つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

ちょいと捻ってはいるが

2007-03-25 15:35:06 | ファンタジー(現世界)
さて、人気シリーズもたまには予約なしだったの第845回は、

タイトル:とらドラ!
著者:竹宮ゆゆこ
出版社:メディアワークス 電撃文庫(初版:H18)

であります。

人気シリーズでも、それなりに1巻が3,4年くらい前だったりすると、すんなり図書館で借りられるんだけど、これは比較的新しい割に、すんなり借りられたなぁ。
まぁ、おかげで日曜ラノベのネタに困らなくてすむんだけど。

さて、人気シリーズと書いておきながらたぶんそうだったはずと自信がなかったりする本書は、この著者のシリーズ2作目で、作品紹介を見ると3冊目。
ストーリーは次のとおり。

『とてつもなく目つきは悪く、無駄にひとを威嚇しているようにしか見えないが、料理上手で清潔好きなふつうの高校2年生、高須竜児は、4月の新学期、”手乗りタイガー”と呼ばれ怖れられている逢坂大河と出会い、その秘密を知ってしまったことで、夢見ていた新たな学校生活は終わりを告げた。

その秘密とは、145センチの小さな身体ながら暴力的な大河は、竜児の親友である北村祐作が好きだ、と言うことだった。
そのために夜討ちされたりとさんざんな目に遭いつつも、大河が北村に接する機会を作ろうと協力していくうちに、竜児は大河の暴力的な表面に隠れて見えない姿を知ることとなる。』

基本的には、単なるラブコメ。
とは言え、ラノベのラブコメに必須というか、定型と言うか、主人公とヒロインがくっつくような話ではなく、ヒロインの大河は北村、主人公の竜児は大河の友人である櫛枝実乃梨に惚れている、と言うところが、ちょいと捻ったところか。
まぁでも、ラノベの中では、と言う注釈付きであって、こうした互いの友人などに惚れていて、協力して……と言う展開は、そこかしこに転がっている定番ネタなので、実際には特段目新しいものではない。

ストーリーは、ほとんど脅されるような形で協力していく中で、竜児が大河のほんとうの姿を知っていく、と言うもので、とりあえずオチをつけて完結させている。
シリーズを前提に書いていると、1巻を伏線ばかりでオチなしの作品があったりするが、きちんとオチをつけて2巻の引きを作っているところは好印象。
また、ストーリー展開は定番中の定番だが、大河の無茶苦茶な行動にはドタバタが、竜児の一人称の文体にはコメディらしい軽快さがある。
作品全体としても勢いがあり、こうしたところは評価できる。

キャラも竜児の見た目は怖いが、ふつうの少年であるところや、大河の暴力的で傍若無人なところ、その裏にある姿など、きちんと描かれており、主人公ふたりのキャラは掴みやすい。
なんだそりゃ? な設定があったりして興醒めするところがあるが……まぁ、目をつぶっておこう。きっと何か今後の伏線にして何か重要なファクターにでもするんだろう。……と思っておこう。

あと、脇役のメインとなる北村、櫛枝の2キャラ。櫛枝は大河との絡みでエピソードがあり、これも定番キャラなので掴みやすいが、北村のキャラが弱い。
どういうキャラなのかをほとんど紹介しているだけで、エピソードが櫛枝に較べて少なすぎるためだろうが、脇役のメインを張る片割れがこれではねぇ。
大河の絡みで重要な位置を占めるはずのキャラだけに、キャラが弱いのはいただけない。

とは言え、定番だが勢いがあるストーリーで、コメディらしさもある。
キャラもメインキャラは北村を除けば比較的掴みやすく、あとはこうした作品が好きか嫌いか、と言うところになるだろう。

……のだが、文章がまずいのが気になる。
竜児の一人称で、きちんと竜児の視点を大きくはずれることなく書いているのはよいところなのだが、表現に難があるところがけっこうあるので、流れが悪い。
こうしたところは勢いを殺してしまう大きな要因となってしまうので、せっかく勢いがあるほうなのだから、気をつけて書いたほうがいいのではないかと思う。

総じて悪い作品ではない。いいところもあり、悪いところもあり、及第が妥当だろう。
オススメできるかと言うと悩むところだが、こうしたラブコメやツンデレのヒロインが好きなひとにはおもしろい作品ではないだろうか。



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