労働者のこだま(国内政治)

政治・経済問題を扱っています。筆者は主に横井邦彦です。

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2006-11-02 19:59:56 | Weblog
 このブログに核武装推進論者のトラックバックが寄せられて正直、困惑しております。
 
 当ブログの管理人としては、どこかちがうブログへ引っ越された方がいいとご推奨いたします。
 
 われわれは核兵器や大量破壊兵器に対して特別な見解を持っていません。
 
 核兵器で兵士を焼き殺そうが、薪(まき)を積んで兵士を焼き殺そうが、その行為が残虐で あることには変わりがなく、われわれはそのような残虐な行為(帝国主義者が行う戦争)そのものに反対しています。
 
 また核兵器を持つことが何かの抑止力になるという見解もまゆつばです。
 
 ソ連邦(われわれはこの国家を国家資本主義と規定しています)は1万発以上の核兵器を保有していましたが、核兵器はその体制の崩壊を抑止する上で何の意味もなしませんでした。まさか核兵器があと1万発あればソ連邦の崩壊は抑止できたという人はいないと思います。
 
 またアメリカ合衆国も1万発以上の核兵器を保有していますが、核兵器はベトナム戦争でアメリカの敗北を抑止する上で何の意味もなさなかった。ベトナム戦争中に何度か、劣勢な戦況を挽回する起死回生の兵器として使用が検討されたが、結局は使用できなかった。
 
 もしアメリカがあの時、ベトナムでアメリカ軍が核兵器を使用していれば、アメリカ合衆国は人類の敵となり、今頃はアメリカ合衆国という国家そのものが存在していなかったでしょう。
 
 そして核の抑止力が限定的であるがゆえに、既存の核保有国の核独占に挑戦しようという国が跡を絶たないわけです。
 
 そして、われわれはその核独占に挑戦しようという国に日本軍国主義が加わったからといって、別に、何とも思いませんよ。
 
 どうぞお好きなように。ただし、結果に対する責任は、日本軍国主義の自己責任であることをお忘れなく。われわれ労働者にしてみれば、資本の勢力が盲目となり、破滅の道を選択するのは自分の墓穴を自分で掘るようなものであり、手間が省けて大助かりというものです。(もちろんだからといって、われわれがそのようなことをそそのかしていると理解されても非常に迷惑ですが・・・)
 
 どうでしょうか、核武装推進派の方であるなら、われわれのような労働者派を相手にするのではなく、やはり核武装反対派(日本共産党とか、社会民主党とか、革共同中核派とか、革共同革マル派とかという方々)と議論した方が実りの多い結論が得られると思います。
 
  

引き返す道はありや?

2006-11-02 04:01:37 | 政治
 月も変わったことだから、ここは冷静にわれわれの思考の跡をふり返ってみよう。
 
 9月にはわれわれは安倍晋三政権が誕生しそうだということで、安倍晋三政権反対のキャンペーンをはってきた。
 
 われわれは安倍晋三をとりまく連中がろくでもない政治ゴロであったことから、安倍晋三政権をファシスト政権もしくは新日本軍国主義政権と規定した。
 
 ファシズムを極端な国家主義(国家社会主義)と規定すれば、それはその通りであろう。しかし、ファシズムにはもう一つの契機、すなわちブルジョア民主主義を専制的な暴力支配に置き換えるという側面があり、この点では安倍晋三政権は力量不足でそれを行うだけの政治的実力はないと判断した。
 
 それで、われわれは安倍晋三政権は中途半端なファシスト政権、もしくは自民党の各派閥の均衡の上に成り立つ反動的政権であると考えた。
 
 そして、外交問題では、北東アジアにファシスト政権が誕生することは、その実態はともあれ、世界の平和にとって大きな不安定要因であると考えた。
 
 われわれの危惧は政権発足直後に、北朝鮮の地下核実験実施という予想外の出来事に対する対応で、表面化した。
 
 安倍晋三政権はすぐさま、日本と北朝鮮の間の人と物の遮断に乗り出し、事実上、日本と北朝鮮の関係は途絶した。
 
 そしてアメリカ政府とともに国連安保理で北朝鮮の制裁決議の制定に乗り出し、それは全会一致で採択された。
 
 この国連安保理の北朝鮮制裁決議は41条の非軍事的措置に限定するとはされていたが、同時に「貨物検査」の実施を容認しており、アメリカが想定しているような公海上での強行乗船、強行検査という事態になれば、北朝鮮と「臨検」実施国との間の軍事衝突が懸念されることになるのでわれわれはこの点を中心に批判してきた。
 
