私は この家の小さな畑に 今のところ住んでいる虫
といっても まだ幼虫ですが…。
今のところと あえて申しましたのには
訳がります。
今日は 比較的穏やかな日和でした。
それでも昨日の強い風にあおられ
この家の銀杏の木はと申しますと
一日前とは大違いの姿
青い空にただただ まっすくぐに伸びた幹だけとなりました。
働き者の この家の主人が落ち葉をみんなきれいに掃き清め
もう黄葉の気配は残っていません。
働き者のご主人につられてでしょうか
奥さんも久しぶりに畑に出てきました。
畑に人が出てくるということは
私たちにとってはある意味恐怖です。
あろうことか 私たちの住み家である
丹波の黒豆の所までやってきて
豆を収穫しようかどうしようか
迷っているような様子でした。
私たちが この豆を住み家に選んだのには理由があります。
この畑の主は 無農薬を旨としていて消毒をしません。
それを知っていた私たちの両親は ここで生きていくよう
たくさんの兄弟を残してくれたのです。
夏 人にとってビールがおいしい季節
私たちは生まれ 実ってきた柔らかいおいしい豆を
一斉に食べ始めました。
この枝の豆だけを分けてもらおう
最初はそう思っていたのですが
何と言っても兄弟が多すぎて…
一匹でも多く生き残って
次の世代へと種を伝えていかなくてはならない
その両親の願いを思うと
人間には申し訳ないと思いながらも
私たちは どの枝もどの枝も
食い荒らす形になってしまいました。
記憶によると消毒をしない主は
おつまみとしての枝豆は夏の間
たった一度しか口にできなかったように思います。
もちろん わたしたちがほとんどの鞘に住んでいたからです。
それからは 私たちは安心して好き放題してきました。
主は諦めたとばかり思っていました。
私たちは このまま 鞘の中でおいしい豆を食しながら
暖かい鞘の中で冬を越せるものと
信じて疑わなかったのです。
それなのに あ~何と言うことでしょう。
鞘をひとつひとつ丁寧に開きながら
私たちが口にしていない豆があるかどうか確認し
収穫をし始めたのです。
諦めてなんかいなかったのですね。
健康な手付かずの豆は数少なかったのですが
なんとかこの程度は収穫できたようです。
少しほっとしたような気もしましたが
ほんの一瞬のことでした。
すぐさま兄弟から恐ろしい伝言が届きました。
鞘を開け 私たちを見つけると
その鞘の破片で私たちを潰していくとのこと
ただその時かすかに 「ごめんね」という心音が伝わってくるらしい。
潰しておいて ごめんねとは人間とはどうも解せない生き物だ。
そんな情報が あちこちに飛び交っているとき
さらに追い打ちが…
夫婦の会話がきこえて来たのだ。
「鞘の中で たくさんの虫が一杯生きているよ。カメムシの匂いもするから
まだカメムシも生きてるのかしら」
「このまま 枯れるのを待つより燃やすか ごみ処理場へ運んだ方がいいかな」
燃やす? 焼き殺されるってこと?
大変! みんな早く逃げなきゃ!
逃げる? どこへ? どうやって?
私達には この寒い中行くところなどありません。
カメムシのように飛んだりする羽もありません。
春にならないとだめなんです。
あ~ 神様
神様はどうして私たちの様な生き物をお創りになったのです。
どうして 生まれてすぐ立ち上がって歩くことができる子牛や子馬のような力を
与えて下さらなかったのか…。
人が作ったものに手を出したから?
そうしなきゃ生きていけなかったのに…。
今日はそれだけで 一端終わったようです。
人から伝わってきた ごめんね とはどういうことだったのだろう?
その問いの答えは簡単に 見つかりそうもありません…。
たくさんの兄弟が今日も別れをつげた。
兄弟たちは あの静かな優しい でも物悲しい ごめんねをどう受け止めたのだろう。
両親が食物連鎖について語ってくれたのを思い出した。
私たちも人も これでよかったと満足して目を閉じるなんてことできるのだろうか?
