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初の中国人ICPO総裁の突然の拘束事件は、ある種のピカレスク小説だ

2018年11月05日 23時00分40秒 | 日記

以下は月刊誌HANADAに有数の中国通である福島香織が現代中国残酷物語と題して連載している連載コラムからである。

福島香織は大阪大学卒業である。大阪大学の現役の学生諸君とOBの人たちは、彼女が同窓生である事を大いに誇りに思わなければならない。

初の中国人ICPO総裁の突然の拘束事件は、ある種のピカレスク小説だ

周永康が流した害毒

初の中国人ICPO総裁で現役の公安副部長(次官)であった孟宏偉(64)が九月二十五日以降、北京空港で忽然と消息を絶った。

その若き妻は夫から「電話を待て」というSNSのメッセージとナイフの絵文字を受け取ったので、夫の身に危険が迫っているというサインではないか、と思ったという。

そこで地元警察に相談、フランスの警察当局とICPOが中国当局に孟宏偉の消息を問い爬わせたが、すぐには返答がなかった。

一方で、一部香港紙は孟宏偉が汚職容疑で中国当局によって取調べを受けていると報じた。

十月七日、孟の妻がリヨンでAPら欧米メディア相手に「真相と正義を追求してほしい」と訴えると、その直後に中国側は孟を違法行為で取調べ中と発表、正式に副部長職も解任された。

同時に、ICPOは中国当局が出した孟宏偉の総裁職の辞表を、文句も言わずに受理したのだった。

翌日の八日、臨宏偉の捕まった理由が収賄容疑であり、周永康が流した害毒を排除することだ、と中国公安部は発表している。

孟宏偉は二〇一二年暮れに失脚し、二〇一五年に汚職で無期懲役判決を受けた周永康の残党として摘発されたということだ。

周永康失脚は汚職そのものより、習近平を権力の座から引きずり降ろそうと画策したクーデター未遂の疑いのほうが大きな理由だろう。 

習近平はその後も、公安内部の周永康残党の存配に冲経をとがらせている。

幹部人事を自分の子飼いの部下にいくら挿げ替えても、なかなか安心できないでいた。

孟宏偉は、周永康が公安部長時代に次官に取り立てられ、ICPO中国センター長に任じられるなど、周永康の下で出世したという意味で周の腹心である。

だが、周永康失脚の際には連座せずに、むしろ出世した。

この理由はいろいろ考えられるが、この時点で孟は習近平に対して忠誠を誓い、周永康の取り調べに協力する形での情報提供もしていたのではないか、とみられる。

孟宏偉は有能な公安官僚であり、二〇〇四年以来、ICPOでの仕事ぶりも評価されていた。

彼の仕事の範囲は広く、アンチテロ、新彊地域のコントロール、麻薬密輸入や海洋警察局、国際協力分野で実績をあげている。

また、政治家・官僚の暗殺といった汚れ仕事にも従事した、という噂もある。

一九八九年にチベット自治区ラサでパンチェンラマ十世が不審死した件や、台湾の陳水庸暗殺未遂事件とのかかわりを疑う人もいる。 習近平は、当初はその能力を買っていたらしい。

たしかにICPO総裁という重要ポストに送り込む中国人としては、彼以外の人材はなかなか見つからない。

この稿続く。

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