 ところが、アメリカは途中で、方針を変更した。アメリカは公海上での「臨検」は“当分の間”実施しないことになった。
 
 このあたりから舞台は大きく回り始める。
 
 アメリカが北朝鮮との軍事衝突を避け、中国と連携して北朝鮮に圧力を加える方策を選択することによって、6ヶ国会議再開の条件が生まれ、それは10月31日に劇的に発表された。
 
 そこで問題となるのが、安倍晋三政権がこの間、北朝鮮に対してとってきた政策である。安倍晋三政権は、基本的に、北朝鮮に圧力をかけて、北朝鮮政府を瓦解させることを目的としてきた。そのために、アメリカをけしかけ「臨検」を実施させようとし、アメリカと北朝鮮の軍事衝突を誘発しようとしてきた。
 
 これは二つの点で大きな問題がある。一つはいうまでもなく、国際紛争を平和的に解決するという日本政府のこれまでの政策を180度転換させるものであるし、軍事的にであれ、非軍事的にであれ、他国の政府を転覆させてやろうという政権はこれまでに一つもなかったことである。第2には、アメリカを挑発して、アメリカに北朝鮮との戦争をやらせようとしたことである。
 
 第2の点については、われわれはこういうことはアメリカ国民の恨みと不信感を買うからやめろ、という警告を北朝鮮のミサイル発射実験のときに警告したにもかかわらず、それは行われた。
 
 そればかりか、この間、政府の要人達は、たびたび「核武装論議」なるバカげたものをやって、むしろ世界の不信感とひんしゅくを買ってきた。そして極めつけは安倍晋三による憲法第9条改正発言である。
 
 これを客観的に見れば何を血迷っているのか、という話になるが、むしろこういったことすべては国内向けに行われているのである。
 
 つまり、一方において連日のように排外主義と「北朝鮮討つべし」を煽るマスメディアがあり、他方においてそれに踊らされている人々がいる。この中で安倍晋三政権内部では北朝鮮に対して強硬な手段を訴えれば、訴えるほど自分たちの支持は増えるのではないかという、ある種の妄想が広がっている。
 
 (なお、妄想云々ということについていえば、核兵器を開発するということと、核兵器を使うということはまったく別の話であるし、ましてや北朝鮮の核ミサイルが日本に飛んでくるなどということは、現実的な根拠のある話ではない。「頭がおかしい指導者」云々ということでいえば、金正日よりも安倍晋三の方がよほどファナティック=狂信的で理性的ではない。安倍晋三は政治的指導者として必要な冷静さと思慮深さに欠けている。)
 
 このようにマスメディアやブルジョア知識人の作り出している虚像に日本中が熱に浮かされたように振り回されている間に、日本の外では別の事態が進行している。
 
 それは中国とアメリカの関係強化であり、中国とロシアの関係強化である。
 
 これはちょうど1890年にドイツのウィルヘルム2世がビスマルクを退任させ、「新航路政策」という拡張主義的な政策に乗り出したときに似ている。ウィルヘルム2世の新外交政策によって、ビスマルクが長年かけて作りあげてきたフランス包囲網は解体し、英・仏・露のドイツ包囲網(三国協商)へと転化して、第一次世界大戦の遠因になったように、米・露・日の中国封じ込め政策がいつの間にか、米・中・露・韓の日本封じ込め政策に転化する可能性を秘めている。(可能性というよりも、事態ははっきりとそういう方向に向かっている。)
 
 包囲していたはずのもの(ドイツ)がいつの間にか逆に包囲されてしまったという“外交革命”の背後には、列強の利害が激しく衝突する帝国主義の時代という歴史的な背景があったが、現在でもアジアでの覇権をめぐって妄想をたくましくしている連中が安倍晋三政権のまわりにはごろごろいるし、アジアの盟主日本というのは、ひょっとすると、日本資本主義自身の要求なのかも知れないのである。

 列強の利害が衝突する問題では、自国の利益に固執しようというのが安倍晋三政権の特徴であるので、とうぜん何かあるたびに日本の敵はどんどんと増えていくことになる。
 
 こういう事態は、実は、安倍晋三政権が誕生する前からわれわれはある程度予測していたが、安倍晋三政権が誕生してわずか一ヶ月ほどの間にそれが顕在化してしまうということまでは想定していなかった。
 
 そういう点では、時代の流れは急速であり、時代の流れから完全に取り残されている日本資本主義は急速に、帰れない河を渡りはじめているのかも知れない。