明日がどうなるかなんて 誰にもわからないよ。
どう生きたか それが大切なような気がするのですが…。
命あるもの みんな同じじゃないのかなあ。
今日の出来事で 何だか少し興奮してしまいましたが
もうみんな静かに眠りにつき始めました。
明日もまた命あれば 残った兄弟たちと仲良く歌ったり
長い冬眠中 どんな楽しい夢を見てみたいかなど
みんなで話し合ったりしよう。
ひとも私たちも 与えられたものを大事にして生きる。
これかなあ・・・・・。
おやすみなさい。畑の持ち主もきっと今日は疲れたでしょうね。
いつか人とも話ができたら い い な zzz-
といっても まだ幼虫ですが…。
今のところと あえて申しましたのには
訳がります。
今日は 比較的穏やかな日和でした。
それでも昨日の強い風にあおられ
この家の銀杏の木はと申しますと
一日前とは大違いの姿
青い空にただただ まっすくぐに伸びた幹だけとなりました。
働き者の この家の主人が落ち葉をみんなきれいに掃き清め
もう黄葉の気配は残っていません。
働き者のご主人につられてでしょうか
奥さんも久しぶりに畑に出てきました。
畑に人が出てくるということは
私たちにとってはある意味恐怖です。
あろうことか 私たちの住み家である
丹波の黒豆の所までやってきて
豆を収穫しようかどうしようか
迷っているような様子でした。
私たちが この豆を住み家に選んだのには理由があります。
この畑の主は 無農薬を旨としていて消毒をしません。
それを知っていた私たちの両親は ここで生きていくよう
たくさんの兄弟を残してくれたのです。
夏 人にとってビールがおいしい季節
私たちは生まれ 実ってきた柔らかいおいしい豆を
一斉に食べ始めました。
この枝の豆だけを分けてもらおう
最初はそう思っていたのですが
何と言っても兄弟が多すぎて…
一匹でも多く生き残って
次の世代へと種を伝えていかなくてはならない
その両親の願いを思うと
人間には申し訳ないと思いながらも
私たちは どの枝もどの枝も
食い荒らす形になってしまいました。
記憶によると消毒をしない主は
おつまみとしての枝豆は夏の間
たった一度しか口にできなかったように思います。
もちろん わたしたちがほとんどの鞘に住んでいたからです。
それからは 私たちは安心して好き放題してきました。
主は諦めたとばかり思っていました。
私たちは このまま 鞘の中でおいしい豆を食しながら
暖かい鞘の中で冬を越せるものと
信じて疑わなかったのです。
それなのに あ~何と言うことでしょう。
鞘をひとつひとつ丁寧に開きながら
私たちが口にしていない豆があるかどうか確認し
収穫をし始めたのです。
諦めてなんかいなかったのですね。
健康な手付かずの豆は数少なかったのですが
なんとかこの程度は収穫できたようです。
少しほっとしたような気もしましたが
ほんの一瞬のことでした。
すぐさま兄弟から恐ろしい伝言が届きました。
鞘を開け 私たちを見つけると
その鞘の破片で私たちを潰していくとのこと
ただその時かすかに 「ごめんね」という心音が伝わってくるらしい。
潰しておいて ごめんねとは人間とはどうも解せない生き物だ。
そんな情報が あちこちに飛び交っているとき
さらに追い打ちが…
夫婦の会話がきこえて来たのだ。
「鞘の中で たくさんの虫が一杯生きているよ。カメムシの匂いもするから
まだカメムシも生きてるのかしら」
「このまま 枯れるのを待つより燃やすか ごみ処理場へ運んだ方がいいかな」
燃やす? 焼き殺されるってこと?
大変! みんな早く逃げなきゃ!
逃げる? どこへ? どうやって?
私達には この寒い中行くところなどありません。
カメムシのように飛んだりする羽もありません。
春にならないとだめなんです。
あ~ 神様
神様はどうして私たちの様な生き物をお創りになったのです。
どうして 生まれてすぐ立ち上がって歩くことができる子牛や子馬のような力を
与えて下さらなかったのか…。
人が作ったものに手を出したから?
そうしなきゃ生きていけなかったのに…。
今日はそれだけで 一端終わったようです。
人から伝わってきた ごめんね とはどういうことだったのだろう?
その問いの答えは簡単に 見つかりそうもありません…。
たくさんの兄弟が今日も別れをつげた。
兄弟たちは あの静かな優しい でも物悲しい ごめんねをどう受け止めたのだろう。
両親が食物連鎖について語ってくれたのを思い出した。
私たちも人も これでよかったと満足して目を閉じるなんてことできるのだろうか?
明日がどうなるかなんて 誰にもわからないよ。
どう生きたか それが大切なような気がするのですが…。
命あるもの みんな同じじゃないのかなあ。
今日の出来事で 何だか少し興奮してしまいましたが
もうみんな静かに眠りにつき始めました。
明日もまた命あれば 残った兄弟たちと仲良く歌ったり
長い冬眠中 どんな楽しい夢を見てみたいかなど
みんなで話し合ったりしよう。
ひとも私たちも 与えられたものを大事にして生きる。
これかなあ・・・・・。
おやすみなさい。畑の持ち主もきっと今日は疲れたでしょうね。
いつか人とも話ができたら い い な zzz-