つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

無限の住人23を拾ったのですよ ~つれづれ号外~

2008-06-27 03:05:24 | つれづれ号外
さて、そういやタイミングを失って紹介しないままだったなァ……と思う号外拾回目は――。

タイトル:無限の住人23(以下続刊)
著者:沙村広明
出版社:講談社 アフタヌーンKC(初版:'08)

であります。

さりげに、これが初の紹介となるネオ時代劇『無限の住人』の最新巻です。
一応、初巻からずっと買い続けてはいるのですが……『不死力解明編(?)』の間延びっぷりに大分萎えて、現在は半ば惰性だったり。(爆)
例によって、既刊読了前提&ネタバレ満載で参ります、未読の方はくれぐれも御注意下さい。(定型文)


本巻の内容ですが……逸刀流選抜メンバーの天津、凶、馬絽、怖畔が、江戸城に乗り込んで好き放題に暴れます。以上。






いや、冗談抜きで、殆どそれだけなんですってば。
ページ換算すると150頁強の間、ひたすら斬って斬って斬って斬りまくり!
直刀で撫で斬りにする、二刀でひたすら突きまくる、笛の音で撹乱して曲刀で貫く、穴あき長刀でまとめてぶった斬る、しまいにゃ爆弾で門ごと吹っ飛ばす!

久々の見せ場に、天津君はしゃぎまくりです。
んで、本丸に辿り着いて何をやるかと思いきや……壁に落書き。(をい)
ちなみに、内容は広告でした。中間管理職の英君から、「JAROに訴えてやる!」と厳しいツッコミが入りますが、そんな雀のさえずりは丸無視ぶっこくのが逸刀流クオリティ。

かくて、やることやっちまった四人組は撤退戦を開始します。
しかし、散々コケにされた江戸城ガーディアンズも黙ってはいません。
ありとあらゆる罠で進路を妨害しつつ、剣士最大の敵である鉄砲(映画『七人の侍』で猛威を振るいましたね)を持ち出して各個撃破を狙う。

まず怖畔がはぐれ、次いで、馬絽が被弾して重傷を負います。
統主を確実に逃がすため、「しからば、いずれ涅槃にて」と格好良すぎる台詞を吐きつつ、死地へと向かう馬絽。
たった二人となった天津と凶は、仲間達が待つ水戸を目指すのですが――続きはまたの講釈にて。

えーと……その他の方々も登場することはしました。
主人公二人は吐のクノイチ二人組&お医者さんと再会、ちょっと情報交換したり、過去を振り返ってみたりして終わり。
それと何故か尸良が登場し、英の手下数名と対決。男はすべて惨殺、女は手足を切断し、腹を割き、両胸を刀で貫いた後で×××××××××と、相変わらず外道モード全開。
あ、六鬼団も一応出ます、5頁だけ。(爆)

そんなところでしょうか。
アクションメインなので、ストーリーは殆ど進んでいません。
つーかもう、キャラを一人ずつぶっ殺していく以外、やることない気がするのは私だけ?

てなわけで、以下、各キャラ死亡予測リスト。


『アンデッド万次』/普通に考えたら死ぬよね♪(鬼) でも誰に殺されるかと聞かれると思い浮かばない……まさか錬造? まぁ、少なくとも天津ぢゃないのは確かだ。最悪のパターンは――凛を不死にして、自分は死ぬ。えーと、方法は聞かないで下さい。(爆)
『黄金虫の凛』/この子死んだら物語としてどーかと思うんだけど、沙村だから油断は禁物。あ、万次さんと一緒に死ぬってオチがあるか? つーか、天津ぶっ殺すって目的が霧散した現在、主人公二人の話に意味があるのか激しく疑問だったり。
『天津くん、ハイ!』/絶対死ぬ。問題は殺す相手だが……ええ~? 吐鉤群ぁ~? せめて偽一クラスにして下さい。それか、偽一と相討ち状態→百琳で。
『シスコン凶』/逸刀流で唯一生き残る可能性のある男。ただ、燎を見逃したことで、死亡フラグ立ったっぽい。死ぬとすれば、燎に殺されるか、尸良が燎を××してるところに乱入、相討ちになるか、だと思います。
『デンジャラス尸良』/こいつが死なないと思っている読者は一人もいない筈。誰が殺すかは選り取り見取りで、凶を筆頭に、万次さん、百琳、偽一、錬造、凛、場合によっては天津、槇絵すらあり得る。今までの悪行を考えると、女性陣に斬られるのが一番妥当か? むしろ誰を道連れにするかが問題で……少なくとも万次、凛、凶は射程圏内にいる。
『戦う公務員・吐鉤群』/死ぬしかないんだけど、滅法強いので五人以上道連れにするのは確実。阿葉山宗介とのリターンマッチで相討ちになるか、それを生き延びたとしても天津に斬られる線が濃厚。切腹は……まずないよね。


沙村広明と言えば、つい先日、太田出版から発売されている『ブラッドハーレーの馬車』を読みました。
著者の外道っぷりが炸裂しているばかりか、まったく救いがないという素敵なお話で、読めば『むげにん』がヌルく思えてくること請け合いです。
正直、女性にはオススメ出来ませんが、寓話として非常に完成度の高い作品だと思うので、自分はド外道だと自覚している方のみ拾ってみて下さい。
(あー……いずれレビュー書くので、それを待って頂いても結構です)



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キングダム10巻発売! ~つれづれ号外~

2008-06-23 20:44:16 | つれづれ号外
さて、新刊は号外に回すのが定番化している号外玖回目は――。

タイトル:キングダム10(以下続刊)
著者:原泰久
出版社:集英社 ヤングジャンプコミックス(初版:'08)

であります。

やって参りました、まだ連載中の作品の中で最も面白い中国歴史漫画の最新巻!
今、一巻ずつ紹介してる漫画って、もしかしてこれと『クレイモア』ぐらいかも……。(爆)
例によって、既刊読了前提&ネタバレ満載で参ります、未読の方はくれぐれも御注意下さい。


これまで、秦王・政は数多くの危機に立ち向かってきました。
弟の反乱、魏との戦い、羌カイ+その他大勢による暗殺未遂事件。
どれも一歩間違えば秦がひっくり返るほどの大事件でしたが、信や昌文君の活躍でどうにか事なきを得ました。

しかし、今度の敵は一味違う。

あの男がやってきたのです。
竭氏が乱を起こした際、わざと帰国を遅らせて漁夫の利を得ようとした奴。
そう、秦国の影の支配者、丞相・呂不韋です。

ってのが、前巻ラストの引きで、本巻はその呂不韋が参内するとこから始まります。
秦国最大勢力の登場にビビリまくる政陣営ですが、そこはそれ、例によって信君が全員を叱咤!
テンションゲージが2ゲージぐらい溜まったところで、一同は呂氏陣営を待ち受けるのですが――。

……平均身長5メートルぐらいあるんですけど、呂不韋軍団。

いやいやいや、これは単なる目の錯覚です。
きっと、男塾の帝王・大豪院邪鬼と同じく、気と迫力のためでっかく見えるだけなんです! そうに違いない!
邪鬼先輩は、でっかい酒樽をお猪口代わりに酒飲んでた気がするけど、そういう細かいことは気にしてはいけません、駄目なんですってば。(爆)

