【竜馬がゆく-風雲篇-】
昨年の秀山祭に「立志篇」が上演され、毎年シリーズ上演を予想していたが的中!
今回の主な配役は以下の通り。
坂本竜馬=染五郎 おりょう=亀治郎
寺田屋お登勢=吉弥 中岡慎太郎=松緑
西郷吉之助=錦之助
さて、困った。中岡慎太郎ってええとどんな人物だっけ?坂本竜馬と一緒に暗殺された人だったはず・・・・・・と疎い私。ベルばらのフランス革命には燃えていた女子高時代、周囲が新撰組だとか竜馬だとか幕末の男たちの話題で盛り上がっていた頃もあまり興味がなかった。王制を倒す革命に比べると明治維新という半端な政変に対して興味があまり持てなかったようだ。日本史受験だったが、薩長に比べて土佐藩に対してのイメージが持てていないことをあらためて自覚。そこでネット検索したら非常にわかりやすいサイトがあったのでご紹介しておこう。
「幕末維新新撰組」サイトの中岡慎太郎の項はこちら
ここを読ませてもらうと中岡が土佐の武市半平太がどうのこうのという辺りのこともよくわかった。
また当時は竜馬よりも中岡慎太郎の方が有名で、暗殺の主なねらいは中岡で竜馬は巻き込まれたという説も他の情報にあって驚いた。
今回の舞台に戻る。まず「風雲篇」のあらすじを公式サイトよりほぼ引用。
「池田屋事件(ウィキペディアの項はこちら)の後のこと。幕府海軍塾の塾頭となった坂本竜馬は、時代の変革のために多くの血が流れていることを憂慮している。同じく土佐藩の郷士である中岡慎太郎は血気にはやっているが、これを竜馬は諌める。
そして風雲急を告げる京の街で、竜馬はおりょうという娘を救い、旧知の船宿寺田屋のお登勢に匿ってもらう。やがて薩摩藩の西郷吉之助と対面した竜馬は、日本のために長州藩と手を結んでくれと頼み、西郷もこれを了承。しかし竜馬に危機が迫り…。」
「立志篇」で歌六が演じた勝海舟は出てこないのが大変残念。勝に師事して幕府海軍塾を束ねている竜馬のもとに長州藩に身を寄せている中岡がやってきてなじる。そのアジテーション(笑)に乗せられた海軍塾の何人かは中岡についていってしまう。
次に再会するのは、中岡が禁門の変で負傷しているのを医師の娘のおりょうが手当て中に別の災難がふりかかっているところ。
松緑の中岡はここまで髭面に描くかと驚くほどの顔の拵え。ここまで染五郎の竜馬の引き立て役っぽくしなくてもいいのにと少し残念に思ったが、三枚目風の場面もあるからそのために割り切っての拵えかもしれない。まぁいつもの菊五郎劇団だけでなく若手どうし共演するのはいいことだ。
亀治郎のおりょう。刀を落し差しにしたきりっとした拵えで登場。利発で気の強い娘として登場から目をひく。「NINAGAWA十二夜」の麻阿を彷彿とする。攘夷派の医師だった父が安政の大獄で処罰され、妹を守りながら気丈に生きてきたという健気な台詞、妹を売り飛ばそうとする地回りと毅然と対峙する姿。これまで竜馬の妻おりょうにはあまりいいイメージを持っていなかったが、亀治郎のおりょうにコロっと魅了されてしまった。
→
犬猿の仲だった薩長を同盟させるために西郷吉之助を説得するところが今回の見せ場のひとつになっているが、錦之助の西郷に感心。二枚目の顔をすっかり西郷イメージの濃い顔にしてしまい、肉襦袢も着こんで堂々の拵え。台詞は低く太く響かせることができるし、若手中心の舞台にしっかりとこういう役でつきあうことができるというのも大したものだと思う。そして、日本が海外の大国に伍していくために旧態以前と権力を握り続けようとする幕府の力をそぐ必要があり、薩摩は孤立した長州について欲しいという切実な説得をきちんと聞かせることのできた染五郎も立派だった。
おりょうを匿うために預けた寺田屋に竜馬がやってくる。おりょうと二人になった竜馬。船に乗りたいと言うおりょうに「乗せてやる」「ハニ・ムーンちゅうもんをやろう」とプロポーズ。このラブシーン、劇団☆新感線の舞台みたいと思えて笑えた。それとお登勢に養女にしてくれるように頼むのは妻にしようという段取りのためだということで、ちょっと驚いた。吉弥のお登勢はそういう信頼をされるにふさわしいいい年増の女っぷりだった。
入浴中に周囲の異変に気付いたおりょうが竜馬に知らせていち早く難を逃れたという有名なエピソードもバッチリある。亀治郎のおりょうが七月の「高野聖」の玉三郎のスチール写真もどきに肩を顕わにして二階に上がってきた!!必死に竜馬を逃がすおりょうの「半時で後家にする気か、ハニムーンにいかないのか」というような台詞も遊び心十分で笑えた。
襲い掛かる新撰組隊士との立ち回りも劇団☆新感線のようなスピード感にあふれるものだった。染五郎が歌舞伎座でもこういう舞台をかけるのも、若高麗の新しい取り組みということでいいんじゃないかと思った。
ただ、「立志篇」では上士による差別で郷士の若者が犠牲になり、若者たちに怒りが満ちるところで大部屋役者たちもたくさん並んで迫力のある場面がみられたのだが、今回は立ち回りくらいで芝居にからむところが少なかったのはちょっと寂しい気がした。まぁ、ストーリー的に仕方がないとは思うが。
まぁ、亀治郎のおりょうとのコンビが一番の売りかなぁという印象の「風雲篇」だった。いいんじゃないか!
