ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

08/07/17 姜尚中の本を読む

2008-07-17 23:59:31 | 美術・本

私は日本史で私立大学文系を受験したのだが、近現代史は出題範囲外ということで、大学に入ってから歴史のサークルに参加してから勉強。特に台湾や朝鮮半島を植民地にし、満州に傀儡政権をつくりといういわゆるアジアにおける日本の不幸な歴史をきちんと学んだ後は、自分たちが生きる社会が違ってみえたものだ。
中学校の同級生のお父さんのお葬式に学級委員として参列した時、「実は私は日本人じゃないの」と告白されて驚いた。「そんなの関係ないよ」って答えたけれど、それ以来、朝鮮半島から在日になった方たちのことはずっと気にしてきた。それが日本の近現代史を勉強するとわかってきたのだ。

朴独裁政権による圧政、KCIAによる金大中誘拐事件やら恐ろしい国だった韓国がどんどん変わっていき、今では民主国家になっている。一方、北朝鮮の独裁政権の迷走はどんどんひどくなっていて、それに対する不安感から日本もどんどんキナ臭い国になっている昨今である。
そんな中で昨年12/13の夜、新宿サザンシアターで姜尚中×小森陽一トークショー&サイン会「2008年、日本はどうすべきか」に行こうと友人に誘われた。同じ会場でこまつ座の「円生と志ん生」を観に行った時に壁に貼ってあったポスターの下だった。姜尚中はテレビの討論番組などで落ち着いたいいお声で理路整然と話をする姿に好感を持っていたので、即OKして行ってきた。トークショーは面白かった。サイン会ではお二人の手はあったかかったし、姜氏はカッコよかった(ミーハーで恐縮m(_ _)m)。
その時にお二人にサインしてもらって買ってきたのにツンドク状態で放置(^^ゞ通勤の往復で読む本がなくなってきて先月あたりにようやく読み、こういう勉強ももっとしないといけないなどと思っていた。
角川ワンテーマ21『戦後日本は戦争をしてきた』(姜尚中・小森陽一)
そして、新宿ルミネの中にある青山ブックセンターにチェーホフの戯曲「かもめ」を買いに行った時、目にとまって買ってしまったのがこの本だ。
姜尚中の『在日』(集英社文庫)
以下、ウェブでの紹介の文章を引用。
1950年、朝鮮戦争が始まった年にわたしは生まれた。なぜ父母の国は分断されたのか。なぜ自分たちは「みすぼらしい」のか。「在日」と「祖国」、ふたつの問題を内奥に抱えながら青年期を迎えたわたしは、日本名「永野鉄男」を捨て「姜尚中」を名乗る決意をした。在日二世として生きてきた半生を振り返り、歴史が強いた苛酷な人生を歩んだ在日一世への想いを綴った初の自伝。文庫化にあたり大幅に加筆。

こんなに紆余曲折の人生を経てきた方だとは知らなかった。大学院でマックス・ウェーバーを専攻し、恩師のすすめでドイツに留学。そこで激動のヨーロッパを体感され、日本で非常勤講師をしながら指紋押捺問題で埼玉県で初めて拒否を表明して人前に出ることが多くなったのだという(同じ埼玉県じゃないの!)。そこで初めて連帯してくれる日本の市民たちと接点ができ、意見を表明する機会が増え・・・・・・。若い頃は吃音に悩むという時期もあったとのことで、その恐怖と闘いながらという話であり、本当に大きく揺れながら生きてこられての今があるんだなぁと納得した。
その指紋押捺問題の取組みの中で支えてくれた牧師さんを尊敬し、洗礼を受けた縁がつながって国際基督教大学の助教授になり、在日で初の東大教授へという転身。
私もこの間、賀川豊彦に興味を持ち、著作「死線を越えて」「一粒の麦」を読んで、行動するクリスチャンの素晴らしさに注目していただけに、今回もまた瞠目させられた。

リベラルな人々ともっとつながっていきたいと思っている私には、大変刺激になる2冊であった。それぞれ新書、文庫というところがお手軽に過ぎるかもしれないが、分厚い本にはなかなか手が出ないし、気軽にいろいろと吸収できるのは大事なことだと思うので、いいことにしよう。
後者の文庫本は手に入りやすいと思うので、特におすすめしたい!

写真は昨年12月のトークショー&サイン会での写真。左が姜氏、右が小森氏。


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4 コメント

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かっこいいでしょう! (hitomi)
2008-07-20 10:30:18
握手してもらったんですか。良いわねえ。

「心の旅」はよかったけどお昼のトーク番組は…

軍事政権だった韓国が民主化されたのに日本はなんてことでしょう。
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★hitomiさま (ぴかちゅう)
2008-07-21 15:09:05
TB&コメントを有難うございますm(_ _)m
「心の旅」という番組ではドイツ留学中に得た親友の方を訪ねられたのでしょうか。自伝の中でNHKの番組でとありましたから、多分そうだろうと推測しています。
マイノリティの視点から世の中をきちんと見ての問題提起を姜さんのように落ち着いて論理的にお話いただくのは本当に貴重です。小森陽一さんとのトークショーはお二人の会話が噛み合ってそれぞれの視点の違いからも触発し合ってどんどん面白くなっていくのでした。お二人の対談を中心にまとめた新書もおすすめです。
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TB、コメントありがとうございました。 (KUMA0504)
2008-08-21 23:12:36
実は姜尚中よりも私は小森派でして、この本は面白そうです。ありがとうございました。
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★KUMA0504さま (ぴかちゅう)
2008-08-21 23:24:44
先の記事のコメントをいただき、早速お邪魔してTBさせていただいたのにTB返しを有難うございますm(_ _)m
小森さんの話が面白いという評判はあちこちから聞いていたのですが、この姜尚中×小森陽一トークショーで初めてちゃんと話を聞きました。小森さんも経歴といい、なぁるほどの思考の持ち主でお二人のトークは聞いていて実に刺激的でした。共著の新書を読むのもすぐではなかったのですが、トークの内容もチラホラ思い出せて反芻して納得でした。小森さんの専門の文学の評論も読んでみたいと思います。
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