冗談はさておき、取り巻き達の後から悠然と呂不韋登場。
開口一番、ぬけぬけと「御無事で何よりでした、大王様」と、お約束のボケをかまします。
さらに、「昨夜の大王様暗殺事件の黒幕は――この呂不韋めにございます!」と続けるあたりはさすが悪の枢軸。(笑)

つーか――完全に舐められてますね、政。

その後も、呂不韋&手下が面白トークを連発してくれるんですが、長くなるんで割愛。
代わりと言ってはなんですが、呂不韋陣営の中核を成す『四柱』ついてさらっと解説しておきます。


『蒙武』/リョレッド。戦術担当でやたらと態度がでかく、呂不韋はおろか政にまでタメ口をきく。自分が中華最強だと信じ込んでいるようだが、顔が王騎将軍に1コマで瞬殺された魏興そっくりなので、三下臭さ全開。
『昌平君』/リョブルー。戦略担当で、四柱一のイケメン。国内最高峰の軍師育成機関のトップも兼任しており、羌カイの推薦でやってきた河了貂を食客に迎える。実は呂不韋よりタチが悪いという噂あり。
『李斯』/リョグリーン。法律担当で、ついでに汚れ仕事も行っているらしい。今のところ印象薄。
『蔡沢』/リョブラック。今でこそ外交官の最高位だが、元は昭王に仕えた丞相。呂不韋からは先生と呼ばれる。妖怪じみた老人で、政に向かって堂々と、「早う大きゅうなりなされィ大王。この蔡沢は、強き者にのみお仕えいたしまするぞ」と言い放った。


以上、呂不韋の愉快な手下達、でした。
束になっても王騎将軍には及ばないけどね。(笑)

呂氏が去った後、政達は肆氏を仲間に入れ、戦力の立て直しを計ります。
前巻からの引きで、河了貂は信君と別れ、軍師の道へと。
そして、信君は新たな強さを求めて、ある将軍に会いに行きます。

そうそう、しばらく出てこないと思っていた羌カイが再登場しました。
河了貂が旅立ったことを伝えるために信の家を訪れ、色々意味深な会話を交わします。
もはや敵対する必要がなくなったからか、ギャグシーンが結構多いのはちょっと笑いました。


信「羌カイ!? てめェここで何してる!!」
羌「散歩」

(……をい)

羌「料理ができてるぞ」
信「勝手に見るなよ(怒)。――あいつが作って行ったんだろ。食ってみろよ、うめーぞ」
羌「パク(あまりの美味さに、白目むいて卒倒しそうになる)」

(羌カイって、生活能力なさそうですよね)

信「すっかり夜になっちまったな。泊まってっていいぞ、お前。――あ、そう言やお前女だったんだよな……」
羌「……」
信「カカカ、何、急にこわばってんだお前!」
羌「……(誰もこわばってないぞ)」
信「今さら関係ねーだろ。伍であれだけ一緒に寝泊まりしてたんだ」
羌「……そうだな」
信「しっかし誰も気付かねーから笑うよなー。気付かれねーお前にも大分問題がある…ぞっ……!(素顔を晒した羌カイの美貌に絶句)」

(ちなみに信君、朝一人で目覚めた後で、「チッ、おしいことしたかな」とか言いやがります。コラコラ、いつからそんな不埒なことを考えるようになったっ!)


すいません、脱線しました。
信君は新たな強さを求めて、ある将軍に会いに行く――と書きましたが、誰のことか当然お解りですよね?
そう、秦の怪鳥・王騎将軍です!(待ってました! やっぱあんたが最強!)


信「どうしたらもっと強くなれるか、教えを乞いに来ました」
王「ココココ。そうですか私はてっきり私に抱かれに来たのかと思いましたよォ。
ココココ、抱きませんけどねェ。本当ですよォ? ねぇ騰?


だから、あンたの言葉は洒落にならないんだってば……。



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ホタルとマユの三分間書評『二十面相の娘』

2008-06-21 08:00:50 | ホタルとマユ関連
さて、アニメ化に便乗したわけじゃないです……多分、な第975回は、

タイトル:二十面相の娘(全8巻)
著者:小原愼司
出版社:メディアファクトリー MFコミックス(初版:'03)

であります。


「私という人間をもう一人作ろうとしているのです。
 大戦を経て、私は世界に絶望させられた。
 だから私はこの世界を私好みのパノラマに描き変えたい。
 そのためには少しばかりの仲間と――もう一人私が必要です」
   ――一巻。二十面相の台詞より。



―プレステ1って現役ですよね?―


 「こんにちは~♪ 今更ながら、ヴァルキリー・プロファイルをプレイ中のホタルでーす♪」
 「マユだ。つーか……またゲームネタかよ!」
 「やっぱりこのゲームの戦闘システムは楽しいですね~。今でも充分遊べます」
 「まぁ、ストーリーがほとんどダイジェスト状態なのと、某ボスが超弱なのを除けばいいゲームではあるな」
 「ロキ様弱っ! とか言うなっ!」
 「やれやれ……わざわざ言わないでおいてやったってのになァ~」


―漫画版はこんな感じ―


 「さて、本日御紹介するのは――コミックバーズよりはまだマシか? 知る人ぞ知るマイナー月刊誌コミックフラッパー! の看板作品の一つだった『二十面相の娘』です!」
 「現在、番外編の『二十面相の娘――うつしよの夜』が同誌に連載されているが、それについては別の機会に触れることにする。
 タイトルネームから解ると思うが、本作は江戸川乱歩の『怪人二十面相』をモチーフにした60年代風活劇漫画だ。二十面相に救い出された少女・チコが、自分の命を狙う叔母や、二十面相の秘密を狙う者達と対峙しつつ、一人の人間として成長していく様を丁寧に描く良作で、一度このブログでも紹介している。(→過去記事はこちら)」
 「乱歩関係のネタがいくつも出てくるのも魅力ですね。絵まで懐かしい感じなのはちょっと引っ掛かりますが……」
 「あ~、確かにちと粗い絵だが、乱歩世界の雰囲気には合ってると思うぞ。初期はともかく、後期は大分安定するしな」
 「漫画と言うより、絵本っぽい感じなんですよね~。載ってる雑誌がアフタヌーンだったら全く問題ないんですけど、それ以外の雑誌だと何か違和感があります」
 「アフタヌーンは昔っから特殊空間だからなァ……。
 ストーリーは概ね四部構成で、順に――チコと二十面相一味の活躍、離散を描く『二十面相の娘編』、実家に連れ戻されたチコが独自に二十面相の行方を追う『探偵編』、二十面相の過去を知る怪人物との長い戦いを描く『白髪の魔人編』、すべてのキャラが東京に集い、大戦の忌まわしき遺産を巡って絡み合う『二十面相編』――となっている。また、チコの友人の小糸春華が少女探偵団を結成するといった枝葉的エピソードが存在する他、連載前に掲載された読みきり版が一巻に収録されている」
 「なお、『~編』の名称はマユさんが勝手に付けたもので、公式のものではありません。誤って日常会話で使用したりすると白い目で見られるので注意して下さいね♪」
 「いらん解説は入れんでよろしいっ!
 それはさておき、アニメ版は視たか?」
 「絵が微妙に違うんで視てません。視たら視たでハマりそうですけど……。
 ちなみに公式サイトは↓こちらです」


