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現代アート道楽の日々。

首都圏の展覧会の感想など。しばしば遠征。【不定期更新】

霧島アートの森(樹林ゾーン編)

2006-05-27 | アート感想@遠征
続いて、樹林ゾーンの作品を鑑賞。マイナスイオンを浴びながら、木々の間に潜む作品を探すのが楽しい♪

このゾーンで最も気に入ったのが、アントニー・ゴームリー《インサイダー》(写真)。針金のように細い人体が、林の中に隠れるように5体立っている。遠くからだと木々にまぎれてしまい、探すのに時間がかかったけど、なんとか全員と遭遇。

このほか、神殿を思わせるような白い壁が円形に並んでいて、その隙間から森を覗き見るカサグランデ&リンターラの《森の観測所》や、葉っぱの形をしたステンドグラスを下から眺めるタン・ダ・ウの《薩摩光彩》も良かった。

最後に、アートホールのカフェでランチをとり、霧島アートの森を後にした。

霧島アートの森(野外広場編)

2006-05-27 | アート感想@遠征
続いて、野外広場の作品を鑑賞。

アートホールを出ると、正面にジョナサン・ボフロフスキーの《男と女》がそびえ立つ。この黒く、巨大な人の形の板は、2枚の板が十字に組み合わさったもので、正面からだと女性、横からだと男性の形に見える。近づいてみると、意外に大きいのにビックリ。

今回、私が最も気に入った作品が、ダニ・カラヴァンの《ベレシート(始めに)》。高台の広場から谷に突き出すように、コールテン鋼の四角い筒(歩廊の橋)が設置されている。歩廊の中に入ると、コールテン鋼に設けられたスリットから光が入り込み、内部に光のラインが描かれている。歩廊の先端は、壁一面が強化ガラスになっていて、ここから霧島の自然を一望。地上から約8.5メートルの高さがあって良い眺め。さらに、ガラスにはヘブライ語と日本語で「はじめに神は天地を創造された」との文字が……。壮大なスケールを感じさせる作品だった。

この他、アートなのか遊具なのか区別がつかない牛嶋均の《キリシマのキチ》や、タイトルで使い方が一目瞭然のチェ・ジョンファの《あなたこそアート》(写真)が印象に残った。

次の記事に続く。

霧島アートの森(屋内編)

2006-05-27 | アート感想@遠征
久々の九州遠征で、霧島アートの森へ行ってきた。

メインゲートでは、草間彌生の《シャングリラの華》がお出迎え(写真)。

まず、早川邦彦設計のアートホールにて、屋内作品を鑑賞。

コレクション展 パートI

ここは屋外作品がメインなんだけど、20点ほど展示されていた屋内作品もなかなかの充実ぶり。

ジェームズ・タレルの《NHK-lite》は、光を使ったインスタレーション。暗室に入ると、35センチ×45センチの窓から柔らかな光が洩れている。この光は、テレビモニターから出る光を反射したもので、明るくなったり暗くなったりするのを見ていると、なんだか気持ちが落ち着いてくる。解説によると、日本の公共放送をイメージした作品とのこと。

村上隆の《フィジカル・パイ》は、ボウリング球や砲丸をドーナツ型運動マットに載せ、パイに見立てた作品。解説によると、日本の教育のはらむ危険性や、大衆文化の持つある種の凶暴性などを表しているらしい。豊田でも観たけど、この時期の村上作品は、非常にシャープで面白いと思う。

この他、ジェニー・ホルツァーによる文字が流れるLED作品《ブルー》や、阿仙(アー・シャン)による磁器の彫像に花柄の絵付けをした《チャイナ・チャイナ・シリーズ 胸像no.47》が印象に残った。また、水戸で観たオノ・ヨーコの《絶滅に向かった種族2319-2322》にも再会。

7月9日まで。その後、「明和電機」展が開催予定(7/21~9/3)。

次の記事に続く。

「こども」展2つ@豊田市美

2006-05-05 | アート感想@遠征
豊田市美術館に行ってきた。この日は無料入館日だったけど、お客さんの入りはそこそこで、じっくりと作品を観ることができた。

開館10周年記念 VISION II 「The Child-内なるこども」

「こども」をモチーフにした国内コレクション約80点による企画展。青木繁オーギュスト・ルノワールなど20世紀初頭の絵画から、加藤泉播磨みどりなど今世紀の作品まで、約100年の美術史を「こども」というテーマで概観できる展覧会でもある。

