以下は前章の続きである。
問題は違法かどうか
第一、柳瀬氏は去年から愛媛県、今治市の職員と会った記憶はないと繰り返し発言している。
私の取材の範囲でも、「都合が悪いことだから記憶にないことにしておこう」という話ではなく、県や市の役人に関しては、本当に記憶にないのだと思う。
去年、稲田朋美前防衛大臣は、森友学園の元理事長・籠池泰典氏の弁護を引き受けたことを、本当に記憶になかったために「ない」と断言してひどい目にあった。
先方に面談記録があろうと、記憶がないものは記憶にないと答えるほかはない。
そもそも記憶を問う意味がない。
問題は、あくまで行政決定のプロセスに違法性があるかどうかだけだ。
常識で考えてみよう。
地方役場の課長の陳情である。
任期中に柳瀬氏が様々な事案で一回限りの面会をした件数はほとんど無数―多分数千件―に上るだろう。
柳瀬氏がこの件を記憶していると仮定するのはおかしい。
詳細かつ具体的に尋ねれば、記憶の糸から何か出てくるかもしれない。
記憶にないが面談記録が先方から出てきた以上、会っていたわけだからである。
が、だからどうしたという話である。
会っていたら不祥事で、記憶になかったら不祥事なのか。
安倍氏と加計氏が友人としてクローズアップされるが、これまた安倍氏の親しい友人も数十人ではきくまい。
その誰とどの程度の交友があるかなど、議員秘書ならともかく、官庁から出向の秘書はつぶさには知らないだろう。
安倍総理が時折会食するレベルの相手になれば、一千人ではきくまい。
その多くは職務権限ある要職や大企業、ベンチャーの大物だ。
何らかの利権に関係している。
そのなかで加計氏がどんな立ち位置にいるか―客観的に見れば年数回会うほど親しく、しかし少なくとも獣医学部に関しては安倍政権も含め、十数回却下され続けていた人物だ。
親しいから利権を前に進めたというストーリーが成立するには、それまでの「却下」歴が長すぎる。
しかも獣医学部は医学部と違い、美味しい話ではない。
だから多くの経営者や既存の大学が話に乗ってこなかった。
加計氏は損を承知で、四国に世界的な獣医学部の新設をという夢に手を貸したのではなかったのか。
加計氏と比較にならぬ巨大な利権の認可があった人物が、総理の会食相手やゴルフ相手に何十人いるかわかるまい。
この稿続く。