『二十面相の娘』アニメ公式サイト


 「原作者・小原愼司さんのインタビューも掲載されているので、興味のある方は覗いてみて下さい♪」
 「ホタルは否定的な意見を吐いたが、TRAILER見る限りなかなかイケてるぜ。
 んじゃ、例によってキャラ紹介といくか」


―キャラクター紹介やっときます?―


 「ではでは主人公の、美甘千津子――通称チコちゃんから。
 両親を早くに失い、叔父夫婦に引き取られたものの、遺産を狙う二人に毎日毒を盛られていた薄幸の美少女。毒に気付いて食事を拒否し続けていましたが、限界寸前のところで二十面相に救われ、以後、彼と行動を共にします。
 ちなみに年齢は、二十面相と別れる直前で『じき13』とのこと。仲間達と過ごした時間は二年余りだったらしいので、初登場時は十歳ぐらいだった計算になります……聡明過ぎ。
 凛々しいという表現がぴったりくる少女で、年齢にそぐわぬ冷静な思考と、二十面相に仕込まれた(と思われる)体術を駆使して、数々の敵と互角に渡り合います。二十面相を慕い、闇に消えた彼をひたすら追い続けるイメージが強いのですけど、自分の行く先も見据えており、最終回ではしっかりとそれを言葉にしました」
 「では、江戸川乱歩が生み出した日本を代表する大怪盗・二十面相、年齢不詳。
 原作では愉快犯に近いところもあったが、こちらはスーツの似合うナイスミドルで、大戦(これがどの戦争を指すのか作品内では明確にされていない)中のある極秘研究に携わっていた人物とされている。世界各地を巡って様々なものを盗むが、それはすべて過去を清算するためだった……と、これ以上はネタバレになるので割愛。(爆)
 清波製薬の社長によれば、その正体は超人化計画に携わった将校・新田二郎である可能性が高いらしい。また、五巻では魔人が他者に二十面相を紹介する際、白須麻という名を口にしている。しかし、どちらも情報としては断片的で、結局、彼の本名は最後まで明かされることはなかった。
 肉体改造は受けていないようだが、改造人間とも互角に渡り合える高い戦闘能力を有する。銃器の扱いにも長けており、原作と違って、危険と判断した者を殺害することもある。
 チコにとっては、まんま優しいお父さんであり、『自分で見て自分で聞いて自分で考える。これ以外に何かを成す方法はない』等、数々の言葉で彼女の人格形成に多大な影響を与えた」
 「長っ! マユさんて、ひょっとしてオヤヂ趣味ですか?」
 「違うわっ!
 二十面相はもう一人の主人公だし、この作品のすべての登場人物と何らかの関係があるから、これぐらいの長さになるのは仕方ねーだろ」
 「では、チコの兄貴分のケン君。
 二十面相の組織の下っ端で、背伸びしたがりなお年頃の17歳。チコが入った当時は子供っぽさが目立ったものの、凶悪な盗賊『虎』に左目を潰され、仲間と別れた後に覚醒、眼帯と煙草が似合うクールなキャラになりました。と言うか……チコもそうなんですけど、設定年齢より4、5歳上にしか見えません。
 二十面相が自分を捨てたと思い込み、しばらく根に持っていたのですが、自分のボスは自分だと気付いたことで大きく成長。後に、香山望という強力な相棒を得て、一人の盗賊として大成します――喜んでいいのか解りませんが(笑)」
 「名前が出たので、清波製薬の研究員・香山望、24歳。
 同じ研究員の津矢高志とともに、戦時中の超人化計画『人間タンク』の再現を試みるも失敗。清波社長に切り捨てられ、姿をくらまして独自に研究を続けていた。二十面相の遺産に過去の研究資料が含まれていると考え、チコに接触するが、結局何も得られずに終わる。その後はちらっと1カット登場しただけで出番がなかったが、七巻で思い出したように復活した。
 投薬の影響か、顔から胸にかけて血管が異様に浮き上がるという症状が出ているものの、刃すら弾く強靱な肉体と超反応速度を得ており、戦闘力は非常に高い。その比類なき格好良さから、乱歩作品に元ネタがあると睨んでいたんだが……自力じゃ気付けなかった、ちっ。
(なお、最終巻最終ページにて、ネコ夫人であることが判明。やられた、そいつがいたかっ!)」
 「では最後に、乱歩作品もう一人の顔役・明智先生。作中では明智小五郎という名は出てきませんが、『D坂の殺人事件』に言及するシーンがあるので、かの名探偵と考えて間違いないでしょう。
 登場時から一貫して二十面相を追っており、実際、かなり近いところまで迫っていましたが、結局、一度も本人と対面することはありませんでした。『十年は出遅れている』と言っている通り、二十面相よりもかなり若く、事件そのものには間に合わずに後で色々と解説するのが主な役割。
 本作は飽くまでチコと二十面相の話なので、明智先生に暴れてもらっても困るのでしょうが……それにしても扱いがちょっと低かったような気が……。一応、二十面相の正体は突き止めたみたいですけど、それも、すべてが終わった後でした」
 「ん? 最後って、まだ友人と冥土と三下のサブキャラ三人組紹介してないぞ?」
 「あ~……そういう方々もいましたね。
 では、怪人とか魔人とか超人とかと比べると影が薄いのですが、チコの日常に関わってくる、小糸春華&トメ&空根(敬称略)。
 春華ちゃんはチコちゃんの同級生で、小糸財閥の御令嬢です。当初は子分を二人従えて意地悪を仕掛けてくるボス猿でしたが、二十面相絡みの事件を経て、後に親友となりました。16歳になったら政略結婚させられることが決まっており、今を楽しむことに全力を傾ける、ある意味もう一人のチコ。
 トメさんは美甘家のメイドで、チコちゃんの世話係です。数少ないチコちゃんの味方の一人で、微妙に母親のような役回りを演じました。年齢は18歳の筈ですが、大人びた雰囲気のため二十代にしか見えず、本人もそれを気にしてたりします。ちなみに漢字で書くと『留』、岡山出身とのこと。
 空根先生は所謂へっぽこ探偵。本人の能力はとてつもなく低いにも関わらず、他人のおこぼれで手柄を立てることがあったりします。小悪党的な面もあり、かなり鬱陶しいキャラでしたが、後に改心、頼りないけど一応善人っぽい方になります」
 「あからさまにやる気のねー解説だな、おい。
 余談だがこの三人、白髪の魔人編では揃って催眠術で操られ、二十面相編では見事に戦力外通告を受ける……憐れだ」


―総評をどうぞ!―


 「絵さえ気にしなければ非情に良い作品です♪
 少女の中にいるもう一人の二十面相とは? 彼が持っているとされる過去の遺産とは? 二十あるといわれる彼の本当の顔とは? チコちゃん、明智先生、怪しい方々、皆が追っかけ回す中、ふらりと現れては闇に消えていく二十面相の活躍を御堪能下さい」
 「先に言われちまったが……チコを主人公に据え、彼女を囮にして他のキャラを動かすことで、逆に二十面相の魅力を引き出している傑作だ。
 エログロテイストは皆無に等しいが、乱歩作品特有の怪しい空気は受け継いでおり、油断してると、キャラが唐突に別人に変わったり、人形に化けたり、ロケットパンチ(笑)かましたりする。個人的には三巻でチコが解剖台に寝かされて――」
 「ソレ以上ハこーどに触レルゾ」
 「触れねーよ。残念なことに、未遂に終わったからな」



