つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

これが走りになるのかな?

2012-07-09 20:25:27 | ファンタジー(現世界)
さて、ふたつの意味で走りだと思うの第1022回は、

タイトル:俺の妹がこんなに可愛いわけがない
著者:伏見つかさ
出版社:アスキー・メディアワークス 電撃文庫(初版:'08)

であります。

ふたつの意味で、というのはいわゆる「妹モノ」の走りではないかと言うことと、やたら長いタイトルが粗製濫造されているうちの走りではないか、と言うこと。
「妹モノ」は、これの人気にあやかってやたらと出始めた印象があるし、読む気も起きないやたら長いタイトルの作品が目につくようになったのも、これが最初ではないかと言う印象がある。

まぁ、それはさておき、アニメ化もされ、二期も決定している本作の第一作。
Wikiによると、著者人生最後の作品とも考えていたらしい作品であって、人気が出てよかったねぇ、と思ってはいるけど、内容は……。

『「普通」な人生でいい。
高坂京介は、特に趣味もなければ特徴らしい特徴もいらない――そんな「普通」で地に足のついた人生で十分だと思っている高校生だった。
家族構成は両親に妹の4人家族。
だが、この妹が京介とは正反対とも言える存在だった。

まだ中学生だが茶髪にピアス、おまけに雑誌のモデルもやるような美人でいわゆるイマドキの女子中学生の高スペック版とも言える妹で、普通なら自慢できる妹……と言いたいところなのだが、京介と妹桐乃との関係は最悪。
ここ数年、まともな会話をしたこともなければ、帰ってきたときの挨拶すら無視される始末。
もっとも、京介自身も別段そういう桐乃とのことはどうでもいいので、スルーしておけばいいだけのこと。

それで日常は過ぎていくのだと思っていたのだが、ある日のこと。
用を足しに向かった先で、出かける途中の桐乃とぶつかってしまい、桐乃のバッグの中身がぶちまけられてしまった。
拾おうとしてもそれを拒絶される始末だが、まぁ、桐乃との関係はこんなもんだと思っていた京介は、桐乃が出かけてしまったあと、玄関で妙なものを拾ってしまう。
それはアニメのDVDのパッケージで、中身は「妹と恋しよっ♪」というタイトルのゲームらしきDVD――。

家族の性格からまったくいったい誰のものか想像もつかない京介は、夕飯時、それとなく話題を振ってみると桐乃の様子が明らかにおかしい。
そこで京介は策を弄してコンビニへ出かけるふりをして桐乃の反応を見ようとしたのだが――見事にビンゴ。
そこには京介が拾ったDVDを探すために京介の部屋を家捜ししている桐乃の姿があったのだ。
明らかに桐乃の持ち物だとわかるのだが、桐乃はDVDの所有を認めない。面倒くさくなった京介は拾ったそれを桐乃に渡してさっさと退散願おうとしたのだが、桐乃の口から出た言葉は「私がこういうのを持っていてもおかしくない?」だった。

人の趣味など千差万別。桐乃がどういう趣味であろうとどうでもいい京介は「いいんじゃないか」と適当に答えてしまったのだが、これがいけなかった。
それをきっかけに、桐乃は「人生相談」という名目で京介を巻き込んでいく……。』

さて……個人的な好みの問題は置いといて、ストーリーの流れはいいと思う。
ストーリーは、京介が桐乃の秘密(オタク趣味で妹萌え)を知り、それに協力するハメになる、と言う巻き込まれ型のストーリー展開となっているが、幼馴染みの麻奈実のアドバイスをもらって、同じ趣味のSNSに入ったり、オフ会の観察を強制されたりしながら、最後には文字通りラスボスである親父との戦いを経て、「何故か」不仲の妹のために奮闘する、と言う内容。
まぁ、その「何故か」というのもわからないでもないので、京介の行動には無理はないのであろう。
私には妹がいないので、文中で同意を求められても何とも言えないが、理解はできるし、そういったところに無理がないので流れが悪くなることはない。

文章は京介の一人称で、やや好みが分かれそうな気はしないでもないが、途中で視点が変わることもなく、京介の語りで一貫しているところは好印象。
オフ会なども女性限定という縛りがあるにもかかわらず、いきなりひとりで行くのはと言う理由で観察者にされて、京介視点で描いているなど、卒がない。
無駄な傍点ルビや三点リーダーの多用などもあまり見受けられないので、文章の作法としてはきちんと一人称の作法を守って書いてくれているので文章面での評価は高い。

で、おもしろいかと言われれば、個人的には「普通」
キャラ萌えをあまりしないタイプなので、どのキャラがいいとかそういうところはない。
たぶん、キャラ萌えする人には作中徹底的にツンを貫いた桐乃が最後の最後でデレてくれたりするところにグッと来たりするのかもしれないが、あいにくとそういうのに萌えないタイプなのでデレてくれたところで何の感慨もない。
まぁ、ラストにタイトルと合わせて終わらせているのはうまく書いたな、と言う印象ではあるけれど。

と言うわけで、総評ではあるが、ラノベ点も加えて、良品としておこうか。
ストーリー展開、流れ、キャラ、文章ともに悪いところが見当たらないので、個人的におもしろかったかどうかは別にして、よくできた作品とは言えるだろう。
あとは読む人の好みの問題だと言えよう。
手放しでオススメはしないが、出来はいいので読んでみて損はない作品と言えるだろうね。

と言うわけで、総評、良品。
しかし個人的に2巻以降読むかは微妙なところ。アニメ見て、だいたいの話はわかってるってのもあるかもしれないけど、個人的にすごいおもしろかった、とは思ってないのでね。
ただ、著者にはホントによかったね、と言ってあげたい。
これが最後のつもりで書いたらしいのだから、人気も出て、続きも出て、アニメにもなって……作家を廃業しなくてすんだんだし、ね。


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