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大学など日本の研究機関に所属している研究者の研究を助成するための資金であり、元をさかのぼれば国民の税金だ

2018年06月19日 16時10分03秒 | 日記

今、日本で最もノーベル物理学賞か化学賞かに近い位置にいる学者に対する科研費がゼロになったという記事を読んで、即座に思い出したのが、月刊誌正論7月号に「あの反戦学者の研究費に、いくら公金がつぎ込まれてる?科研費ランキング」と題して掲載されていた

砂畑涼氏の労作である。

見出し以外の文中強調は私。

使い道を追及してなぜ悪い 

科研費といっても、多くの日本国民はピンとこないと思う。

普通に生活している日本国民の多くには縁のない存在だからだ。

正式名称は「科学研究費」。

大学など日本の研究機関に所属している研究者の研究を助成するための資金であり、元をさかのぼれば国民の税金だ。

最先端の研究にはある程度お金がかかるのは当然だから、このような資金が存在することに別に問題はない。

現在、多くの国民に馴染みの薄いはずの科研費に注目が集まっている。

きっかけは、自民党の杉田水脈衆院議員が、この科研費の使い道について追及を始めたことだ。

研究者の研究を助成するための科研費の交付が恣意的ではないかというのが杉田議員の問題意識だった。

確かに、研究のための科研費が恣意的に運用されているとすれば、それは国民の血税が恣意的に運用されていることになるため大問題だ。杉田議員が追及したのは、国会議員としての当然の、仕事のように思われた。 

しかし、学者や研究者の中には血相を変えて、杉田議員の追及を不当な弾圧であるかのように語り始めた人もいた。 

精神科医の香山リカ氏はツイッターで呟いた。 

《杉田水脈氏が科学研究費について追及し始めて以来、ある若手は「これから採択の対象が絞られいまの研究が継続できなくなるかも」と心配してました。なぜか。杉田氏は衆院議員で権力を持っているからです。いたずらに研究者をおびえさせ研究を滞らせることは国益に反します。それを自覚してください。》 

全く意味のわからない呟きだった。

国民の税金の使い道を追及されて、研究者がおびえるというが、何か疚しい点でもあるのだろうか。

不思議だ。

疚しい点がないのならば、堂々としていればいいだけだ。

また、国会議員は確かに権力を持つが、税金の使い道を調べることは権力の濫用とはいえない。

むしろ、国民の血税が適切に使用されているかをチェックしなければ職務怠慢と批判されて然るべきだ。

政治学者の中島岳志氏も次のように呟いていた。 

《特定の大学教員に対する科研費バッシング問題。いよいよ1930年代に猛威を振るった蓑田胸喜・三井甲之の原理日本グループの登場を予感させられる。初動の対応を間違えてはならない。》 

「原理日本グループ」とは、戦前の過激な右翼集団で、学問の自由を弾圧したとされる人々のことだ。

杉田議員らの行動が「学問の自由」を弾圧する行為だといいたいのだろう。

あまりに大げさな表現だ。

一体どのような人のどのような研究に血税が投入されているのかを調べることが、学問自由を弾圧することになるはずがない。 

もう一人、杉田議員に噛みついたのが政治学者の山口二郎氏だ。

デモの際、安倍総理に対して「お前は人間じゃない。叩き斬ってや

る」と叫んだことでお馴染みのセンセイは4月29日の東京新聞のコラムで次のように反論する。 

《このところ、政府が研究者に交付する科学研究費について、杉田水脈、櫻井よしこ両氏など、安倍政権を支える政治家や言論人が、「反日学者に科研費を与えるな」というキャンペーンを張っている。私は反日の頭目とされ、過去十数年、継続して科研費を受けて研究をしてきたので、批判の標的になっている。》《政権に批判的な学者の言論を威圧、抑圧することは学問の自由の否定である。天皇機関説を国体の冒涜と排撃した蓑田胸喜が今に生き返ったようである。こうした動きとは戦わなければならない。》 

繰り返しになるが、税金の使途を追及することが、どうして学問の自由を弾圧したり、否定したりすることになるのだろう。

意味が分からない。

政治家が政治資金の使い道を公開するのは当然とされているのに、何故、学者や研究者の税金の使い道は、追及してはいけないのだろうか。

ズサンな税金の使われ方 

彼らが頑なに使途を追及されることにおびえている科研費とはどのようなもので、どのように使われているのか、気になったので調査してみた。

なお、すべての学者の科研費を調査する時間はないので、「安全保障関連法に反対する学者の会」の呼びかけ人となっている学者の科研費を調査してみた。

「安全保障関連法に反対する学者の会」は、安倍政権の集団的自衛権の限定的な行使容認に反対する学者の会という意味で、この会は

よくもわるくも左派のオピニオン・リーダーたちの集まりになっている。 

調べてみると、誰の、どのような研究に対して科研費が交付されているのかは、インターネット上の科学研究費助成事業データベースで簡単に知ることが出来た。

155ページの表は、このサイトで、「安全保障関連法に反対する学者の会」の呼びかけ人について、過去十年間の交付額を集計し、額の大きい順に並べたものである。 

研究そのものの簡単な報告は同サイトで読むことも出来た。

しかし、肝心の何にいくら使われたのかはさっぱり分からなかった。たとえば、飛行機で東京から札幌まで行った旅費とか、新幹線であればグリーン車に乗っているのか、自由席に乗っているかとか、どんなホテルに泊まっているのかといった具体的なお金の使われ方がわからないのだ。

これを見る限りでは、政治家の政治資金収支報告書に比べて透明性が低い。 

だが、どうやら杜撰な使われ方をしているらしいことが日本学術振興会のサイトの中にある科研費FAQでぼんやりと浮かび上がってきた。 

「旅費の単価などのきまりはありますか?」という問いに対しての答えは次の通りだ。

《科研費では物品、旅費、謝金などを通じて、一定の単価や基準は定めておらず、各研究機関の基準に則って判断していただくことになっています。例えば、次のような事例についても、各研究機関の規程に従っていれば支出することも可能です。・旅費の算出の出発地を所属機関ではなく自宅所在地とすること ・日当、宿泊料を国の基準よりも高くすること ・ビジネスクラス、グリーン料金を支出すること) 舛添要一東京都知事が飛行機のファーストクラスにのり、高級ホテルに宿泊していることを強く非難され、辞任に追い込まれたことは記憶に新しい。

都民の血税で贅沢三昧してよいのかという庶民の怒りが都知事を辞任に追い込んだのだが、科研費も元をたどれば、同じ税金だ。

「日当」、「宿泊料」を釣り上げてみたり、「ビジネスクラス」、「グリーン料金」を血税でまかなうことが許されるのだろうか。 

多くの研究機関では「グリーン料金」等に科研費を支出出来ない規定になっているようだが、その実態は明らかではない。

この点について科研費を付与された研究者には説明責任があるのではないだろうか。

多くの国民が苦しい思いをしながら納税している。

生活に苦しんで自殺する人だっている。

こうした中、研究者だけは税金の使途について説明責任がないという理屈は通らないはずだ。

税金の使途を明らかに出来ない「学問の自由」など、茶番以外の何でもないのではないだろうか。

この問題については、市井の人間が調査しても明らかにできない以上、国会等を通じてこの問題が深く追及されるべき問題であることを強く強調しておきたい。


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