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ホタルとマユの三分間書評『葉桜が来た夏』

2008-06-16 00:05:40 | ホタルとマユ関連
さて、ラノベ紹介するのも久々な第974回は、

タイトル:葉桜が来た夏
著者:夏海公司
出版社:アスキー・メディアワークス 電撃文庫(初版:'08)

であります。


「授業って……おまえ、学校に行く気か!?」
 愕然とする学に、葉桜は当然のような表情でうなずいてみせた。
「当たり前よ。共棲体は、可能な限りたくさんの時間を一緒に過ごすべきなんだから。あなたが一日の大部分を過ごすのは学校なんでしょ? だったら、私もついてくのは当然じゃない」
「どこが当然だよ! だいたいその格好で行く気か?」
 葉桜の服装は、薄手の半袖ジャケットにセミタイトスカートだった。とても学校へ行く格好には見えない。葉桜はきょとんとした表情で目を瞬いた。
「何か変?」
「変とかじゃなくて、私服で行く気かって聞いてるんだ。おまえ、制服なんて持ってないだろ」
「せいふく……?」
   ――本文71頁より。



―更新遅くて申し訳ありません―


 「御報告、御報告~♪」
 「一ヶ月ぶりに、『ホタルとマユの楽屋裏』を更新したぜ。今回は『テガミバチ』に関して、とりとめもない会話をしてる」
 「オマケページに現実逃避する暇があるなら、さっさと書評書けって噂もあったりしますが……」
 「だから自虐ネタはやめろっつーの」


―どんなお話ですか~?―


 「さて、本日の紹介はライトノベルの大店・電撃文庫から『葉桜が来た夏』です!」
 「第14回電撃小説大賞〈選考委員奨励賞〉受賞作。
 内容的には、二〇二×年の滋賀県彦根市を舞台にした近未来SFボーイ・ミーツ・ガール物、といったところだ」
 「ちょっと補足して……異星人アポストリに母親と妹を殺された少年・南方学君が、政治的な理由から、アポストリ評議会議長の姪・葉桜ちゃんと共棲することになるというお話です。
 アポストリなんかと同居できるかっ! と怒り狂う学君ですが、命をかけて自分を守ろうとする葉桜ちゃんの真面目さに、ちょっとずつ態度を軟化させていき、さらに彼女の過去を知ってしまって――と、この手の異種間恋愛物としては王道中の王道ですね」
 「共棲ってシステムは、まーいわゆるルームメイト的な意味もあるんだが……アポストリの特殊な生態が絡んでるせいで、ぶっちゃけた話、見合いと大して変わらない制度になってる。ネタバレになるんで詳しくは話せないけどな」
 「では、そのアポストリについて簡単に説明しておきましょう。
 アポストリとは女性だけで構成される異星人です。赤い目を持つ以外、外見は人類とまったく同じ。十代半ばで成長を止めてしまうため、年齢に関わらず皆、若い姿をしています。その身体能力と科学技術は人類を遥かに上回っていますが、唯一、銀に弱いという弱点を持ちます」
 「ついでに世界観について説明しておこう。
 200×年、巨大な十字架状の構造物が宇宙より飛来した。落下予測地点は東京。日本政府は米軍に核使用を要請し、ただちに攻撃が行われた。しかし、落下地点こそずれたものの、十字架は破壊されることなく琵琶湖に着水。中から出てきた異星人アポストリと人類は交戦状態に入る。
 血みどろの戦争の末に、日本人は一億二千万の内の二百万、アポストリは十万の内の三万人を失い、ようやく講和が成立。旧彦根市は、人とアポストリが共存する彦根居留区となり、共棲というシステムが導入されて十九年が過ぎた……」
 「ちなみに、学君は高校一年生・十五歳で、戦時中はまだ生まれてません。悲劇が起きたのは十歳の時、謎の隻腕のアポストリによる自宅襲撃でした」
 「最後にもう一つだけ補足しとくと、主人公の親父・南方恵吾はアポストリに対する日本の親善大使だ。このため、南方家襲撃事件は公表されず、なかったことになっている。まー……そりゃ、息子も荒むわな」
 「作品概要はそんなところですね。感想としてはどうですか?」
 「読了直後の印象は、絵も内容も電撃っつーよりソノラマっぽい作品、ってとこか」
 「それは抽象的過ぎませんか……? 出来ればもうちょっと具体的に」
 「いやこれが、『淫靡な姿で迫る仇敵アポストリを前に、学は復讐心を維持出来るのか! 以下次号!』ってんなら、まだ電撃らしいんだが、特に燃える展開とか萌える展開とか吠える展開があるわけでもなく、最初から最後まで至って普通のSF物だったからな」
 「それじゃ場末の18禁ゲームになっちゃいますよ……後、以下次号って、続きませんから。
 ただ、マンガ的要素にあまり力を入れてないという意見については同感ですね。一部の読者層を狙った女の子キャラとか、強力な戦闘力を誇る異星人とのバトルとか、入れてあるにはあるんですが、ちょっと薄味でインパクトに欠けてます」
 「見た目は和服ロリ、中身は葉桜の叔母で評議会議長の茉莉花とか、狙いまくってるよなァ。セーラー服着て恵吾と会ってるシーンなんかは笑えた。
 葉桜も白いネグリジェ姿で学に迫ったりして、結構頑張ってはいるんだが……イマイチ突き抜けてない」
 「多分、と言うか、ほぼ確実に、この方ラブコメ苦手なんだと思います。ツンデレ気味の学君が、生真面目な葉桜ちゃんに惹かれていく過程も、正直上手いとは言い難かったですし」
 「一応、さらっと全体的な流れについても言っとくか。
 章立ては、プロローグ+一~五話+エピローグの七分割。各章の中身を一言で言うと、(0)人類とアポストリのファーストコンタクト→(1)学と葉桜の出会い→(2)共棲開始→(3)葉桜の秘密判明→(4)テロリスト暗躍→(5)事件勃発→(6)これからもよろしく、ってとこだ。枚数の関係もあるんだろうが、必要なことだけ書いて終わってるという印象が強い」
 「ライトノベル的には、学校生活がメインの二、三章に力を入れるべきなんでしょうけど……薄かったですねぇ。大分長くなったので、そろそろ総評に移りましょうか」


