東京里山農業日誌

東京郊外で仕事のかたわら稲作畑作などをしていましたが、2012年4月に故郷の山口県に拠点を移して同活動をしています。

古い松下製トランジスタラジオ AT-110の修理(2/6)

2016年01月06日 | 古ラジオ修理工房

 この古い松下製トランジスタラジオ AT-110の修理履歴です。それぞれをクリックしてください。
  修理(1/6) 修理(2/6)  修理(3/6) 修理(4/6)
  修理(5/6) 修理(6/6)

  夕方我家に帰った後に、枯れ枝などを焼こうと思っていました。しかし、雨が降っていたため焼却作業ができませんでした。そのため、去年末から続けているラジオの修理を続行することにしました。修理のための知識として、使われている素子を調査をしました。まずは、ラジオ筐体内に収まっていた基板を取り出しました。

          松下製トランジスタラジオ AT-110から取り出した電子基板
          A:周波数変換部,B:中間周波部,C:検波部,D:低周波部



 ラジオの標準的な電子的構造は、周波数変換部,中間周波部,検波部,そして低周波部の四つから構成されます。それぞれの部ごとに、使われている素子(主にトランジスタ)を調査しました。まず最初に周波数変換部を調査しました。周波数変換部は、同調回路,局部発信回路,そして周波数変換回路から成ります。その中で使われている能動素子はトランジスタMC101です。この素子は、その後2SC101改称されました。fαbが15Mhzと、当時としては性能が良いトランジスタです。MC101は、松下がヨーロッパPhilipsとライセンス契約して作ったトランジスタです。そのため、国内では松下のトランジスタだけがヨーロッパスタイルの缶に封入されています。

         周波数変換部とMC101              MC101の規格
 

 続いて中間周波部を調査しました。すると、中間周波数増幅にはOC45が2個使われていました。MC101よりは性能が落ちますが、fαbが6Mhzの高周波用です。ところで、トランジスタラジオの修理で困るのは中間周波トランスがろうで封入されていることです。このろうを溶かして調整することが意外に大変なのです。ただ、調整が必要なことはまれなのですが。

 中間周波用トランジスタのOC45                      OC45とOC71の規格 
 

 続いて、増幅され選択された中間周波を検波する検波部を調査しました。検波器にはOA70が使われていました。この当時、検波器は大きめのものが多いです。今は、1N60やSD34のようなより小型の検波器が使われています。このラジオに使われている検波器を見ていると、鉱石検波器の名残があるような気がします。ただ、OA70は規格表では映像検波用となっています。テレビ用のものを流用したようです。

   検波部の検波用素子OA70           検波器OA70の規格
 

 最後に低周波部です。素子にはトランジスタOC72が使われていました。そして、バリスタにはMA23Bが使われてしました。バリスタは、温度変化に弱いゲルマニウムトランジスタの温度補償用として使われています。OC72は小電力出力の72mWです。PP(プッシュプル)構成に回路が組まれています。75mWのためあまり大きな出力は望めませんが、大音響で使わなければ実用上は問題ないようです。
 日本で最初に実用的なトランジスタ(高周波用)を作ることができたのはSONYでした。松下は当初、実用的なトランジスタを作ることができませんはでした。そのため、最初は欧米とのライセンス契約で作ったトランジスタを使ったのでしょう。当時の日本は、まだまだ欧米と比べて技術が遅れていたのです。しかし、このトランジスタラジオを製造していた頃が、日本の電子立国としてのスタートラインでした。

   低周波部          OC72の規格        バリスタMA23Bの規格
  

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする