つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

しつこく

2006-08-25 23:59:00 | 伝奇小説
さて、なんのかんの言って読んでしまったの第633回は、

タイトル:外法陰陽師(三)
著者:如月天音
出版社:学習研究社 学研M文庫

であります。

中つ国から、世を乱さず平穏に暮らすことを強いられた、「外法使い」と称される陰陽師、漢耿星あやのこうせいは、いつものように何もせず暮らしていたが、それに付き合っているお目付け役の黒猫の羅々は退屈のあまり、以前(1巻、2巻)で起きた事件のことにかこつけて、耿星を中宮定子と藤原道長との争いに巻き込もうとする。

いやいやながらも中宮定子ていしが里下がりをしている屋敷や後宮に忍び込み、情報収集などをしていた耿星は、中宮定子と、その側につく播磨流陰陽師、蘆屋清高あしやのきよたかが、今一度権力に返り咲くために行う修法の存在などを知ることとなる。

捨て置けばよいはずのそれも、唯一友人扱いをしてくれる藤原行成がかかわっているとなれば、行成がお気に入りのお目付け役の手前もあり、また自分でも理解できない気持ち故に、蘆屋清高との対決に挑む。

えーっと……、いちおうこれでとりあえずは完結、なのかな。
ラストには「第三巻 終」とあったけど、いまのところ、続きは出てないし、いちおうの決着はつけてはいるから、終わりだと思っておこう。

さて、上記のようなこともあり、なんかこの3巻だけでなく、全体を通してみても、かなり中途半端。
個人的には途轍もなく気に入らない部分があるが、その部分は横に置いといたとしても、ダメだねぇ。

1巻だけならばそれなりによかったのだが、2巻で登場した道長の娘の彰子。作中では大姫と呼ばれているが、なんかこいつが出てくる意味があったのか、疑問。
定子も最初は重要そうに描かれてはいたのだが、巻を追っていくに従ってキャラが希薄になっていっている。

最終的には耿星と清高の物語に収斂していく……とは言いながらも、最初からこのふたりの争いをやや太めでも1冊にまとめたほうがすっきりとしたのではないかと思える。

また、3巻の展開上、クライマックスを戦闘シーンが占めているのだが、ここが無駄に長く、展開の区切りなどで1行開けて一拍おく、などの方法でメリハリをつければ読みやすくなるのだろうが、それもなく一直線に進んでいくため、読んでいて飽きてくる。
総体として中途半端な上に、クライマックスがだらだらと進んでいき、脇キャラの扱いもいまいち。

1巻がなかなか読めただけに、残念といえば残念だが、続きを買うだけ馬鹿を見るので、まぁまず手を出さないでよろしい、といっておこう。
個人的趣味の問題をきっちりと取り除いても、総評は落第。

ついでに1巻で、黒幕っぽい感じで興味をそそられた中宮定子様の扱いが何が何でも気に入らないので、これも含めると赤点通り越し、落第=この単位を落としただけで留年決定(笑)
まぁでも、ひとつだけ、いいとこも書いておこう。
1巻からもそうだったが、きっちりと歴史に沿って、その中できちんと物語を作り、キャラを動かしている、という点においてのみ、評価はできる。
道長の台頭や、伊周が起こした事件、左遷と帰郷、再度の捕縛、定子の内親王の出産などなど、知っている人間にとってはおもしろいのでね。
とは言っても、それを入れたところで、物語としてダメなら単位をやるわけにはいかんよなぁ(笑)