来年の秀山祭でも続編がかかるのはこれで間違いないだろう。
写真は歌舞伎会『ほうおう』掲載の「竜馬ゆかりの地」の記事の伏見「寺田屋」の写真を携帯で撮影。大河ドラマ「篤姫」で薩摩藩士の内紛騒動で有馬新七が死んで盛り上がっているところだが、実際に当時の建物かどうかを京都市が調査を始めたらしい。その結果次第では展示方法などへの改善指導が入るようだ。
9/7昼の部①「日本振袖始」
9/7昼の部③「逆櫓」
9/19夜の部①初代の写真、中幕「鳥羽絵」
9/19夜の部②「盛綱陣屋」
伝統芸能ひとすじの9月ですね(笑)
亀ちゃんのおりょう、ぴったりじゃないかな~と
期待していました。なかなか評判良さそうで嬉しいです。
吉弥さんのお登勢も良さげ~~♪
「立志篇」に続き放送されるのを待ちます。
はああ、またお江戸に行きたいなあ・・。
竜馬とおりょうカップルのお似合いぶりが印象的な「風雲篇」でしたが、ぴかちゅうさんが書いていらっしゃるとおり、西郷とのやり取りの、なぜ長州を助けてやってほしいのか、という竜馬の説得は聴き応えありましたね。敵対していた薩長が連合することになった経緯、その理論がとてもよく理解できました。脚本もすばらしいですね。
完結篇に続いて三部作一挙上演に大賛成!
おりょうは亀治郎さんで、勝海舟は歌六さんで、ぜひお願いしたいです。
>亀ちゃんのおりょう、ぴったりじゃないかな......予想を上回る可愛さ(^^ゞでした。こういう女方像ってなかったかも!早くオンエアされるといいですね。
>はああ、またお江戸に行きたいなあ・・......上川さんの源内までお預けでしょうか。
★「地獄ごくらくdiary」のスキップさま
今晩、歌舞伎座の夜の部を観に行って舞台写真コーナーも見て来ました。そうそう最後は竜馬、怪我しているのをおりょうが必死で励ますんでしたね。顔に血糊がついている写真を見て思い出しました。
>脚本もすばらしいですね......前作で大谷竹次郎賞をとられているはずです。三部作一挙上演企画にご賛同有難うございます。染ちゃんの代表作の一つになるんじゃないでしょうか。
歌舞伎座版風雲篇、しっかりチェックさせて頂きました。
松竹座では龍馬、武市ら土佐藩士数人に久坂玄瑞も加わって
三条河原で語り合う青春群像的な一場面があり、そこがちょっと
切なさを醸しています。
大阪の舞台に登場しなかった中岡は「龍馬伝」の上川さんで
しっかり見せていただきます~♪
肩をあらわにした亀ちゃん・・・御園座で見た「男の花道」の
歌右衛門を思い出します。背中のくぼみにドキドキでした(笑)。
孝太郎さんはお肌の露出は一切なく、利発というより元気で
明るいおりょうですね。
あの染ちゃんなら、3部作一挙上演もありえそう。
その時は中岡も武市も久坂も高杉も登場してほしいですね。
染五郎座長で3部作一挙上演企画、歌舞伎座建替え中に演舞場、松竹座、博多座とか全国展開でどんどんやって欲しいです。
亀ちゃんの御園座の「男の花道」の歌右衛門、評判がいいですね。東京でもやってくれないかしら。