朝日は問題をすり替えているのです。
その法廷自体がどんな問題をはらんでいたか、その法廷、主催者と記者との関係は適正だったのかなどは委員会の報告でも一言も触れていません。
私がこのような主張をすると、今度は私の方が「問題をすり替えている」と批判されますが、NHKが報道しようとしていた番組内容に一切触れずに、今回の議論ができるのでしょうか。
-むしろ、「朝日新聞と運動家の距離」こそ問題ではないかと。
安倍 それこそ今回に限らず永続的なテーマになるのではないかと思います。
つまり、憧れの先輩が立ち上げ、長年取材し続けた「女性国際戦犯法廷」に対して客観視などできるはずもない本田記者が「思いこみ」という次元ではなく、法廷の関係者と「共同謀議」を行ったのではないかとすら疑いたくなります。
こんな類の運動家と記者の「共同謀議」によるおかしな記事は探せば他にも出てくるんじゃないですか。
―1月の報道時点では、朝日同様、安倍さんの側を批判しがちだった毎日新聞でさえ、社説(10月1日付)で、「今、国民が知りたいのは有識者の評価などではない。かねて疑問が寄せられてきた『取材記者はNHKと政治の関係より、本当は安倍氏らの歴史認識を批判したかったのではないか』といった取材意図も含めた事実だ」と指摘しています。
安倍 その通りで、朝日は、あの記事が親北朝鮮的な左翼運動の一環であったかなかったかということもきちんと検証しておくべきでしょう。
一面左トップに大きく掲載されたということは、朝日新聞自体も本田記者の論調をバックアップして、それに乗ってしまったと見られても仕方ない。
だから、あとになって「詰めの甘さ」が判明しても、訂正・謝罪できないのでしょう。
私のように与党の政治家でも、大新聞と闘う、事を構えるというのは大変なプレッシャーです。
家族も大変でした。
これは一新聞社を相手にするだけでなく、朝日新聞が発行する週刊誌、月刊誌、そして、テレビ朝日を敵に回すことで、さらにメデイアには筑紫哲也氏をはじめ多数の朝日新聞出身者がいるのです。
その周辺には「朝日シンパ」のコメンテーターたちがたくさんいます。だから、いくら朝日が間違ったことを言ったとしても、多くの政治家がたじろぎ、擦り寄ることに終始してしまう。
そんな環境ですから、朝日は少々強引な取材や報道をしても、「政治家は細かいことを言わずに自分たちに擦り寄って当然だ」と極めて傲慢な姿勢になっていく悪循環があったのかな、と思います。
しかし、朝日新聞の今回の杜撰な委員会の報告や開き直りとも言うべき秋山社長以下幹部の態度には、読売、産経はもちろん、日経、毎日からも、社説において極めて厳しい批判がなされました。
朝日がしっかりとこの問題に決着を付けなければ、「報道機関全体に対する国民の信頼が揺らいでしまう」という危機感があったのでしょう。
読売は「『これで決着』と言うのであれば、報道機関として無責任な対応ではないか」「責任あるメディアとしての『けじめ』が必要なのではないか」と咎めた。
日経も「真実を伝える作業に支障をきたす結果になりかねない。影響は朝日新聞にとどまらない」と危惧した。
そして、毎日は「事実解明なしで新聞社ですか」とまで書いた。
それでも朝日は口をつぐみ続けるのでしょうか。
だとしたら「言論の自殺」に手を貸すことになる。
新聞報道によれば、朝日は既に、今年1月に比べて20数万部も部数を減らしています。
これは長年の読者が、宿痾のごとくこびりついた朝日の捏造体質に辟易している結果でしょう。
朝日新聞は、真剣に反省をしなければ、報道機関として、もう二度と立ち直ることもできないと思います。
このままでは、かつてのマンモスと同じ道をたどるかもしれません。
この稿続く。