伝説の歌番組・夜のヒットスタジオを語る

伝説の音楽番組「夜のヒットスタジオ」の22年間の足跡を通じて、日本の歌謡界が最も輝いていた時代を振り返ります。

夜のヒットスタジオ・歌手別出演履歴<12> 南沙織/天地真理

2007-04-07 | 夜のヒットスタジオ/歌手別出演履歴
「夜ヒット出演履歴」、今回は70年代のアイドル系譜を基礎付けた「アイドル三人娘」(小柳ルミ子・南沙織・天地真理)のうちの、南・天地の2人の出演履歴を振り返ります。

天地真理は、1971年10月、フォーク調の「水色の恋」で歌手デビュー。それよりも前にデビューした小柳ルミ子と並ぶナベプロ一押しの新人として売り出されたこともあり、夜ヒットにもデビューして1ヶ月で初出演となりました。その後も、天地真理の方は1972~1974年にかけて、「真理ちゃんブーム」ともいうべき国民的人気を獲得。それを反映するかように当時の夜ヒットでも1ヶ月に1度はおろか2度も出演することもしばしばあるなど、この時代の夜ヒットでもまさしく「看板スター」といえる存在でした。しかし、1973年に発売した「恋する夏の日」で人気は頭打ちとなり、以降はシングルを発売する毎に売り上げが減少、そして1975年にはNHK紅白にも落選、翌1976年には体調不良のため芸能活動を一時休業、と一気にスターダムから転がり落ちるような形で一時表舞台から姿を消してしまいました。
その後、1979年に再び芸能活動を再開しますが、既にそのときには彼女に対する世間の目は、こうやって言うのも失礼なのかもしれないですが「過去の人」扱い。夜ヒットにも「愛・つづれ織り」で、1976年8月の「愛の渚」以来3年ぶりに顔を出したものの、ヒットにはつながらず、以降番組に出演することはありませんでした(ただ、晩期の「SUPER」の時代に1回だけご対面のゲストとして呼ばれたことはあるらしいですが・・・)。この回は現在の再放送のサイクルからは版権等の問題ではずされていますが、以前のサイクルではフルで放送されており、自分も見たことはありますが、やはり彼女だけ、何か「現役歌手」としてのオーラが乏しかったような・・・という感じがします。たまたまこの回にこの当時人気No.1の女性アイドルとしてその地位を括弧たるものとしていた山口百恵が貫禄のステージングを展開していただけに余計にそう感じたのかもしれませんが・・・。

他方、南沙織は1971年6月に「17才」でデビューをしましたが、当時の所属事務所が「ミュージックカプセル」なる弱小事務所であった(※のちに彼女はバーニングプロに移籍)ことも不利に働き、天地とは逆になかなか夜ヒットに出演することができず、ようやく2曲目の「潮風のメロディー」で同年11月に初出演となりました。
天地のようないわば一種ともいうべきブーム華々しい人気はなかったものの、当時の大学生・高校生層に堅い支持を獲得し、安定した人気を誇り、1970年代後半には「人恋しくて」や「悲しい妖精」「春の予感」といった優れた作品を歌うチャンスにも恵まれ、ファン層を拡大してゆきました。夜ヒットへの出演に関してもナベプロ所属の天地や小柳ルミ子とは異なり1ヶ月に1度、というペースではなかったですが、当時ナベプロに次いで番組内で影響力を持っていたバーニングに移籍したことも有利に働き、大体2ヶ月に1回のペースで出演枠を確保し続けました。
ところが、1978年秋に彼女は芸能活動の一切を「学業」を理由に突然引退(写真家・篠山紀信との結婚を発表したのは翌1979年のことでした)。夜ヒット最終出演は番組名物ともいうべき「サヨナラ企画」が設けられ、この回のOPメドレーではトリでデビュー曲「17才」を歌い、本編では最終シングル「MS(ミズ)」を披露した後に、この回に出演していた布施明・五木ひろし、そして同期の小柳ルミ子を中心とした他の出演歌手一同が「マイ・ウェイ」を歌い、安定したアイドルとしての地位をあえて捨て、新たな人生の一歩を歩み出そうとする彼女を華々しく送り出しました。特にこの最終出演での小柳ルミ子の号泣ぶりはかなり印象的でした。同期デビュー組の惜しまれる引退、小柳自身にも万感去来するものがあったのだろうと思います。このシーンも番組史に残る名シーンとして未だに語り草となっています。