会場に入ると、荒木経惟の写真《さっちんとマー坊》シリーズが目に入ってくる。活き活きとした子どもの表情を見ていると、あの頃の感覚がよみがえってくるような気がした。この展覧会を象徴するような作品かも。

続いて、木村伊兵衛岸田劉生土門拳高松次郎パウル・クレーエドヴァルト・ムンク古賀春江など、ビッグネームの作品が並ぶ。私が好きなクリスチャン・ボルタンスキーの《聖遺物語(プーリムの祭り)》もあったけど、明るい場所に展示されていたのがちょっと残念。

そして、シメはお待ちかねの現代アート。1980年~94年に制作された奈良美智作品を、7点まとめて観られたのが良かった。あと、豊田市美術館の宝(?)会田誠の《あぜ道》もあり。

豊田市美術館にて、6月18日まで(月曜休館)。


秘密基地-現代美術とこどもをテーマにしたコレクション展

前述の「The Child-内なる子ども」展にあわせたコレクション展。「秘密基地」というタイトルのとおり、あの頃のワクワク感を思い出させるような展覧会。

なかでも最初の展示室が素晴らしかった。室内から伸びたレールに誘われるように展示室に入ると、大量の銃のレプリカが整然と並んでいて異様な光景(榎忠《秘密基地 You're on call at the “HUSH-HUSH”》)。その周囲を線路が取り囲み、奇妙な電車が3台停まっている(ヤノベケンジ《サヴァイバル・システム・トレイン》)。そして、そして壁を飾るのが丸亀で観た大岩オスカール幸男の《エイジアン・ドラゴン》。もう、この部屋だけでお腹いっぱい。冒頭の写真は、この展示室を上から眺めた様子。

このほか、コブラ・タテゴトアザラシ・イワシクジラなどの皮で作られたカラフルなランドセルが並ぶ、村上隆の《R.P.(ランドセル・プロジェクト)》や、回転型球形ジャングルジムに小さな写真を大量に貼った、小沢剛の《グローブ・ジャングル》が印象に残った。あと、中原浩大の《無題(レゴ・モンスター)》を上から覗けるのも面白い。それから、須田悦弘の《雑草》も、とある場所にあり。

私にとっては、企画展よりこっちの方が面白かったかも。それにしても、コレクションだけでこれだけの展覧会ができるとは……恐るべし、豊田市美術館。

豊田市美術館にて、6月18日まで(月曜休館)。

鴻池朋子展@大原美術館・児島虎次郎記念館

2006-05-04 | アート感想@遠征
続いて、倉敷アイビースクエア内にある児島寅次郎記念館へ。

MOTで観た《第4章 帰還-シリウスの曳航-》を皮切りに、森美術館で観た《第3章 遭難》、ミヅマで観た《第2章 巨人》と、鴻池朋子は4つの絵画による“物語”を逆順で発表してきたけど、今回ついに《第1章》を発表!しかも、既発表の3作品も並べて展示されていて壮観だった。

チラシや鴻池朋子展HPで公開されているイメージは、《第1章》の中央付近を切り取ったほんの一部(以下ネタバレのため、一部伏字)。○が舞うなか、薄暗い○に囲まれた○の上に○○の塊が浮遊している。その○○の塊から○。○のようなものが生えている、もしくは○。○が○○の塊に吸収されているようにもみえる。これから起こる“物語”を予感させるとともに、“物語”の終結も表現しているような絵画だった。

1章~4章の順の“物語”なんだけど、逆順でも“物語”は成立しそうだし、1章と4章がつながって環状の“物語”になっているようにもみえる。残念だったのは、スペースの関係で1章と2~4章とでL字型に展示してあったこと。正方形の展示室を使って、四方の壁にそれぞれの絵画を展示すれば、もっと“物語”の世界に浸れる展示になったのではないかと感じた。

このほか、絵本『みみお』の原画もこちらで展示。

さて、前の記事でちらっと書いた『Chapter #0』なんだけど、2会場に展示された作品すべてと倉敷の街全体を包み込む第0章の作品という設定で、配られた地図を頼りに倉敷の街を観客が探索するというもの。地図は作家本人による細かい描きこみだけど、道の形を除くと実際の街とは全く別のものが描いてあり、まさにパラレルワールドといった感じ。この地図を頼りに倉敷の街を歩くと、街が全く別の世界に見えてくるよう。なかでも阿知神社と倉敷貯金箱博物館がオススメ。