―結局、駄目ですか?―


 「ずばっと言っちゃうと、中途半端な作品ですね。
 主人公二人のミクロな話は、起伏に乏しく、描写も不足してます。アポストリが憎い~と、言ってる割に、学君は三章であっさり堕ちますし、その理由も至ってありきたりで特に面白みはありませんでした。
 マクロな話も、かつて殺し合った種族同士が一つの都市を焦点に絡み合う、といった深みのあるものではなく、『不穏分子が事件起こしたのでそれを潰してもみ消しました、はい終わり! 今回の危機はとりあえず去りました、めでたしめでたし』ってだけで、大仰な設定だけが一人歩きしている感じです」
 「い……いつになく毒舌だな。何か特別気に入らないとこでもあったのか?」
 「問題は三章ですよ、三章! 愛のない共棲なんて嫌だと泣き崩れる金髪少女、ネグリジェ越しに触れる肢体、明かされる残酷な真実! ここまで来たらもう押し倒すしかないでしょ? どーしてそこで欲望の電車に駆け込み乗車しないかな、学君っ! コノ根性ナシガァァァァァッ!
 「場末の18禁ゲームそのものじゃねぇかっ! つーか、昼メロか?」
 「せめてキスの一つもして下さい。でないと、私が欲求不満で死にます」
 「なんつー身勝手な理由を……。
 ま、あたしもこの作品はあんまり褒める気がしないけどな」
 「そうなんですか? マユさん好みのSF話だし、ストーリーも特に破綻してはいないので、及第点ぐらいは出ると思ってましたが」
 「作り込みがとにかく甘い。
 作品のキモであるアポストリの設定がまるでなっちゃいねぇ。種族的特徴が××鬼そのまんまってのは大目に見るとしても、何で地球に来たのか、それまでどういう歴史を刻んで来たのか、そもそも、地球に来るまでどうやって種を維持して来たのか、不明のままってのはどういう了見だ?」
 「そう言えば、共棲を行ったのは学君のお父さんが最初でしたね」
 「つまり、アポストリは宇宙を旅しながら、自分達以外の生命体を捕食して種族保存を続けてきた、と想像出来るんだが、葉桜の台詞からするとそんなのは偏見らしい。正しい歴史を教えてないのか、単に事実を隠蔽してるのか。どちらにせよ、ロマンチストの恵吾が考える程、アポストリは綺麗な種族じゃねぇのは確実だ。
 後、葉桜が『母親』という単語を使ってたのも引っかかったな。自分の父親にあたる存在を、『母親の共棲者』と呼んでる時点で、『両親』って概念はアポストリにはない筈だ。『親』なら解るが、『母親』という単語が出てくるのはおかしい。
 こういう細かいアラは山程あるので、探してみるのも楽しいかもな」
 「そちらも毒舌全開ですねぇ。
 となると、総評としては落第ってことになるんでしょうか?」
 「趣味で『若い女ばっかりの種族』を出すのが悪いとは言わねぇが、それを作品内で生かすための努力を怠ってる時点で、SFとしては間違いなく落第だ」
 「恋愛物としても落第ですよ。主人公二人の心理的葛藤が殆ど描かれてなくて、ただ単に似た境遇だったというだけで、後は流れにまかせてくっついちゃうなんて安直にも程があります」
 「おいおい……ボロクソじゃねぇか。何かフォローしてやれよ」
 「イラストはさっぱりしてて好みですね♪ ちなみに、表紙の絵が一番失敗してます。中のカラーページの絵はもうちょっと綺麗です」
 「それは作品に対するフォローじゃねぇだろ……」



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怪・力・乱・神クワン7(最終巻)の話

2008-06-10 23:41:18 | つれづれ号外
さて、昨日死んだモニターは買い換えました……な号外捌回目は――。

タイトル:怪・力・乱・神クワン7(完結)
著者:志水アキ
出版社:メディアファクトリー MFコミックス

であります。

二十面相の娘』の娘と並んで、コミックフラッパーの顔だった作品の最終巻です。
ちなみに、以前紹介したのは十ヶ月前……おや、意外と近いな。(爆)
例によって、既刊読了前提&ネタバレ満載で参ります、未読の方はくれぐれも御注意下さい。

大仙人・左慈の導きによってダキと再会し、彼女こそが失われた自分の半身であることを知ったクワン。
しかし喜びも束の間、混沌に力を与えられた黄巾族が現れて二人を襲い、そこに、クワンの力を手にせんとする于吉まで乱入して事態は混乱するばかり。
地上平和のためにクワンを天に返すべきだと主張する左慈と、人類のさらなる進化のためにクワンを欲する于吉に挟まれ、「オレはどうすりゃいいんだよォ!」と叫ぶクワン。

そこに、クワンも地上も見限った混沌が降臨、唐突にラスボス戦開始!?
――以上、前巻のおおまかな粗筋でした。

というわけで、やって参りました最終決戦。
敵はマジモード入った混沌、こちらはクワン(スーパーモンク)、ダキ(黒魔道師)、于吉(黒魔道師)、左慈(赤魔道士)の最強軍だ……ん?
つーか、相変わらずパーティバランス悪すぎだなお前ら。

それはさておき、完全体クワンと同レベルのパワーを誇る混沌は、口からブルーレーザーを吐きまくって地上破壊を始めます。
超一流の仙人である于吉と左慈ですら、これに対抗するだけの力は持ち合わせておらず、天を貫く蒼い光をただ見詰めることしかできません。
窮地に立たされた人類に残された手段は、太平清領書の力を用いてクワンとダキを合一(ウルトラマンA?)させ、混沌に対抗する――ただそれのみ!

えーと……以下、覚醒クワンと混沌の天地を揺るがすスーパーバトルが展開されるんですが、文字で書くの虚しいんで端折ります。(それでも長いので読み飛ばし可)


完全でないため、混沌にボコられるクワン。于吉と左慈は、ちゃっかり傍観モードに入る。(をい)
→張角として祭り上げられ、ズタボロになっていた智恵復活。『蒼天航路』の劉備みたいな大演説をかます
→帝江出現(こっちの方が重要)、何故かクワン全回復。怒った混沌、バックベアードに変身、次いで、巨人に姿を変える
→全員攻撃するも、駒不足で押し返される。そこに、『指輪物語』のゴクリみたいな姿をした遊糸が乱入。ミナデインが発動して、混沌倒れる。
→まだ生きていた混沌、プライドを捨てたか、覚醒クワンと同じ姿になって襲いかかる。
→お互いに、相手を吸い込んで喰ってしまおうとするクワンと混沌、そこに巨大化した帝江(とっても不気味)が割って入り、すべてを飲み込む――!


はて、怒濤の展開なのにイマイチ盛り上がらないのはなぜなんでしょう?
何と言いましょうか……今まで必至扱いてレベル上げしてきたのに、最終決戦でいきなり物凄い力を与えられちゃって激しく虚しいものを感じる――あの感覚に似てます。
クライマックスで神様キャラが現れ、美味しいとこだけさらっていくという、俺達の存在って一体……? って軽く自己嫌悪に陥ってしまうよーな展開もどうかと。

結局、混沌は帝江がシメます。(爆)
彼は自分が調停者であることを語り、クワンにある決断を迫るのですが――さすがにこの後は本編で。
クワンと帝江の問答は、人間には悪いところもあるけどいいとこもあるんだ~、とゆー御子様仕様だったので、正直面白みもクソもなかったのですが、最後のクワンの選択は割と好きかも。

うーん……終わってることは終わってるんだけど、総評としては、微妙。
初期のメインキャラだった阿瞞にはもうちょっと活躍して欲しかったなぁ~。この巻、完全に蚊帳の外に置かれてるし。

ホタルとマユの三分間書評『颯爽登場! 第一話 ―時代小説ヒーロー初見参―』

2008-06-06 21:06:38 | ホタルとマユ関連
さて、最近時代劇視てないなぁ……な、第973回は、

タイトル:颯爽登場! 第一話 ―時代小説ヒーロー初見参―
監修:高橋千劔破  編集:新潮社
出版社:新潮社 新潮文庫(初版:'04)

