ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

06/01/03 歌舞伎座藤十郎襲名公演昼の部②「夕霧名残の正月」

2006-01-04 12:55:20 | 観劇
2.夕霧名残の正月(ゆうぎりなごりのしょうがつ)
三代目中村鴈治郎が231年ぶりに坂田藤十郎という大名跡を襲名する披露公演。初代藤十郎が大当たりをとった演目だが全く当時の台本などが残っていないので、地唄「由縁の月」などを元にあらたに書き下ろされた作品で、最近大活躍の今井豊茂による脚本(NINAGAWA十二夜も彼が書いた)。

藤屋伊左衛門(藤十郎)は落ちぶれて傾城夕霧の死も知らない。夕霧の顔をひとめなりともと久々にお茶屋扇屋が夕霧四十九日法要のために形見の内掛けをかけているあるところに訪れる。その死を知り悲しみんでいると内掛けの影から夕霧(雀右衛門)が病鉢巻をした姿で現れ...。伊左衛門と夕霧とのつかの間の逢瀬。しかしながら伊左衛門は気が遠くなってしまい、その間に夕霧は姿を消す。扇屋三郎兵衛(我當)と女房おふさ(秀太郎)に起こされて、ああ夢であったかという話。そこから狂言中の口上の形になって終わる。ちゃんとした口上は夜の部なので、昼はこういう形なのね。

鴈治郎時代からこの丈との縁は薄く、鴈治郎として最後の「河庄」の紙屋治兵衛を昨年10月歌舞伎座で観たばかり。藤十郎丈、こういう和事のつっころばしはいいなと思った。なるほどこういうのが「はんなり」した感じなのねと得心したし、二枚目半的なおかしみのある場面はもう本当に可愛い。おみそれしましたm(_ _)mという感じ。
和紙でできた本物の紙衣を着ての登場するのも話題になっていたが色目が淡く、私はいつもの布の紫地の衣裳の方がすっきり見えるし、男の色気も出るので好き。しかし和紙で濃い色の衣裳をつくると染料がいっぱいのるのでゴワゴワになって着用できるものにならないのだろうなあとか変なことを考えながら見てしまった。
鴈治郎最後の「河庄」の小春は途中休演されて観ることができなかった雀右衛門丈のお姿を今回はしっかりと観た。さすがである。幽霊としてまで出てきて伊左衛門に気持ちを訴えるいじらしさ、情を残しながら去っていく姿のせつなさ。この世のものではない風情...。他の追随を許さないだろう。休演されてしまって初めて雀右衛門丈のことをよく知りたいと思うようになり、図書館にリクエストして借りた『雀右衛門の世界』の対談を読み、これからは雀右衛門丈をできるだけ観ておこうという気持ちになっているので、この夕霧を観ることができて有難かった。

最後は我當と秀太郎に促されて口上に切り替わる。藤十郎丈尾、上方歌舞伎の隆盛のために生涯をかけるために襲名した」とか「私はまだまだ若うございます」と元気に決意表明されていて頼もしい限りだった。藤十郎になると山城屋になるのね。山城屋と松嶋屋と成駒屋で上方歌舞伎をより一層盛り立てていただきたいものである。

写真は、先月のイヤホンガイドの「耳できく歌舞伎」の表紙になっていた藤十郎の藤屋伊左衛門のスチール写真。今回の襲名のスチール写真は篠山紀信2枚と蜷川実花2枚が使われているようだ。篠山紀信は従来のシンプルな役者中心の写真だが、蜷川実花の方はいずれも花をあしらいに使っている。「NINAGAWA十二夜」で父の蜷川幸雄が歌舞伎座と縁ができたためかもしれないが、歌舞伎のスチール写真に初めて蜷川実花の写真が使われているのを知ってちょっと驚いた次第。


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