このほか、工房Ikukoでも鴻池朋子個展『阿知に不時着』も開催していた(こちらは5月7日終了)。以前、ミヅマで観たインクジェットのマルチプルなどを展示。

大原美術館(倉敷) 有隣荘(平成18年春の特別公開)・児島寅次郎記念館にて、5月28日まで(月曜休館)。

鴻池朋子展@大原美術館・有隣荘

2006-05-04 | アート感想@遠征
倉敷の大原美術館に行ってきた。

鴻池朋子 第0章 -世界はいつも密やかで 素晴らしく 謎めいている-

大原美術館本館から川を挟んで向かい側にある有隣荘(大原家旧別邸)と、倉敷アイビースクエア内にある児島虎次郎記念館で行われている特別展。有隣荘の公開は年2回だけで、昨年春は「会田誠・小沢剛・山口晃」展を開催。「歴史的な建物+現代アート」って、なかなか刺激的な組み合わせ。

まず有隣荘へ。こちらの展示は、鴻池朋子が4つの絵画(後述)で描いた“物語”から抜け出してきた狼たちが、巨大なオブジェとなって家中に棲み付くといったもの。1階洋間、1階和室、2階和室の3部屋で、複数の作品によるインスタレーション作品を展示。

1階洋間は《幾つもの森を抜け やがて地上を照らし出す》という展示。部屋の中央には、全身鏡張りの巨大な狼が力強く歩く姿がある。その狼の後ろ足を見ると、脱皮した皮を引きずるように、もしくは狼たちが鏡張りの狼にしがみつくかのように、何頭もの狼の毛皮が鏡張りの狼の足元から後方に伸びている。部屋全体を眺めると、温室や暖炉などに、鏡の破片が重なり合わないように敷き詰められていて、鏡張りの狼のイメージを増幅させているかのよう。

1階和室は《風蕭蕭と窓を鳴らし 愁雨凄凄たる夜》という展示。まるでナイフの雨が降っているかのように、部屋全体に透明プラスチック製のナイフがぶら下がっている。床には鳥の巣のようなもので縁取りされた楕円形のスクリーンがあって、おそらくMOTで観たものと同じ鉛筆画アニメーション(12分)を映写。

2階和室は《月はしばらく雲に覆われる》という展示。畳の上には苔のようなものが敷かれていて、その上にはMOTで観た《第4章 帰還-シリウスの曳航-》に出てきた巨大な狼たちの玉が!かなりインパクトのある作品だった。ディティールも凝っていて面白い。

有隣荘の窓から外を見上げると、煙突や木に腰掛けた下半身だけの子供の姿が!さすがにこれにはビックリ。これは《わが家の瞳孔のうちにひそむもの》という作品。私は5体見つけたけど、全部で何体あるんだろうか?

このほか廊下などに、アニメーションドローイングや《Chapter#0》(後述)の原画の展示もあり。

続く。

もうひとつの楽園@まるびぃ

2006-03-04 | アート感想@遠征
片町から徒歩で移動し、金沢21世紀美術館へ。実に5回目のまるびぃ。

もうひとつの楽園

欧米のアートやデザインという概念に収まりきらない日本の「工芸」について、その現代的価値を問いかける展覧会。出展作品のほとんどは「アート」作品なんだけど、多様な素材が用いた、工芸的な質感を持つ作品ばかりが集められている。

今回、最も印象に残ったのは、隈研吾のディレクション、岩井俊雄原研哉深澤直人のコラボレーションにより、「茶室」を現代的に解釈した《T-room プロジェクト》。

最初に“yoritsuki”(寄り付き)として、深澤直人の《ISHI》が置かれている。これは河原の石を21倍に拡大したイスだけど、座りたくなるような形をしていて思わず休んでしまった。

続いて“chumon”(中門)をくぐり、原研哉の《TSUKUBAI(蹲踞)》を観る。「蹲踞」は茶客が手を洗う鉢のことだけど、ここでは、天井から降りてきた水玉が掛樋を転がり、最後にはすり鉢状の大皿の中をぐるっと回って、中央の四角い穴から下に落ちる。水玉の動きが面白くて、しばらく目が釘付けになってしまった。

そしていよいよ隈研吾の《t-room》へ。白い風船状の物体がつながったカマクラようなもので、息をするようにモコモコ動いている。中に入ると、岩井俊雄による《LEDライティング&サウンド》が幻想的な雰囲気を一層盛り上げていた。でも、この茶室の本尊とも言える《t-server》のあまりにも現代的な姿に思わず絶句……。