であります。


「口惜しい奴等だ。憎い奴等だ。口惜しがっても、憎らしがっても、生きたままではどうにもならぬ。わしは死んで取り殺すぞ。可愛い女房まで自害をさせ、この清左衛門の手足をもぎ、口を塞ぎ、浅ましい身の上に落した奴等、――どうしてこのままに置くものか」
 と、呻きながら、枕元で途方に暮れている、吾が子をぎょろりと睨むように見詰めると、枯木のように瘠せ細った手で、引き寄せて、
「俺は死ぬぞ、雪太郎。死んでお前の胸の中に魂を乗り移らせ、お前の手で屹度あやつ等を亡ぼさずには置かぬのだ」
   ――本文281頁。『雪之丞変化』より。



―ゆるキャラの定義って?―


 「皆さんこんにちは、ホタルで~す♪」
 「マユっす」
 「何か普通過ぎてイマイチ……」
 「普通で何か問題があるのか?
 それはさておき、前々回『人類は衰退しました』を紹介した時、最後に『ゆるキャラ』の話をしたよな?」
 「しましたがそれが何か?」
 「あたしは単に『ゆるいキャラ』の略称だと思ってたんだが、厳密にはちょっと違うらしいな。
 Wikipediaによると――(以下引用)

『国や地方公共団体、その他の公共機関等が、イベント、各種キャンペーン、村おこし、名産品の紹介などのような地域全般の情報PR、当該団体のコーポレートアイデンティティなどに使用するキャラクターのこと』(引用終わり)

ってことになってる」
 「語源は『ゆるい+キャラクター』なんだから、別に公共マスコットに限る必要はないと思いますけどね」
 「まぁな。
 で、興味が湧いたんで色々調べてみたら、何か凄いものを発見した。まずは下記のサイトを見てくれ」

→『太秦戦国祭り公式サイト』

 「東映太秦映画村で開催されるお祭りですね♪
 トップページの写真に写ってる方が斬馬刀担いでるのが、何か時代を感じさせます」
 「フッ……それはまだ序の口よ、右下のバナーをクリックしてみな。
 『URYU ― A WILD BOAR ―』って書いてある奴だ。このイベントの公式キャラのページに行ける」
 「カラス天狗うじゅ……?
 え~と、これは……何と言うか……ひょっとして暴走してますか実行委員会?」
 「萌えキャラってとこが、時代の流れを感じるだろ?
 あたしは最初見た時、目が点になったぜ。つーか、東映太秦映画村のマスコット・かちん太より目立ってるってどうよ?」
 「あー……あはははは……まぁ、そういうディープな話はこの後、楽屋裏でやりましょう」


―ウチも少しは受けそうな作品を選びませんか?―


 「さて、今日の一冊は――廃れゆく時代小説の救世主となれるか? 『颯爽登場! 第一話 ―時代小説ヒーロー初見参―』です」
 「廃れゆくとかぬかすなっ!
 あとテンション低いぞ、お前。いつもの如く無駄に愛想振りまけよ」
 「だって……これ刊行は2004年ですけど、載ってる作品は一番新しいので1939年(!)ですよ。あり得なくないです?
 古くさ~い、読み辛~い、受けが取れないぃぃぃ~(切実)
 「黙レ、小娘ガァァァァァッ!
 『時代が望む時、名作は必ず甦る!』って言葉を知らないとは言わせねぇぞ!」
 「それは仮面ライダーの話でしょ……。
 えーと、本書は時代小説のメジャー作品の中から七作品を選りすぐり、それぞれの第一話のみを収録したアンソロジーです。要するに、『いきなり最終回』の逆バージョン時代小説版ですね」
 「サブタイトルから想像付くと思うが、時代劇ヒーローの初登場シーンを集めることを基本コンセプトにしている。故に、大河小説の類は選ばれていない」
 「収録作品は以下の通りです。なお、ここに挙げているのはシリーズ名で、第一話のタイトルではありません」



●大菩薩峠/中里介山 著。1913年発表。
 ――四十一巻にも及ぶ、未完の大作。当初は、『音無しの構え』と呼ばれる剣技を修め、罪なき者すら手にかけるダークヒーロー『机竜之助』を主人公とした仇討ち物語(※ただし、狙われるのは竜之助の方である)だったが、途中から数多くの主人公の足跡を追う群像劇に変化した。幕末を舞台にしており、島田虎之助や近藤勇といった実在の人物も登場する。


●鞍馬天狗/大仏次郎(おさらぎじろう) 著。1927年発表。
 ――勤王志士に味方する謎の覆面剣士・鞍馬天狗(こと倉田天膳)と、彼を慕う少年・杉作、元盗賊・黒姫の吉兵衛の活躍を描く娯楽巨編。シリーズは全四十七作を数え、それに伴って天狗の立場も変化するが、最後まで庶民のヒーローというスタンスだけは変わらなかった。アラカンこと嵐寛寿朗主演の映画が非常に有名。


●丹下左膳/林 不忘 著。1927年発表。
 ――赤茶けた髪、隻眼隻腕、右顔面に深い一線の刀傷、時代劇ダークヒーローの代名詞と言っても過言ではない怪剣士・丹下左膳の生き様を描くピカレスク・ロマン。ただし、初登場作となる『新版大岡政談・鈴川源十郎の巻』では、左膳は主役どころか完全な悪役であり、お約束通り善玉に敗れて退場する。しかし、六年後に発表された『丹下左膳』でちゃっかり主人公として復活、正義の味方っぽい役回りを演じて絶大な人気を博した。


●旗本退屈男/佐々木味津三 著。1929年発表。
 ――「天下御免の向こう傷」で知られる直参旗本・早乙女主水之介が、退屈を持て余した末、様々な揉め事に首を突っ込んでいく痛快娯楽作品。無役で千二百石を頂戴しているという時点でツッコミ必至だが、ノリが面白いので許せてしまうところが凄い。二十近く歳が離れており、甲斐甲斐しく兄の世話を焼く可愛い妹・菊路、その恋人で、見た目は華奢ながら主水之介すら認める凄腕の美剣士・霧島京弥等、狙いまくったレギュラーキャラクターも魅力。


●国定忠治/子母沢 寛 著。1932年発表。
 ――本書で唯一、実在の人物を主人公とした作品。すいません、股旅もの嫌いなんで解説はパス。個人的な感情抜きにしても、説明不足な上に視点がふらふらしてて非常に読み辛い作品だと思います。


●雪之丞変化/三上於菟吉 著。1934年発表。
 ――中村菊之丞一座の若き女形・雪之丞が、親の敵である五人の男を追い詰めていく華麗なる復讐絵巻。つい半年前、NHK正月時代劇として放送(主演は滝沢秀明。狙いまくってますな)されたので、御存知の方も多いかと思われる。主人公の雪之丞と、相棒である義賊・闇太郎の対比が見事で、映画、舞台等では一人二役で演じられるのが通例。なお、冒頭に紹介したのは、今際の際に父・清左衛門が雪之丞に言った台詞である。


