以下は前章の続きである。
1999年から2008年までの国会会議録を機械学習して得られた判定システムに、各議員がどの政党に所属するか、自民党、公明党、民主党(当時)、社民党、共産党の5択で判定させたところ、最も正解率が高いのは共産党(93%)、逆に最も正解率が低いのは民主党(65%)であった。
つまり、共産党は議員の意見が最も画一的なので、人工知能も「共産党」と判別し易かったのに対し、民主党は議員の意見が最も多様で共通点が見出しにくいため、正答率も下がったと解釈できる。
共産党に所属する議員の意見が画一的であるということは、同党が最も集団思考の傾向が強いとも言える。
逆に民主党の所属議員の意見が多様ということは、分裂しやすい党であるとも言えるが、その予測は民進党分裂で見事的中した。
自民党は民主党の次に低い正解率7割であった。
この客観的データに基づけば、自民党が集団思考であるという批判は正しくない。
この研究結果をベースとして、同システムによって、世の中の言説の政治的バイアスを測定できるのではないかと考えた。
各種言説がどの政党の議員の発言と類似度が高いかを数値的に出せるからである。
最初に行ったのが新聞の社説への応用である。
朝日新聞、毎日新聞、日本経済新聞、読売新聞、産経新聞の5社を対象にしたところ、朝日新聞が当時の野党三党(民主党、衽民党、共産党)と最も類似度が高く、逆に産経新聞が最も低いという、一般的な認識に沿った順当な結果が出たものの、いずれの5紙も野党との類似度が与党のそれを上回った。
新聞社説は基本的には何かに批判的なスタンスで書かれることが多いため、こうした結果が得られたと考えられる。
この稿続く。