ざっとこの2人の歌手としての軌跡をこうやって振り返ってみても、天地真理と南沙織、この2人の軌跡は驚くほどに好対照だったというのが何とも興味深いところではあります。夜ヒットを通じてみても、あれだけの国民的人気を集め、一時は番組の「顔」的存在として貢献していた天地の方は自然消滅的に番組出演をフェードアウトしていった一方で、地味なイメージがあった南沙織の方が、息長く番組出演を続け、引退時には「サヨナラ」企画が用意された、という点一つとっても、その好対照ぶりは歴然としているように思います。

◆南沙織-初出演:1971年11月1日(第157回)/最終出演:1978年9月25日(第516回)、出演回数:54回
01 1971/11/01(157) 潮風のメロディー
02 1971/11/15(159) 17才
03 1971/12/13(163) 潮風のメロディー
04 1972/02/14(172) ともだち
05 1972/04/24(182) ともだち
06 1972/05/15(185) 純潔
07 1972/06/26(191) 純潔
08 1972/08/28(200) 純潔
09 1972/09/11(202) 哀愁のページ
10 1972/10/09(206) 哀愁のページ
11 1972/11/20(212) 哀愁のページ
12 1972/12/11(215) 哀愁のページ
13 1973/01/22(221) 早春の港
14 1973/02/26(226) 早春の港 
15 1973/05/14(237) 傷つく世代
16 1973/06/18(242) 傷つく世代
17 1973/07/23(247) カリフォルニアの青い空
18 1973/08/27(251) 色づく街
19 1973/10/29(261) 色づく街
20 1973/12/17(268) ひとかけらの純情
21 1974/02/25(277) バラのかげり
22 1974/04/22(285) バラのかげり
23 1974/06/10(292) 夏の感情   
24 1974/07/22(298) 夏の感情
25 1974/10/07(309) 夜霧の街
26 1974/11/04(313) 夜霧の街
27 1975/01/13(323) 女性
28 1975/01/27(325) 女性
29 1975/04/28(338) 想い出通り
30 1975/06/16(345) 想い出通り
31 1975/08/11(353) 人恋しくて
32 1975/10/13(362) 人恋しくて
33 1975/12/01(369) ひとねむり
34 1976/01/26(377) ひとねむり
35 1976/03/01(382) 気がむけば電話して
36 1976/04/26(390) 青春に恥じないように
37 1976/06/07(396) 青春に恥じないように
38 1976/08/09(405) 哀しい妖精
39 1976/10/18(415) 哀しい妖精
40 1976/11/29(421) 愛はめぐり逢いから
41 1976/12/20(424) 哀しい妖精
42 1977/01/10(427) 愛はめぐり逢いから
43 1977/02/14(432) ゆれる午後
44 1977/03/21(437) ゆれる午後
45 1977/04/25(442) ゆれる午後
46 1977/07/04(452) 街角のラブソング
47 1977/08/01(456) 街角のラブソング
48 1977/10/31(469) 木枯しの精
49 1977/12/05(474) 木枯しの精
50 1978/01/16(480) 春の予感-I've been Mellow-
51 1978/02/20(485) 春の予感-I've been Mellow-
52 1978/04/03(491) 春の予感-I've been Mellow-
53 1978/07/03(504) MS(ミズ)
54 1978/09/25(516) MS(ミズ)

