現代アート道楽の日々。

首都圏の展覧会の感想など。しばしば遠征。【不定期更新】

ストーリーテラーズ@森美術館(六本木)

2005-04-02 | アート感想@関東
前の記事の続き。

ストーリーテラーズ ―アートが紡ぐ物語―

アートの持つ物語性に着目した展覧会。意味深で暗めの作品が続き、そのほとんどが写真または映像作品。映像作品は一つを除いて15分以内と短いものばかりで、試しに上演時間を合計してみたら1時間半くらいだった。

会場に入ると、グレゴリー・クリュードンの写真《トワイライト》シリーズがお出迎え。アメリカの平凡な風景に非日常なものが写っている。なかでも、水浸しのリビングに横たわる女性の写真が美しかった。

小谷元彦の作品は、2分半の映像作品《ジャッカル》。左右2画面のジオラマによるアニメーションで、左側の画面には廃屋、右側の画面にはその室内が映っている。廃屋の画面では、刻々と天候が変化していくが、室内の画面では、少々グロテスクな犬がひたすらグルグル歩き回り、たまに排泄したり、食事したりしている。ただそれだけなんだけど、不思議と迫ってくるものがある作品だった。

展覧会のチラシにも使われているキャラ・ウォーカーの《自由への長くて熱くて黒い道、南部のダンスステップを踏みながら》は、黒い紙の切り絵を壁全体に貼ったインスタレーション。アメリカの黒人奴隷の物語を思い起こさずにはいられなかった。

オペラシティでの展覧会が印象的だったエイヤ=リーサ・アハティラの作品は、24分の映像作品《慰めの儀式》と、約90秒ずつの映像作品3部作《私/私たち;大丈夫;グレイ》。《慰めの儀式》は離婚を決意した夫婦の物語。セラピストの前で見せる二人の感情の発散には思わず息を飲んだ。そして離婚前の最後のパーティーの後で起こる「事件」と、その後の幻想的な体験……。切なくて感動的な物語だった。これは必見!30分ごとの入れ替え制で、日本語字幕と英語字幕の回があるので、事前に時間をチェックすべし。

MOTでのグループ展(私の記事はこちら)が記憶に新しい鴻池朋子の作品は、平面作品《第3章 遭難》、立体作品《不時着する谷》、12分の映像作品《みみお》の3点。部屋全体を使った展示で、天井にはナイフが飛ぶ鴻池ワールドを体験することができた。《みみお》は鉛筆画のアニメーションで、床に置かれた池のようなスクリーンが作品の魅力を増していた。

キャレン・ヤシンスキーの5分半の映像作品《恐れ》も印象的だった。素朴な人形アニメーションで、二面のスクリーンに映された男女が謎の涙を流したり、フライトアテンダントに慰められたりする。つかみどころのない不思議なストーリーだったけど、ぎこちない人形の動きによる感情表現に、胸が締め付けられるようだった。

6月19日まで、会期中無休。

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