●桃太郎侍/山手樹一郎 著。1939年発表。
 ――「姓は鬼退治、名は桃太郎」と、洒落た名乗りで現れる好男子・右田新二郎が、図らずも自身を捨てた丸亀藩のお家騒動に巻き込まれていく陰謀劇。天涯孤独の身でありながら、飽くまで明るく、長屋の子供達のヒーローとして生きる新二郎のキャラクターが清々しい。ちなみに、「ひとつ、人の世の生き血を啜り~」という口上で悪を斬りまくるのはドラマのオリジナルである。



 「は~い、終わり終わり♪」
 「心底嬉しそうだな、おい。
 言い忘れてたが、各作品の末尾には、第一話の後の粗筋とシリーズ全体の解説が付記されている。粗筋は概略ながら結末まで記してあり、解説は原作のみならず映画の話にまで及んでいるので、続きを読まなくても作品の全体像を知ることが出来るのは嬉しいところだ」


―で、本書の意義は?―


 「あれ、まだ続くんですか?」
 「黙らっしゃい。
 これで終わっちまったらあたし等が出てる意味がねぇだろ。せめて、気に入った作品の一つぐらい挙げろや」
 「気に入った作品……趣味でいくなら『雪之丞変化』でしょうか。異様に句読点が多い文章に閉口しましたけど、雪之丞のキャラクターは良くできてるし、長崎の仇を江戸で討つという洒落た設定も好きです。これだけは続きを読んでみたいですね」
 「親父の怨念背負ってる割には、暗さが感じられないのが雪之丞の美点だな。とにかく二本差しの主人公が多い時代小説の中にあって、元大商人の息子で今は舞台役者というのもいい。あ~、そういや『THE八犬伝』の毛野のエピソードも、女形が復讐を果たす話だったなぁ。作画が安定しないアニメだったが、あの回だけは妙に力が入っていた」
 「ちょっとちょっとちょっと、貴方が脱線してどうするんですか。
 時代劇好きらしく、好きな作品を三つか四つぐらい挙げてみて下さい」
 「いや~それが、名前は知ってるけど読んだことない作品ばっかりでな。ドラマならともかく、原作に付いてはあまり言うことがなかったりするんだ。
 本書読んだ限りだと、『旗本退屈男』と『桃太郎侍』かね。どちらも勧善懲悪物でストーリーが解りやすく、一応この第一話だけで一つの話が終わっているので続きを気にしなくてもいいのが有り難い」
 「『鞍馬天狗』は大ピンチのいいところで終わってますし、『大菩薩峠』と『雪之丞変化』は物語の触りの部分といった感じですからね……。こういうの読むと、いかに解説が充実してるとは言え、これ一冊の価値ってあんまり高くない気がしてくるんですけど」
 「そうか? カタログとしちゃ結構優秀だと思うけどな。色んな作品を拾い読み出来るし、続きを読まなくても大体のストーリーは把握出来るから、時間がない現代人には便利だぜ」
 「マユさん、実は時代小説苦手なんじゃないですか?」
 「い、いや……そんなことはねぇぞ。
 確かに、説明文が長ったらしくてなかなか先に進めないとか、チャンバラやってりゃそれでオッケーって感じでストーリーぐだぐだだったりとか、作者が主人公に乗り移って自己満足に浸ってるだけだったりとか、ハズレを引いた時の破壊力が凄まじいジャンルではあるが、それでもあの独特の雰囲気は捨てがたい……と思う」
 「お後がよろしいようで」



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ホタルとマユの三分間書評『テガミバチ』

2008-06-02 23:46:46 | ホタルとマユ関連
さて、ようやく最新刊まで揃えました、な第972回は、

タイトル:テガミバチ(1~4巻:以下続刊)
著者:浅田弘幸
出版社:集英社 ジャンプコミックス(初版:'07)

であります。


―今日はかなりガチで行きます―


 「皆さん御無沙汰してました、ホタルでーす♪」
 「マユっす――つーか、いきなり自虐ネタかよ!
 「こともあろうに、ゲームに浮気してたらしいですよ。何て嘆かわしい!」
 「お前にそれを言う資格はねぇ!
 今日は本筋の話が長くなりそうなんで、さっさと先へ行くぜ」


―絵本ですか? 漫画ですか?―


 「さて、本日御紹介するのは……月刊ジャンプ最後の輝き! 表紙は童話チックだけど、中身はしっかり少年漫画な『テガミバチ』です!」
 「連載開始と同時に、雑誌側が大々的に売りにかかった作品だな。
 実はたまたま初掲載の号読んでたりするんだが、絵といい内容といい月ジャンのカラーとは全く別物で、劣化版週間少年ジャンプな作品が多い中、思いっきり浮いてたのをよく覚えてる」
 「そもそも画力が段違いなので、浮くのも仕方ないと思いますけど……。
 ちなみにコミックスも普通の新書サイズでありながら、三巻までカラーページ付きという破格の待遇を受けてます。前作のI'll(アイル)完結から本作開始まで二年以上経っていることから、可能な限り企画を詰め、雑誌の顔を作ろうとしたことが伺えます」
 「穿った見方をすれば――古臭いイメージの付いた月ジャンを切り捨てて、SQを創刊するため、新雑誌の顔となる作品を事前に用意した、とも考えられるがな」
 「もうっ! 裏事情知ってるわけでもないくせに、偉そうなこと言わないで下さい!
 それと、まだ作品内容に全然触れてませんよ。ほら、さっさと解説する!」
 「(こいつ、小姑キャラが完全に定着しやがったか……)
 一日のすべてが夜という不思議な国・アンバーグラウンド(以下AG)を舞台に、危険を顧みずテガミを届ける国家公務郵便配達員BEE――通称テガミバチ達の活躍を描く異世界ファンタジーだ。
 主人公の少年・ラグが、テガミバチの最高称号者『ヘッド・ビー』を目指すという王道話を軸に、彼がこの道に入るきっかけとなった青年・ゴーシュの失踪事件、『こころ』に反応して人を襲う巨大生物・鎧虫の謎、首都アカツキに連れ去られたラグの母の正体等、色々と深読み出来る要素を絡めて魅力的なストーリーを展開している。
 個々のエピソードは浪花節全開だが、マクロなストーリーは結構ヤバげなので、幅広い読者にオススメ出来る間口の広い作品と言えるだろう」
 「補足を入れると、AGは海からつながる巨大な川によって分断された三つの区域から成っており、住む区域がそのまま身分に直結しています。
 人工太陽の真下に位置し、特権階級だけが住むことを許された首都アカツキ。それを取り囲むドーナツ状の区域で、中産階級が住むユウサリ。さらにその外側に位置し、貧しい者達が細々と生きる地方・ヨダカ。これらの区域は関所を兼ねた橋でつながっていて、渡るには政府発行の通行証が必要となります」
 「この設定からして、かなり厄いよな。
 さらに補足すると、アカツキとユウサリをつなぐ橋は一本だけで、門番(ゲートキーパー)によって厳重に管理されている。また、人工太陽の恩恵が薄いユウサリ外延~ヨダカの闇の世界は、さっきもちらっと触れた鎧虫が生息する危険地帯となっていて、旅には常に危険が伴う。だからこそ、区域間を行き来するテガミバチは非常に重要な役職となるわけだが、政府の手先ってことで国民からはあまりいい印象を持たれていない」
 「これだけ地域格差が激しいと話も暗くなりがちですが、そこはそれ、主人公・ラグ君と相棒のニッチちゃんのキャラがとっても可愛いので救われています♪ と言うか、この子達いなかったら、私この作品読んでなかったかも」
 「……たまにはその『可愛い』抜きでキャラの説明はできねーのか?」
 「可愛いものは可愛いからいいんです!」
 「それ、説明になってねーぞ……。まぁいい、キャラの話が出たところで、一人ずつ紹介なぞしておこう」