このほか、ギャラリーの壁を鏡のようにツルツルになるまで磨き上げた嵯峨篤の《cube on white / white on cube》や、村山留里子による高い天井の展示室にそびえ立つ巨大パッチワーク《Unthitled》が印象に残った。

3月5日まで(会期終了)。


今回、ようやくミュージアムリンク・パスのスタンプが揃い、オリジナルのトートバッグとマグカップ(写真)をゲット。無料、しかも割引付きとは思えないほど豪華な賞品だった(それ以上に交通費がかかっているのは置いといて……)。

直島旅行記(終章)

2005-12-24 | アート感想@遠征
前の記事の続き。

この日はちょうどなおしまアートマーケットが開催されていたので、家プロジェクト鑑賞の合間に覗いて回る。一見、普通のフリーマーケットだけど、出展されていた工芸品、家具、グッズ、アート作品などのレベルが総じて高く、さすがは直島。あと、角屋駐車場会場で売られていた「たこめし」や「たこ天」も、タコが柔らかくて美味だった。写真は、南寺グラウンド会場の様子。

3年前は寂しい集落だった本村地区も、少しずつ様変わりしてきた。関東から移り住んだ方が始めたカフェまるやのほかに、女性専用の民宿おやじの海も新たにオープンしていた。アートには街を変える力があることを実感。

再びバスに乗って宮ノ浦港に移動し、まちの案内所で土産物を物色。まだ少し時間があったので、向かいの007「赤い刺青の男」記念館へ。ほとんどノーチェックだったけど、凄まじくキッチュな展示に頭がクラクラになる。どぎつい赤の壁、観光地にあるような記念撮影用顔出しボード、小説に登場するグロテスクな心臓オブジェ……、直島に行ったら必ず行くべし!

宮ノ浦港は「海の駅」などの建設のため工事中。新しいフェリーターミナルとなる「海の駅」は、SANAA(妹島和世+西沢立衛)による設計で、来年秋完成予定とのこと。こちらもオープンが楽しみ。

そしてフェリーに乗って宇野港へ。さらば直島!

直島旅行記(家プロジェクト)

2005-12-24 | アート感想@遠征
前の記事の続き。

町営バスに乗って、本村地区の農協前バス停に移動。バス停前に100円のコインロッカー(小型・中型)があったので、さっそく荷物を預ける。

農協裏の本村ラウンジ&アーカイブにて、家プロジェクトのチケットを購入。この本村ラウンジ&アーカイブは、前回(3年前)行ったときには無かった新しい施設で、資料や書籍を公開するほかに、グッズや書籍の販売も行っている。また、暖房が効いた部屋でソファーに座って休憩できる貴重な空間でもある。

まず、3年前には内部を公開していなかった「護王神社」(写真)へ。この神社は、改築にあたって杉本博司が設計を行ったもので、建物そのものが《Appropriate Proportion》という作品。幅の狭い通路を通って地下の石室に入ると、地上の本殿へ続くガラスの階段から光が降り注ぎ、本当に神域へ通じているかのように見えた。幅の狭い通路を戻るときは、瀬戸内海の水平線が視界を二分し、これまた美しい光景だった。

続いて、「角屋」へ。山本忠司が修復を監修したこの建物には宮島達男の作品が3点あるけど、なかでも《時の海 ’98》が素晴らしい。暗い部屋の大部分に水が張ってあり、水の中には色とりどりのデジタルカウンターが散りばめられ、それぞれ時を刻む。観ていて時がたつのを忘れてしまいそうな作品だった。

予約の時間になったので、「きんざ」へ。この建物の内部にある内藤礼の《「このことを」》は、一人ずつ15分までの鑑賞という完全予約制の作品。3年前は、ただぼーっと眺めるだけで終わってしまったけど、今回、小さなか弱いオブジェたちと対話をするように観ていたら、あっという間に15分が過ぎてしまった。これが今回、直島で最も充実した時間だったかも。

最後に、安藤忠雄が設計を行った「南寺」へ。建物に入ると中は真っ暗で、目が慣れるまでベンチで座って待つ。10分ほどたつと、前方に淡い光がぼわーっと見えてくる。これがジェームズ・タレルの《Backside of the Moon》。光っているのかどうか分からないくらいの弱い光だけど、手をかざすと確かに影が見えた。

