以下は月刊誌HANADA今月号に「中国は間違いなく政権崩壊する」と題して掲載された、E・ルトワック戦略国際問題研究所上級顧問、取材・構成奥山真司、の続きである。
習近平「最悪の決断」
まず軍事ロビーが、これまでアフリカの山奥でアブドゥラやモハメドという名前の、誰も気にしないようなテロリストたちを追う代わりに、中国を標的とし始めた。
そしてテクノロジーロビー、さらには外交ロビーがそこへ加わる。
陣容は整った。
いまから10年前の時点では、外交ロビーの7、8割は「パンダハガー」と呼ばれる「親中派」だった。
日本の外務省も、半分はパンダハガーだったろう。
彼らは「中国が経済成長すれば民主化し、対外政策も国際協調を追求し始める」、だから日本の方針としても、「中国に厳しいことは言わず、正しい方向へ向かうことを後押しすれば良い」と考えていた。
ところがいまや、それを信じている人は誰もいない。
中国では内政における締め付けが厳しくなっている。
典型的な動きは中央政治局常務委員会にも見られる。
かつては中央政治局常務委員は建前上、九人全員が平等だった。
各人が社会科学院の教授などのアドバイザーから自由に意見を聞けたわけだが、現在の習近平独裁の下の7人体制でこれができるのは、習と距離の近い理論派、王滬寧だけである。
外交面でも中国の行動は悪化しており、その典型例が南シナ海の事案である。
習近平は2015年に、アメリカのパンダハガーの代表である
スーザン・ライス大統領補佐官(国家安全保障担当)に対して「南シナ海の武装化はしない」と断言したが、これは最悪の決断であった。
アメリカ人は蹴られても悪口を言われても我慢できるところはするが、ウソをつかれたり約束を破られることについては許せないのだ。
最近、ワシントンD・Cを訪問した北京政府に近い中国人有識者が、出国間際の空港でFBI(米連邦捜査局)の捜査員に呼び止められ、面会者や日時を全て申告するよう求められた事例などは、米政府の中国に対する締め付けが始まっていることを物語っている。
さらに、ここに人権ロビーも加わる。
実際のところ、彼らの対外政策における影響力はほとんどないのだが、軍事やテクノロジーロビーが騒ぐような事件が毎日起きなかったとしても、中国では新彊ウイグル自治区やチベット、弁護士の拘束など、人権問題は連日続いている。
これらのことを彼らは問題視している。
この稿続く。