◆天地真理-初出演:1971年11月1日(第157回)/最終出演:1979年12月10日(第579回)、出演回数:51回
01 1971/11/01(157) 水色の恋
02 1971/12/13(163) 水色の恋
03 1972/01/10(167) 水色の恋
04 1972/02/07(171) ちいさな恋
05 1972/03/06(175) ちいさな恋
06 1972/05/08(184) ひとりじゃないの
07 1972/07/03(192) ひとりじゃないの
08 1972/08/28(200) 虹をわたって
09 1972/09/25(204) 虹をわたって
10 1972/10/23(208) 虹をわたって
11 1972/11/20(212) 虹をわたって
12 1972/12/04(214) ふたりの日曜日
13 1972/12/25(217) ふたりの日曜日  
14 1973/01/15(220) ふたりの日曜日
15 1973/03/05(227) 若葉のささやき
16 1973/05/21(238) 若葉のささやき
17 1973/06/18(242) 恋する夏の日
18 1973/07/02(244) 恋する夏の日
19 1973/10/01(257) 恋する夏の日
20 1973/10/15(259) 空いっぱいの幸せ
21 1973/12/03(266) 空いっぱいの幸せ
22 1973/12/24(269) 空いっぱいの幸せ 
23 1974/01/07(270) 空いっぱいの幸せ
24 1974/01/28(273) 恋人たちの港
25 1974/02/18(276) 恋人たちの港
26 1974/03/18(280) 恋人たちの港
27 1974/04/08(283) 恋人たちの港
28 1974/05/06(287) 恋人たちの港
29 1974/05/27(290) 恋と海とTシャツと
30 1974/06/24(294) 恋と海とTシャツと
31 1974/07/29(299) 恋と海とTシャツと
32 1974/08/26(303) 思い出のセレナーデ
33 1974/10/14(310) 思い出のセレナーデ
34 1974/11/04(313) 思い出のセレナーデ
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36 1974/12/23(320) 木枯らしの舗道
37 1975/01/13(323) 木枯らしの舗道
38 1975/03/10(331) 木枯らしの舗道
39 1975/03/31(334) 愛のアルバム
40 1975/04/28(338) 愛のアルバム
41 1975/05/19(341) 初めての涙
42 1975/06/30(347) 初めての涙
43 1975/07/28(351) 初めての涙
44 1975/08/25(355) さよならこんにちは
45 1975/10/06(361) さよならこんにちは
46 1975/12/15(371) 夕陽のスケッチ
47 1976/01/05(374) 夕陽のスケッチ
48 1976/02/09(379) 夕陽のスケッチ
49 1976/05/03(391) 矢車草
50 1976/08/02(404) 愛の渚
51 1979/12/10(579) 愛・つづれ織り

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2 コメント

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真理ちゃんブーム (goo)
2007-04-08 23:29:00
ありましたね。真理ちゃんブーム!その当時は私は幼稚園児でしたがTBSでは真理ちゃんシリーズなる30分番組があったり、天地真理の商品(自転車、人形、トランプ)などがあったと思います。姉が当時、天地真理のファンだったので覚えてます。でも私は南沙織と麻丘めぐみのほうを応援していました。(懐かしい)

しかし近年の評価は南沙織がすごく高く、天地真理は容貌の変化などから全く評価されないのは気の毒ですね。そういった意味でも天地真理の当時の映像はもっと一般に見れる環境になって欲しいですね。

南沙織の出演履歴で「17才」を二回めの出演で歌っているようですが新人賞(歌謡大賞)の絡みだったのでしょうか?

日本歌謡大賞の初代司会はマエタケだった (resistance-k)
2007-04-09 02:52:27
71年11月15日放送は当時の新聞縮刷版によれば「おめでとう歌謡大賞」といった見出しが出ています。
夜ヒットの場合、歌謡大賞・FNS歌謡祭の開催時期になると、それぞれ部門賞や大賞を受賞した歌手が出るときには、新曲ではなくその大賞授賞式において披露した楽曲を優先して紹介していたことがその後も多かったことを考えると、南沙織の場合も、この年の歌謡大賞授賞式で披露した「17才」をこの「歌謡大賞特集」の回で披露している可能性がかなり高いように思われます。

前年の70年11月9日放送についても新聞ラテ欄の見出しが「おめでとう歌謡大賞」と題されていたことから、前田武彦司会の時代には、歌謡大賞授賞式の総合司会も彼が担当していた(1970~1972年まで)こともあり、毎年歌謡大賞開催の時期にはほぼ全編を「歌謡大賞」シフトで曲目・出演者の編成がなされていたみたいです。授賞式の司会役が担当している歌番なわけですから、他の歌番以上に受賞者を呼びやすかったんじゃないでしょうかねえ。

後のFNS歌謡祭の場合も、芳村真理が同音楽祭司会になってから(1977~1986年)は全編FNS歌謡祭関連ではないにせよ、12月になると部門賞受賞者が毎回2組ずつぐらいの枠で出演していて、必ず受賞者の曲目の上には「'(年号)FNS歌謡祭 (部門)賞受賞曲」という風に特別にテロップが追加されていましたよね、確か。

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