つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

おのるぅぇはーーーー!!

2007-03-05 22:23:49 | ファンタジー(現世界)
さて、ちょっと待て、こるぁっ! の第825回は、

タイトル:9S <ナインエス> VII
著者:葉山透
出版社:メディアワークス 電撃文庫(初版:H18)

であります。

上中下巻の下巻となる第7巻……ですが、終わってない……。
完結編があるってどういうことじゃぁっ! と一瞬、著者に殺意を憶えたひとはきっとたくさんいるに違いない(笑)
まぁ、著者あとがきにも怒らないでとあるので、この辺りで矛を収めつつ、ストーリー紹介。

「その少年はたった一人で数千の兵を相手にしようとしていた。得物は小刀のみ。まぶたに浮かぶのは、強く、けれどはかなく世界に翻弄される少女の姿だった――。由宇に残された命の時間はたった10分。焼け付くような焦燥感とともに、息をつくことすら許されぬ壮絶な闘いへ、闘真は身を投じるのだった!
場所は移り、NCT研究所。堅牢を誇る防壁は破られ、黒川の魔手は最後の聖域へと迫りつつあった。わずかな可能性を信じ八代は絶望的な闘いを挑む。そこに一筋の光明があることを信じながら……。
死闘の果てに待つのは、破滅か栄光か。それぞれの信念をかけた闘いが始まった!」

前半が、由宇を助けるためにフリーダムへ乗り込んだ闘真の救出劇、後半がNCT研究所でのADEMと海星との攻防、と言う構成。
6巻のラストの影響からか、この巻の序盤からテンションが高く、全編通して勢いは上中下巻の中で随一。

特に、由宇を助けるために戦う闘真と、毒に冒され虫の息の由宇の序盤は、よくもまぁ、ここまで引っ張れるものだと言うくらい引きまくり。
ようやく助けるかと言うところで戦闘に入り、絶望的な状況が二転三転……かなりやきもきさせられました(笑)
しかし……、この救出劇のあとの由宇と闘真は……さぶいぼ症候群な方々はさぶいぼが立つこと間違いなしのベタっぷり。
完全に狙ってるな、著者……。
ベタな展開が苦手なひとは、こういうところは少し覚悟がいるかな。

さて、後半はNCT研究所での攻防だが、こちらは前半のテンションから趣を変えて、従前の巻でよく見られた、硬軟織り交ぜてメリハリをつけた展開。
前半の勢いにも助けられた感がないわけではないが、伊達の秘書官八代の見せ場や、遺産の知識の宝庫である由宇の記憶とLAFIと言うスパコンを凌ぐ遺産であるコンピュータが盗まれるなど、盛り上がりは十分。
また、6巻で見せられたような様々な謎の片鱗も、いくつか散りばめられ、「あ、そのキャラとつながるのね」とか「へぇ、そゆこと」とか、従前の巻で語られたネタとの絡みも想像できておもしろい。

しかし、Amazonのレビューを見ていて、つくづく思ったが、いろいろと伏線を張り、それらをきちんと使い切るなど、しっかりとしたところはあり、十二分に評価に値するものではあるが、ある意味、「勢い」がすべて、だろうねぇ、このシリーズ。
勢いに乗れて、さくさく読めるのならば、硬軟織り交ぜた展開と読者を引き込むパワーでかなりおもしろく読めるだろう。
だが、じっくりと冷静に読むならば、いままでも書いたが科学技術や理論のことや、ラノベらしいとは言えるが強さがインフレし続ける敵など、目につくところはあるだろうね。

実際、この巻に、重傷で動けない由宇と闘真をルシフェルから守るため、麻耶がルシフェルを説き伏せるシーンがあるのだが、このあたりの麻耶の説得のセリフはかなり微妙……。
まぁ、単純に読んでいておもしろいからそれでいいし、おもしろいから少々のアラがあったところで大して気にはしないかな。

それにしても……、早く完結編出ないかなぁ……(笑)
病気療養中の著者に鞭打つようなセリフだが……(爆)



――【つれづれナビ!】――
 ◆ 『9S <ナインエス>』のまとめページへ
 ◇ 『ライトノベル一覧表(その1)』へ
 ◆ 『つれづれ総合案内所』へ