以下は月刊誌Voice今月号(780円)の大特集記事、消費増税は再延期せよ「日本のデフレ脱却は目の前に見えている」。
日銀で戦いつづけたリフレ派経済学者が語るアベノミクスの到達点と題して掲載された岩田規久男(日銀前副総裁)への特別インタビュー記事からである。
見出し以外の文中強調は私。
最も弱い人びとを直撃する
―岩田先生ご在職時(2013年3月~18年3月)の日銀による量的・質的金融緩和は、失業率と自殺者数を大きく減らし、わが国を救いました。
国民の一人として、御礼申し上げます。
岩田 ありがとうございます。
そういってくれる雑誌や新聞は少ないのでね(笑)。
まず、この場を借りて『日本経済新聞』(2018年3月28日付朝刊)の私へのインタビュー記事を訂正しておきます。
この記事は「緩和推進『単純すぎた』物価2%目標実現できず」と曲解した見出しを付けていますが、明らかに話者の意図に反しています。
私が申し上げたのは、せっかく日銀の金融政策がつくったリフレのレジーム(枠組み)を2014年4月、消費税率8%への引き上げが壊してしまい、予想インフレ率の引き上げが困難になったということ。
そこで、次善の策としてイールドカーブ(長期・短期金利の債券利回りを繋ぎ合わせた曲線)をコントロールし、予想インフレ率が上がらないなかで需給ギャップを縮め、足元の物価を上げる金融政策を行なった、ということです。
もともとリフレ・レジーム自体には予想インフレ率を上げる力があります。
それを毀損したのは、何回でもいいますが、消費税率の引き上げです。
2014年の5%から8%への引き上げは、1997年の3%から5%への引き上げよりもダメージが大きい。
なぜなら日本ではデフレが20年も続いた結果、非正規雇用者・低所得者層が増えるとともに、年金世帯が全世帯の3割を超えるまで増加したからです。
2014年の引き上げは、消費税の増税に最も弱い人びとの家計を直撃してしまった。
この悪影響が現在も尾を引いているわけです。
最近も財務省出身の学者が「消費税増税の消費に対する負の影響はなくなってきている」というので調べてみたら、2018年1一3月期の実質国内総生産は、量的・質的金融緩和政策を始める直前の2013年1-3月期よりも5.9%増えているのに、この期間、家計消費はたったの0.6%しか増えていない。
こういう嘘を平気でいうのですから驚きです。
この稿続く。