次の記事に続く。

直島旅行記(屋外作品)

2005-12-24 | アート感想@遠征
前の記事の続き。

朝起きると、前日のハッキリしない天気とはうって変わり、気持ちの良い青空が広がっていた。残しておいた稲荷寿司を食べ、サービスのドリップコーヒーを飲んでから、朝の美術館へ。

CHINATSUさんのように安田侃の《天秘》で朝の光を浴びようと思ったけど、屋外は寒過ぎて一瞬で退散。もうちょっと暖かくなってからの方が良いみたい。

チェックアウトを済ませ、バスの時間まで屋外作品を観て回る。冒頭の写真はベネッセハウス前通路の折り返し位置で撮影したもの。手前が蔡国強の《文化大混浴》。その奥の砂浜にある黄色と黒のボートがジェニファー・バートレットの《黄色と黒のボート》(拡大画像)で、館内の絵画+立体の作品に対応したもの。さらにその向こうには地中美術館が見える。

屋外作品で私のお気に入りはウォルター・デ・マリアの《Seen/Unseen Known/Unkown》。これは地中美術館の作品の元になった作品で、海を見下ろすコンクリート打ちっ放しの小さな部屋に、巨大な球体が二つ鎮座している。部屋の両端には金色の柱列もあって、まさに《タイム・タイムレス・ノー/タイム》のミニ版といった感じ。

写真は、チャーター船の船着き場からシーサイドパーク方面を写したもの。左のほうに見える建築中の建物は、来年オープン予定のベネッセハウス新館。この工事のために、ダン・グラハムの《平面によって2分割された円筒》などの3作品が見られなくて残念。右のほうに見えるのは草間彌生の《南瓜》(拡大画像)。

次の記事に続く。

直島旅行記(ベネッセハウス)

2005-12-23 | アート感想@遠征
前の記事の続き。

地中美術館チケットセンターからマイクロバスに乗り、宿泊先のベネッセハウスに戻る。ベネッセハウスは美術館とホテルが融合した建物で、こちらも安藤忠雄による設計。

最初に、予約していたレストランで夕食。HPの写真では、団体旅行での旅館の食事みたいに皿がゴテゴテと並んでいるけど、実際は一品ずつ運んでくれて、じっくり味わうことができる。郷土色を強めたコース料理「直島遊膳 きとま」は、とりわけ魚介類が新鮮で、刺身(タイ、シマアジ、サザエ)と海鮮しゃぶしゃぶ(サワラ、タコ)が絶品。ちょっと値が張ったけど、十分それに見合う内容だった。

食事のあとは屋内作品を鑑賞。四十数点の充実したコレクションは、どの作品も観ごたえがある。その中でも私の一番のお気に入りは、ブルース・ナウマンの《100生きて死ね》。ホールの天窓から光がこぼれ落ちる昼間に観るのも良いけど、暗闇の中でネオンが妖しく光る夜は、また別の表情を見せてくれた。このほか、コンクリートの隙間から雑草が生えているように見える、須田悦弘の木彫《雑草》もオススメ。

続いて別館に移動。本館と別館を結ぶ6人乗りのモノレールには、宿泊者はルームキーで自由に乗ることができる。宿泊専用の別館は人工の滝や池があり、ライトアップされて非常に幻想的な光景だった。建築を楽しんだあとは、ラウンジバーで夜景とアートを眺めながらカクテルを楽しむ。カクテルはなかなかの味だったけど、チーズは市販の包装そのままだったのがちょっと残念。

そして宿泊する部屋に戻る。部屋はゆったりとした造りで、当然のように室内にも作品が飾られている。ベランダからはライトアップされた瀬戸大橋が美しく、天気が良ければ満点の星空も美しいに違いない(曇ってた……涙)。机の上には夜食として可愛らしくラッピングされた稲荷寿司が置いてあったけど、さすがにおなか一杯だったんで、冷蔵庫に入れて翌朝食べることに。

あと、部屋にはテレビがなかったけど、代わりに『直島通信』などのドキュメントや、「スタンダード展」などのカタログがあって、テレビを見るよりも充実した時間を過ごすことができた。でも、アンテナはあったので、頼めばテレビを借りられたのかもしれない。

冒頭の写真は、翌朝撮影したベネッセハウスの玄関。

次の記事に続く。

直島旅行記(地中美術館)

