以下は前章の続きである。
-ロシアのプーチン大統領も、日本がいくら謙虚で友好的な姿勢を貫こうと、北方領土を返す気は微塵も見えませんね。
藤原 さらに大正時代のマルクス主義の浸透や、昭和におけるナチズムの浸透も、日本人の謙虚さや自信のなさが招いた悲劇でしょう。
ヒトラーは著書『わが闘争(Mein Kampf)』のなかで、日本に文化などというものはなく、ヨーロッパの科学技術を模倣・装飾したものにすぎない、として以下のように記しました。
「特に日本的な文化ではないのであって、それはヨーロッパやアメリカの、したがってアーリア民族の強力な科学・技術的労作なのである。これらの業績に基づいてのみ、東洋も一般的な人類の進歩についてゆくことができるのだ」(角川文庫・上巻)。
ヒトラーが日本を侮蔑したこれらの箇所は、戦前の『わが闘争』翻訳版から削除されました。
第二次世界大戦当時、日本とドイツは同盟国です。
にもかかわらず、同盟相手であるドイツのヒトラーの日本に対する侮蔑を割愛して見なかったことにしてしまった。
同盟を結んでから、ヒトラーは日本を褒めたたえました。
しかし、同盟国を欺くのは「世界の常識」です。
第二次世界大戦時のアメリカの同盟国イギリスもそう。
たとえば敵国ドイツの暗号「エニグマ」を数学者アラン・チューリングたちが解読したにもかかわらず、イギリスは解読の事実をアメリカに伝えませんでした。
それどころかイギリスは、戦後30年間近くも、占領したドイツから奪ったエニグマ暗号機を英連邦の国々に「解読不能の暗号」として使わせ、それらの暗号通信をこっそり読んでいたのです。
現在、日本の情報活動はアメリカ頼りです。
同盟国アメリカの暗号を盗み読むことが最も大切なのに、呑気なものです。
-また先の大戦に関して、ソ連のコミンテルン(共産主義インターナショナル)の工作が日本とアメリカの政権内に及んでいたことが今日、知られていますね。
藤原 幕末以来、日本の主敵はロシアでした。
スターリンは第二次世界大戦時、ドイツとの戦いに兵力を傾けたかったけれども、ソ連・満洲国境付近には日本軍がいた。
そこでソ迪は毛沢東を焚き付けて日本を中国との戦いに深入りさせ、ソ連に侵攻してこないようにしました。
問題はソ連の陰謀に気付かず、挑発に乗ってしまった日本の指導者の大局観のなさ。
北進政策を翻してラオス、ベトナム、カンボジアと南進した結果、アメリカの逆鱗に触れて日米戦争が始まりました。
スターリンを助けたい社会主義者ルーズベルト大統領は、日本と戦争になれば日独伊三国同盟によりドイツとも戦争になると考え、日本に最初の一発を撃たすことに全力を傾けたのです。
最後通牒となったハル・ノートをつくったのも、政権内に浸潤していたソ連のエージェントでした。
コミンテルンの世界的陰謀を、日本は視野に入れていませんでした。日本人の視野は、島国状態が長く続いたためか、狭小になりがちです。現在でも歴史学者などはコミンテルンの活動を無視したまま、大東亜戦争を考察しているようです。
さらに戦後、アメリカ占領軍による「戦前の日本は悪だった」という洗脳により、エリートだけではなく日本人一般に至るまで「誇り」を失ってしまった。
そこから「外来の文化はすべて日本より優れたもの」という恐ろしい錯誤が生まれ、小泉=竹中政権以来の新自由主義、グローバリズムによる構造改革、IT・英語教育礼賛論に至る流れができたのです。
この稿続く。