―キャラクター紹介なのですよ!―


 「では、主人公のラグ・シーリング君、十二歳。
 母一人子一人でヨダカの片隅に生きていたアルビス種の少年。七歳の時、謎の一団に母を連れ去られ、『テガミ』として友人宅に配達されたという悲しい過去を持ちます。
 自分を、育ての親であるサブリナおばさんの所まで送ってくれたテガミバチ・ゴーシュに憧れ、いつか彼と母に再会することを誓い、ヘッド・ビーを目指す典型的な成長キャラ。
 主人公特権は、左眼に埋め込まれた赤い精霊琥珀の義眼の力を借りて、心弾『赤針』を撃つことが出来ること。この弾には、物に込められた『こころ』を映し出す効果があり、ストーリーの重要なキーとして使われることが多いです。
 感受性が強く、ほぼ毎回他人の心を見ては号泣します。こういう優しい子、大好きです♪
 「あの涙腺の緩さは既に一芸と化してるよなァ。
 ちなみに、心弾とは『こころ』の欠片のことで、本来はテガミバチ達の武器である『心弾銃』なしに発射することはできない。鎧虫を倒す唯一の方法は、この心弾を内部に撃ち込むことなんだが、なぜ連中が『こころ』に反応して崩壊するかは不明とされている」
 「次いで、サブ主人公のニッチちゃん。
 金色のたてがみに海色の瞳を持つ伝説の生物『魔訶』の血を引くとされる少女。見た目はラグよりさらにちっちゃい女の子ですが、黒い毛に覆われた獣の腕を持ち、足下まで延びたツインテールの髪を剣に変化させてあらゆる物を切り裂く強力な戦闘者です。
 一度、ラグによって見せ物小屋に配達されてしまいますが、自力で脱出して再会、後に彼の相棒(ディンゴ)となります。二人が再会し、共に行くことを決めるシーンは本作屈指の名場面!
 舌足らずな口調、とにかく多い言い間違い、野性味溢れる行動パターン等、子供っぽさが目立ちますが、時折ひどく大人びた意見を口にするあたり、実は見た目より年長の可能性ありです。上記の特徴も、人とは異なる種族だから、で説明ついちゃいます。
 いつも頭の上に乗っけている珍獣・ステーキとセットで、この漫画のマスコット的存在かも」
 「えらく強いマスコットだな、おい。つーか……鎧虫の首切り落とすって、どれだけ硬いんだよあの髪!
 あと、こいつの持ちネタと言えばパンツかね。育った環境からかニッチは一張羅の下に何も着ておらず、ラグの勧めでようやくパンツだけは履くようになったという経緯があるんだが、二人の絆を象徴するアイテムとしてその後何度も使われている。パンツで表される絆ってのも何だかな~って感じだが、深く考えてはいけない」
 「普通はラグが付けた名前の『ニッチ』が絆の証となるんでしょうが……どう考えてもこっちの方が目立ってますね。
 ではでは、出番は少ないけど最重要キャラなゴーシュ・スエード。ラグと出会った時は18歳で、今は23歳……の筈。
 命を賭して、幼いラグを港町キャンベルまで届けたテガミバチ。旅の間は、飽くまで配達員という立場で接していたのですが、配達終了後に本来の優しさを見せ、彼の友人となりました。
 ラグと同い年の妹シルベットがおり、車椅子生活を余儀なくされている彼女のために身を粉にして働いていましたが、首都アカツキに栄転後、謎の失踪を遂げます。果たしてその真意は?
 なお、ある事件が元で記憶の大部分を失っており、これも本作の大きな謎の一つとなっています」
 「あの事件にゃ明らかに裏があるよなァ……クックック。また、楽屋裏あたりで考察してみたいところだ。
 では名前が出たので、ゴーシュの妹シルベット・スエード。十二歳。
 初登場はラグが見たゴーシュの記憶で、いかにも寂しがりな美少女……だったんだが、五年の歳月で鍛えられたのか、ユウサリで対面した時には『車椅子の女豹』と名乗る気っ風のいいキャラと化していた。  
 借金取り(と間違えられたラグ)に啖呵を切ったり、駆け回るニッチをスカートで捕獲(!)したり、『兄は死んだの!』と言い切ったりする等、勝ち気な面が目立つが、中身はラグに近いところがあり、涙を堪えつつ兄の帰りを待ち続けていた。健気、という表現がしっくりくる娘だな。
 後にラグとニッチの家主となるが、味覚が破壊されているのか、凄まじく不味いスープを作っては二人を怯えさせている……」
 「えーと……他に誰かいましたっけ?」
 「他には、郵便館『ハチノス』の館長ラルゴ・ロイド、副館長でゴーシュの想い人のアリア・リンク、ラグの仕事仲間のコナーとザジがいる。あと、レギュラー入りするかは不明だが、4巻で出てきたDr.サンダーランドJr.もいい味出してたな」
 「あ、速達専用配達員のジギー・ペッパーさんをお忘れなく。
 二巻でゲスト出演しただけでしたが、ラグに勝るとも劣らない夢を持つすっごく格好良い方でした!」
 「あー、そんなのもいたな。しかし、ジギー・スターダストって言って通じる読者が何人いるんだろうか……」
 「どこのどなたですか、その方?」
 「いや、通じないならそれでいいんだ……はぁ~……」


―総評でございます―


 「絶妙なコンビネーションを誇る主人公二人、謎をふんだんに散りばめた物語、陰影を強調したシャープな絵柄、どれを取っても一級品! 無条件でオススメできる逸品です!
 「ホタルの場合、可愛ければ何でも無条件で勧めてる気がするのはあたしだけか……?
 ともあれ、オススメの作品なのはあたしも同じだ。ラグがテガミバチに憧れ、採用試験を受け、合格してテガミバチとして活躍するという流れをきっちり描きながら、同時に、彼を取り巻く人々の物語や、世界そのものの謎を小出しにして話に奥行きを持たせているのはポイントが高い。
 『テガミ』とはすなわち人の『こころ』であり、『テガミバチ』とは『こころ』を届ける職業である、という理念を中心に据え、それを象徴するキャラとしてラグという少年を描くことで、話が空中分解することを防いでいるのも見事だ」
 「長っ! 素直に、いい作品だ、ぐらいで済ませとけばいいのに……」
 「それじゃ書評の意味がねぇだろうよ。
 最後に、各巻に必ず掲載されている巻頭詩を紹介しておこう。実に簡潔にこの物語を表している名文だ。未読の方は、どんな作品かを想像する参考にして頂きたい」


すべてのもののなかで
先立つものは「こころ」である
すべてのものは「こころ」を主とし
「こころ」によってつくりだされる……
   (「アンバーグラウンド教典」第一掲より)




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