ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

09/06/27 歌舞伎座千穐楽夜の部②吉右衛門の「極付幡随長兵衛」も堪能

2009-07-16 23:49:35 | 観劇

「極付幡随長兵衛」はこれまで2回観ていて、2006年2月の吉右衛門の長兵衛の時に簡単なミーハー記事をアップ。3回目の今回は真面目に書いておこう。
【極付幡随長兵衛 公平法問諍】作・河竹黙阿弥
Wikipediaの「極付幡随長兵衛」の項はこちら
以下、あらすじと配役を公式サイトより引用、加筆。
冒頭は江戸の芝居小屋村山座で新狂言「公平法問諍」上演の劇中劇。坂田公平(歌昇)が御台柏の前(福助)、伊予守頼義(児太郎)の御前で、慢容上人(家橘)に法問を挑む芝居の最中。旗本奴の水野十郎左衛門の家臣坂田金左衛門(由次郎)が騒いで芝居の邪魔をするので町奴の幡随院長兵衛(吉右衛門)が客席から現れてこれを打擲して懲らしめる。十郎左衛門(仁左衛門)と渡辺綱九郎(友右衛門)が桟敷席から長兵衛を呼び止めると、長兵衛の子分の極楽十三(染五郎)、雷重五郎(松緑)、神田弥吉(松江)が駆け出してきて一触即発となるが、長兵衛がその場を収める。
長兵衛宅に十郎左衛門から宴に招くという使者がくると長兵衛は快諾。それを子分たち(*)は何かの策略だと言い、長兵衛を止めようとする。女房のお時(芝翫)も弟分の唐犬権兵衛が戻ってからにして欲しいといい、権兵衛(梅玉)も戻ってきて止めだてする。「武家と町家に日頃から遺恨重なる旗本の、白柄組に引けをとっちゃあ、この江戸中の達師の恥」「人は一代、名は末代」と町奴の名誉を守るためだとと言い、「早桶を持って迎えに来い」とまで言いつける。一子長松(玉太郎)の言葉にはぐっとくるが涙をこらえて水野のもとへ向かう。
十郎左衛門邸では友人の近藤登之助(東蔵)も招かれて遺恨を水に流して以後の親交を願うと長兵衛をもてなす。しかしわざと酒をこぼして風呂をすすめ、湯殿で家臣たちに襲わせる。素手の勝負では歯が立たず、十郎左衛門は自慢の槍を持ち出して成敗しようとすると「綺麗に命を上げましょう」と覚悟をみせる。近藤が刀で後ろから切りつけて十郎左衛門が槍で突いた頃合に、子分たちが早桶をもって到着。殺すのは惜しい男だったと十郎左衛門に言わせ、長兵衛が絶命する幕切れ。
*の子分=出尻清兵衛(歌六)、小仏小平(男女蔵)、閻魔大助(亀寿)、瘡森団六(亀鶴)、地蔵三吉(種太郎)

権力側の旗本の若くくすぶっている連中(次男坊以下が多い)が粋がっている旗本奴よりも町奴の方にどうしても肩入れしてしまう私である。2006年11月演舞場花形歌舞伎の「番町皿屋敷」の主人公が旗本奴の「白柄組」の一員でどうにも共感できない人物で困った。
これまでの2回は役者ぶりに惚れるというのはあったが、ストーリー的に町奴と旗本奴の意地の張り合いの中で命を捨てる長兵衛というのがどうにも共感しきれない感が残った。しかしながら今回は敵役に仁左衛門を得たことで印象が変わった。

天下泰平の世になって腕の見せ所のない十郎左衛門が御政道に抱く不満を強く感じた。世を拗ねたような冷たい目つきと威厳はあるが陰気な声の出し方がそれをさせた。その男が束ねる旗本奴たちと熱く男伊達を張る長兵衛たち町奴のくっきりとした対照が際立ち、ドラマが面白くなった。
吉右衛門の幡随院長兵衛は血の気の多い子分どもを束ねる熱さと大きさをいっぱいに感じさせて今回も絶好調。
芝翫のお時は親分の女将としての存在感と死地に夫を送り出す女房のせつない声がよかった。劇中劇の方に福助・児太郎も出ていて成駒屋三代。長松の玉太郎はこの役も頑張っていて頼もしい。神田弥吉の松江と近藤登之助の東蔵とこちら加賀屋も三代。松嶋屋三代、高麗屋三代とともにさよなら公演らしい配役の舞台になっていた。

劇中劇「公平法問諍」は当時の芝居小屋の雰囲気が味わえるのがいい。歌昇の公平の荒事と素に戻って騒動に困る役者ぶりはかなりユーモラス。三代目河竹新七らがつけ加えた場面らしいが、前半を喜劇的にしているので後半の男伊達の落命というドラマが盛り上がる。今回はストーリー的にも納得できて堪能できたのが嬉しかった。
写真は歌舞伎座ロビーにあった吉右衛門の「極付幡随長兵衛」の舞台写真の特別ポスターを携帯で撮影したもの。

6/27千穐楽に六月大歌舞伎を概観する
6/21昼の部①兄弟対決の「角力場」
6/21昼の部②「双蝶々」つながりの舞踊二題
6/21昼の部③仁左衛門の一世一代の「女殺油地獄」
6/27千穐楽夜の部①高麗屋三代の「門出祝寿連獅子」
6/27千穐楽夜の部③幸四郎の「髪結新三」


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