2005-12-23 | アート感想@遠征
前の記事の続き。

地中美術館の少し手前にあるチケットセンターでチケットを購入。地中美術館へ向かう途中に、モネの庭園をイメージした「地中の庭」があったけど、冬だったのでイマイチ。

さらに少し歩いて、地中美術館に到着。敷地内では撮影厳禁なので、冒頭の写真が最後の撮影。

この美術館は、ベネッセが所有するモネの《睡蓮》を展示するために構想されたもので、奈義町現代美術館(7/30の記事)と同様に「まず作品ありき」の美術館。モネ以外には、デ・マリアタレルの作品も恒久展示されている。

美術館の設計は安藤忠雄によるもので、コンクリート打ちっ放しの壁や、壁のスリットから注ぐ光は、いかにも安藤建築といったもの。建築のほとんどが地下に埋設されているけど、通路の天井がぽっかり開いていて空が見えていたり、中庭が吹き抜けになっていたりするため、地下にいるとはあまり感じなかった。

最初に、最も深い地下3階にある「ウォルター・デ・マリア室」へ。この部屋は、部屋全体が《タイム・タイムレス・ノー/タイム》というインスタレーションになっている。コンクリート打ちっ放しの空間に鎮座する巨大な花崗岩の球体は、まるで世界の始まりからそこにいたかのような雰囲気を漂わせていた。また、四方の壁に配置された、一つとして同じ組み合わせのない27組の金柱の列も、この空間の宗教的・神秘的な雰囲気をさらに厳かなものにしていた。

続いて、地下2階の「ジェームズ・タレル室」へ。ここには3点の作品があって、そのなかでも《オープン・フィールド》が特に素晴らしかった。壁にスクリーンのように青く光る部分があって、その前の階段を上っていくと、スクリーンのように見えていたところが開口部だということが分かる。さらに開口の中に入っていくと、全身が青い光に包まれ、自分がどこに立っているのか分からなくなるような感覚。後ろを振り返ると、通常の電灯に照らされた「外部」が強烈なオレンジ色に見えるのも印象的だった。

そして、同じく地下2階の「クロード・モネ室」へ。白い床、白い壁、白い天井で囲まれた空間(しかもスタッフは白装束)で観る5点の《睡蓮》は、オールドマスターの絵画というより、今の時代の生々しいアートという感じがした。

作品を観たあとは、「地中カフェ」で休憩。このカフェは斜面の中腹に突き出たような位置にあって、海を眺めながらお茶を飲んだり、ランチ(1500円~)を食べたりできる。モネのレシピを再現したバナナアイスクリームを試してみたけど、濃厚なバナナの味と香りが口いっぱいに広がって本当に美味しかった。また、カフェの奥の扉から外に出て、潮風を浴びるのも気持ち良かった(ちょっと寒かったけど)。

最後に、ジェームズ・タレル《オープン・スカイ》ナイト・プログラムを鑑賞。寒いうえに雨がぱらつく生憎のコンディションだったけど、刻々と変化する空の色と、日没後のLEDによる光の演出が本当に美しかった。人生で一度は観ておくべきかも。なお、カッパ・タオル・ひざ掛けの貸し出しあり。

美術館を出ると、あたりはもう真っ暗。天気が良かったら満天の星なんだろうなあ……。

次の記事に続く。

直島旅行記(序章)

2005-12-23 | アート感想@遠征
現代アートの聖地(?)、直島へ行ってきた。実は2回目の来訪だけど、前回(3年前)は地中美術館も護王神社もオープンしていなかったなあ。

今回、あえて陸路を選択したけど、ちょっと裏目。関東は良い天気だったけど、豊橋あたりから徐々にあたりが白くなっていき、岐阜羽島を過ぎると真っ白。大雪による徐行運転で1時間ほど到着が遅れ、1つ後の船になってしまった。

宇野港に着くと目と鼻の先に直島が見える(冒頭の写真)。15分ほど船に揺られ、直島・宮ノ浦港に上陸。本当に近い。

宮ノ浦港から町営バスに乗車。イベントがあるせいか、いつものマイクロバス「すなお君号」ではなく、臨時の大型バスだった。それでもあっという間に満席になって、立っているお客さんもちらほら。

バスの中から石井和紘設計の小中学校や町役場(改修中)を眺め、ベネッセハウス下で下車。ベネッセハウスに荷物を預けたのち、蔡国強の《文化大混浴》などの屋外作品を観ながら地中美術館を目指す。

写真の巨大なゴミ箱は、今年設置されたばかりの三島喜美代《もうひとつの再生 2005-N》。産廃処理施設と現代アートが共存する直島にふさわしい作品として設置されたとのこと。ただ、ベネッセハウスからも地中美術館からも遠いのが難点。

そして、いよいよ地中美術館へ。

次の記事に続く。

豊田市美術館

2005-12-03 | アート感想@遠征
豊田市美術館に行ってきた。

谷口吉生のミュージアム

以前、オペラシティで行われた展覧会だけど、会場が本人が設計した美術館で、模型と実物を見比べられるのが良かった。いつかニューヨーク近代美術館[MoMA]に行きたいけど、その前に広島市環境局中工場葛西臨海水族園くらいは行かなくては。

ベリー ベリー ヒューマン

90年代後半に東海地方で活動を始めた8人の若手作家によるグループ展。8月に観た「ヤノベケンジ展」といい、この美術館は意欲的な企画展が多くて豊田市民が羨ましい。

2階の会場に続く階段には、森北仲の《居場所のない輪》がそれぞれの段に設置されている。まるで紙のように薄い銅版で作られた小さく弱々しい人形が、2本の杖に寄りかかりながら階段を上り下りしていた。階段を上ると、同じ作家によるスポンジの人形《人は人》が、窓の高い位置に吊るされている。ある人形は勢い良く飛び降り、別のある人形は必死に壁にしがみついている。どちらの作品も、観ていて感情が動かされる作品だった。

展示室に入ると、ピンク・オレンジ・黄色・緑・水色のロープのような物体が複雑に絡まりあい、吹き抜けの天井に向かって伸びている。この作品は、鬼頭健吾の《無題》で、ロープのような物体はなんとフラフープ。空間を覆い尽くすような迫力のある作品だった。

加藤美佳の《パンジーズ》は、少女と動物の頭蓋骨を写実的に描いた油彩。少女の大きな瞳は、吸い込まれそうな魅力があった。また、近づいてみるとカラフルで細かい点がノイズのように無数に散りばめてある。この絵が醸し出す非現実感は、この無数の点のせいなのかも。

山本高之の映像《登下校時不審者対策防護服まもるくん》とFRPによる立体《Protect Suites まもるくん》は、昨今の悲惨な事件を予言したような作品。頭から上半身は過剰なほどの鎧で守られているけど、下半身は無防備な小学生の姿は、どんなに対策を講じても完全な安全を確保できない現実を象徴しているようで、観ていて背筋が寒くなった。

このほか、渡辺豪のポートレートや、古池大介の映像など、観ごたえのある作品が盛りだくさんの展覧会だった。

豊田市美術館にて、
12月25日まで(月曜休館)。

もの派展@国際美(大阪)

2005-11-05 | アート感想@遠征
関西に行ったついでに国立国際美術館(大阪・中之島)に行ってきた。

ちょうどシンポジウムをやってたけど、時間の都合で断念(涙)。

もの派-再考

1970年ごろ、木や鉄板など「もの」を、そのまま作品としていた「もの派」の作家の展覧会。

「もの派」というと、李禹煥や榎倉康二などのシンプルな作品が思い浮かぶけど、初期の作品はむしろトリックアート的なものが多い。例えば、飯田昭二の《HALF&HALF》は、鳥かごの中に白い靴が入っていたけど、通り過ぎて振り返ってみると……!!仕掛けは単純だけど、これにはビックリ。幸せの青い鳥は身近なところにいるってこと?あと、李禹煥の初期作品《現象と知覚A、改題 関係項》では、石と石の間に目盛りの入ったゴムを設置し、「関係」をことさら強調していたのも興味深かった。

今回、もっとも印象的だった作品は、野村仁の《Tardiology》。これは本展のために再制作された作品で、巨大な4つの段ボール箱を積み重ね、8メートルを超える高さの構造体としたもの。これだけの大きさの段ボールなんて、普段の生活ではまずお目にかかれない。このとき既に自重で崩れ始めていて、一番下の箱が50センチほどにつぶれていた。完全に崩れるのも時間の問題かも。

12月18日まで、月曜休館。

瑛九 フォト・デッサン展

コレクション展の奥の部屋での展示。フォト・デッサンとは印画紙の上に型紙などを置いて感光させる写真技法のこと。写真というより、版画のような面白さがある作品だった。

12月18日まで、月曜休館。